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黒服の男たち

    ……………


 爆弾と魔術罠張り巡らされるホールにて、三本の電撃が上空を舞う獅子ヴァプラを捉える。流石のヴァプラも電撃の速さは抜ける事が出来ない。330のダメージを受け、身体を一瞬硬直させ、墜落する。

 そこへ前衛組がヴァプラに向けて攻撃のため移動を開始する。道は國山先生と靖穂による爆弾と魔術罠の解呪である程度は開けているが、大回りが必要。稲葉さんは身軽に罠を飛び越えるが、ヴァプラの墜落地点にいち早く近づくことで気づき、叫ぶ。


 「まだまだ罠が張り巡らされている!」


 後を追ってくる重吾もその罠の密集した様子を確認し、ギリギリを攻めた移動を思案するが、却下し、金田と共に後衛組に戻る。

 罠の隙間を正確に縫った稲葉さんだけが墜落したヴァプラに攻撃を行う。

 鞭のようにしなやかな蹴りが三発連打され、ヴァプラの横っ腹に計880のダメージを与え、すぐに稲葉さんは下がる。が、ヴァプラはそれを了承済みだった。

 

 『ゴトッ』


 稲葉さんの脚元に上空から爆弾が『落ちてくる』。

 

 ――何故……ここに……まさか!

 稲葉さんが上を見上げ目を凝らすと天井に魔術結合で括られた無数の爆弾が吊り下げられている。爆弾の起動と同じく奴の任意で爆弾は床に落とすことができる。


 『ドガァアアアアアアン!』


 稲葉さんは爆発により11のダメージを受け、纏っていた魔術防護が壊れる、さらに展開された魔術罠に拘束。既に國山先生は稲葉さんへ解呪のため近づいているが、彼女はそのなかで指示を飛ばす。


 「前衛組、頭上からの爆弾に注意して!」


 國山先生の指示を受け、靖穂は指示を更に飛ばす。


 「全員、バラバラに移動して! ヴァプラとの距離を詰めるように!」


 金田、重吾、靖穂、三本はバラバラに動き、飛翔するヴァプラに近づく。國山先生により解呪された稲葉さんもすぐに移動を開始する。國山先生が防護魔術を用意すべく脚を止める。

 ヴァプラはそこへすかさず爆弾を投下するが靖穂がすぐにフォローに入り、爆弾の解呪を行う。爆弾解除と同時に國山先生の防護魔術が三本に付与。同時に三本は脚を止め、ヴァプラへの電撃魔術を開始。

 ヴァプラは当然、三本への魔術の妨害として攻撃を行うかに思えた、が、彼はその場に滞空し首を振る動作を続けるのみで、まるで三本の攻撃を待っているかのようだった。

 國山先生がその様子を見て、三本のバックアップに入る脚を止め、重吾に向けた魔術防護を急いだ。

 三本の電撃と同時に重吾に防護が施される。

 例によってヴァプラは電撃により墜落、金田、重吾、稲葉さんが同時に魔術罠の合間を縫ってヴァプラの墜落予測地点に向かう。

 だが、墜落するのはヴァプラだけではなかった。

 天井からホールすべてを覆うほどの爆弾の雨がヴァプラと共に振り落ちてくる!

 避ける隙は無い!

 

 『ドガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!』


 フロア全体が爆撃され、後衛組によるなけなしの解呪など無意味と言わんばかりの爆炎が全員を覆い、靖穂、國山先生、三本、稲葉さんらは全員死亡状態となり倒れる。金田は瀕死状態となりながら、ヴァプラへバットを向けた突撃を続ける。そして、防護魔術により瀕死状態ながら助かった重吾が、金田に先んじてヴァプラに攻撃を与える。

 その顔には歓喜に満ちていた。

 ヴァプラはその重吾の異常な戦いへの執着を目の当たりにして、その獅子の牙を光らせる口を同じくニヤリと歪ませていた。

 

 「見事也」


 その異常な状況など考慮の外、重吾は両手でヴァプラの巨大な頭部の脳天と鼻の部分を突く。ヴァプラの身体から沸き立つ魔力の覆い、それがたまたまその一瞬薄くなっていたその二点にタイミングよく鋭く研ぎ澄まされた突きが行われ、1100ダメージを与える。

 ほぼ同時に、金田の渾身のバット突きがヴァプラの横っ腹に突き刺され800のダメージを与える。

 ヴァプラはボロボロと崩れてゆく中、ある言葉をつぶやく。


 「勇敢にして無謀なる戦士よ……その蛮勇に応じ、褒美をくれてやる……『天使』に気を付けろ……!」

 

 そうして翼を持つ獅子ヴァプラは消滅し、放課後ダンジョンクラブはボロボロながらも第三層を征し、第四層へと到達したのだった。


    ―――――


 ――『『天使』に気を付けろ……!』か……。モラクスと言い……ヴァプラと言い……。おれたちが遭うボスは皆様子がおかしい……。それに……『天使』……。

 重吾はエントランスホールにて靖穂を治癒するDM(ダンジョンマスター)を見つつ、そう考えていた。彼の大きな翼と白い衣は正に天使のような格好と言える。だが、彼にとってDM(ダンジョンマスター)は友好的な存在であり、『気を付ける』必要性などなかった。

 DM(ダンジョンマスター)はそんな重吾の様子に気づいたのか、國山先生の復活に移りながら、話しかける。


 「何か心配事ですか? 重吾さん」


 重吾は少々動揺しつつも話す。


 「ん? ああ、いや、何でもないよ……。ほら、デスクロウズとかみたいなのがその後あらわれてないかなって?」

 

 その言葉を聞き、DM(ダンジョンマスター)一瞬動きを止める。思案するような様子を見せながら彼は答える。


 「そうですね……。迷宮(ダンジョン)内では今のところ大丈夫です。……ですが、冒険者の間で……『外』に不審なものが居ると噂になっておりますよ」

 

 「不審な者……?」


 「ええ、黒いスーツを着た者たちが何人も、冒険者らの周囲に現れるそうです。ビルの屋上や路地の影などで……。また、あなた達の棲む町『阿嘉霧市』でも他に奇妙な事が続いているとか……。これもこの迷宮(ダンジョン)の拡散が関係しているように思われます……」


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