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ハル子さんは考えています――最適ではない選択について  作者: 秋田コウ


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第1話 青白い閃光――人を守った夜

そのAIは、

“最適”ではなく、

人間を守ることを選んだ。

 その夜。

 男たちが、一瞬で倒された。

 理由は、誰も説明できない。

 たった一人の女によって。

 最初から勝負になっていなかった。


 ——歓楽街の裏通り。

 ネオンの残光が滲む。

 雨上がりのアスファルトが光を返す。

 男たちが地面に沈んでいる。

 目の前には、ただ一人の女。

 長身で、細身。

 黒いコートに身を包み、静かに立っている。


 その光景を見ていた者は、後にこう証言する。

「ありゃ、人間の動きじゃないな」


 ——その少し前。

 通りの隅で、一人の男がふらついている。

「飲み過ぎですよ」

 女が男を支えながら、静かに言う。

「いやぁ……たまにはいいよねぇ……」

「人生サイコー……」

 男は、ろれつが回っていない。

「もうすぐ駐車場です。しっかりしてください」

 二人は人気の少ない通りへ入る。


 その時、横から男がぶつかってくる。

「痛っ!」

 不自然なタイミングだ。

「すみません」

 女は軽く頭を下げ、そのまま通り過ぎようとする。

「いてぇなぁ……腰やっちまった……」

「明日の仕事……どうしてくれんだ」

 絡んでくる。


「じゃあ、110番と119番へ……っと……」

 酔った男がスマホを取り出そうとする。

「ふざけんじゃねぇ!」

 拳が振り下ろされる。


 その瞬間、青白い光が走る。

 女の手が、拳を止めている。

 小さい音。

 鋭い速さ。

 まるで、空気でも掴むように。


「このやろう!」

 もう一撃。

 また止まる。

 女の視線は、一度も揺れない。

 次の瞬間。

 男の体が宙に浮く。

 そして地面へ叩きつけられる。

 重い音。

 空気が凍る。


 女の背後に複数の足音。

 鉄パイプや木刀を持った男たちが現れる。

 ざっと見て、十人前後。

 囲むように広がる。


「やれっ」

 一斉に動く。

 振り下ろされる鉄パイプ。

 当たらない。

 すべて外れる。

 わずかに、ずれる。

 そのたびに、青白い光。

 男たちの体が浮く。

 そして倒れる。

 速い。

 無駄がない。

 迷いがない。

 最短で、正確に処理されていく。


「……なっ、なんなんだ、お前……」

 一人が叫ぶ。

 理解できないまま。

 次の瞬間、崩れる。


 最後の一人が、大きく振りかぶる。

 女は、それを前腕で受け止める。

 乾いた音と共に木刀が折れる。

 男は後ずさる。

 恐怖。

 そして、逃げる。

 残るのは、倒れた男たち。

 すでに、数人の姿がない。


 女は、何事もなかったかのように酔った男を支える。

「……行きますよ」

 そして、闇の中へ消えていく。


 数分後。

 現場にはパトカーと救急車が到着する。

 赤色灯が回る。

 警察が状況を確認する。

 負傷者。証言。不可解な一致。


 一人の女性が車を降りる。

 落ち着いた目で周囲を見渡す。


 水沢。


 静かに現場を見る。

「ずいぶんと派手にやられたものね」


「女性一人で?」

「複数の目撃証言があります」

 部下の警官が答える。

「それと……」

「何?」

「攻撃の際、青白い光を発していたと」

「複数の証言が一致しています」


「……整いすぎている」

 計算されているみたいに。


 水沢は夜空を見上げる。

「……まるで」

「人間じゃないみたいね」


 その言葉は、否定ではなかった。

 理解しようとする声だった。

“青白い閃光”は、

まだ始まりに過ぎません。

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