疑念と誘導
………………
エントランスホールでは掲示板に冒険者たちの人だかりが集まり、うわさ話や様々な反応が飛び交っていた。重吾たちも、姿の見えないDMを探す前にそちらの掲示板の情報を確認する。
人ごみをかきわけ、掲示板に顔を突き出した重吾はそこに書かれた『DMからの伝言』を見る。
『現在、管理人多忙につき、急を要する要件にのみ支給された喇叭を用いて呼び出し下さい。冒険者の皆様にご不便をおかけし申し訳ございません。
また、冒険者誘拐事件と壁を透過する黒服の男に関する調査は現在管理人が進めております。何か捜査の進展があれば掲示いたします。』
重吾はエントランスの端でメンバーにその情報を共有する。
「……と、DMが調査してるそうだ。まあ、おれたちはこの迷宮についてあの人よりもシステムだのなんだのについて詳しくはないんだから手伝えることもないだろうし……。任せてりゃいいんじゃねえか?」
國山先生がうーんとうなりつつ、答える。
「……学校側の対応でできるだけのことはしたし……でも……いや……もう私たちにできる事は攻略を急ぐことだけね」
三本が心配げに呟く。
「……大丈夫かな、DMに任せても……」
金田がそれに反応して、首を掻きながら言う。
「少し心配し過ぎな気もするぜ……。今のところ俺たちにDMが直接危害を加えた事も、加える理由も、何もないんだ……。とりあえずは静観する他ねえさ」
三本は「ああ、そうだな」とあきらめた様子で言う。
重吾は手を叩いて言う。
「んじゃあ、第四層に行こうぜ。連日の攻略でレベルも上がりまくってんだ……。今日はボス部屋まで一気に行ける気がするぜ?」
重吾はそう言ってエレベーターへ一行を誘導する。一行はその重吾のご機嫌な様子に呆れつつも顔を見合わせ笑ってエレベーターへと向かうのだった。
―――――
この二日ほどで放課後ダンジョンクラブは第四層の一本道の通路をホール三つ分まで攻略することができた。そして、その攻略の中でこの階層の『ある法則性』を靖穂は看破した。この階層の敵は一定時間で復活し、出現する位置、種類は全て固定されているのだ。
入って少し通路を進めば、トカゲ人間二体が現れ、最初のホールには七人ミサキと地霊ゲニウス・ロキ二体。通路を進んで次のホールにはポチョン二体とナーガ三体。一行はそれらを多少の攻撃を受けつつも危機に陥ることなく倒し、次のホールへと進む。
通路を抜けた先、暗がりに潜む敵の感知に入る前に、三本が電撃魔術を放つ。
『バチバチバチィイイッ!』
電光により闇に潜む4メートル近い大きな人型の存在の白い毛皮が照らされ、そこへ電撃が走る。その白い獣は1100ダメージを受ける。
前衛組が躊躇なくホールへと入り走っていく。だが、金田以外はその白い人型の獣ではなく、それぞれが別々の場所へと向かっていく。彼らは白い獣以外にこの場にもう二体『悪霊』が出るのを知っているのだ。
重吾と稲葉さんはそれぞれ、暗いホールの中、煙と共に出現するランプの魔神のような存在『シャイターン』に先制攻撃を加える。
『ドスッ!』
重吾の突きが、突如出現したシャイターンの右目にクリーンヒット。1050のダメージを与え、シャイターンはそれを苦しむとともに、距離を取ろうと動く。
一方、稲葉さんは出現するシャイターンの首筋にハイキックを入れ、880のダメージを与える。シャイターンは空中に浮かんでいることから繰り出される宙を滑るように素早い動きで離れていく。
金田は真っ直ぐホールの中央に鎮座する巨大な白い獣『ビッグフッド』にバットを振りかざし、殴りつける。
『ガガァアアアアンッ!』
軌道のわかりやすい大振りだったが、ビッグフッドはその巨体を避けることはせず攻撃を受ける。990のダメージを受けながら、ビッグフッドは巨大な腕を振りかざし、金田にそのまま振り下ろす。
『ズガァアアアアアアンッ!』
金田は次なる攻撃を用意してそのままその攻撃を受け、20ダメージ。そして金田はバットを振る。二者は防御なしのぶつかり合いを演じているのだ。
後衛組はそれぞれの敵の情報を参照しつつ、攻撃を準備する。
ビッグフッド HP5800/3710
・|戦闘点《BATTLE POINT》:900
・|知力点《INTELLIGENCE POINT》:310
・|感知点《SENSE POINT》:620
・|予知点《PRECOGNITION POINT》:430
・|技能点《TECHNIC POINT》:600
シャイターン HP2000/950
・|戦闘点《BATTLE POINT》:570
・|知力点《INTELLIGENCE POINT》:1220
・|感知点《SENSE POINT》:790
・|予知点《PRECOGNITION POINT》:550
・|技能点《TECHNIC POINT》:690
『風刃』『砂塵』『土石流』『爆発』『火炎』『呪い』を使用する。
『ヴァリヴァリヴァリィイイッ!』
三本は電撃をビッグフッドに放つ。距離が近くなり威力も増大された電撃はビッグフッドに1930のダメージを与え動きを止める。同時に金田のバットスイングにより920ダメージが繰り出される。そのまま金田は間髪入れずバットスイングを振りかぶる。ビッグフッドの攻撃のタイミングはずらされ、金田の次なるスイングと同時。
『ガァアアアン!』
ビッグフッドの振り下ろされた腕と金田のバットはぶつかり合い、金田は14、ビッグフッドは290のダメージを受ける。巨大な腕が押さえつけるように、金田のバットを押す、が、金田はそれを跳ね除けるように押しだし、ビッグフッドの懐に潜り込み、蹴りをお見舞いしようとする。
が。
『ドオオオオオオオオオ……!』
シャイターンが稲葉さんへと放つ砂塵が金田をも巻き込んでいく。金田の視界は遮られ、その隙にビッグフッドはその場を退くのだった。




