束の間の平和
……………
エントランスホールでの戦いの直後、迷宮の通路の奥からDMがふらりと戻ってきて、放課後ダンジョンクラブと矢本、千歳らの回復・復活を靖穂、國山先生と共に助けた。
そして、一行はDMに諸々の経緯を説明し、【デスクロウズ】の名前を名簿に記載することを申し出た。
「……【デスクロウズ】構成員それぞれの名前は名簿で確認できました。以降彼らがこの迷宮に入れば警報が発令されます……。そちらの『ビブリオバトラーズ』の方々にも同じ措置がとれますが如何いたしますか?」
奥で倒れる高橋と他二人を見遣った面々は顔を見合わせ、少々迷う。三本は言う。
「あいつら前科アリだが……。どうする?」
重吾が言う。
「別にいいだろ、前に矢本が言ったように『冒険者同士の戦い』は競争を是正する効果もあるんでしょ? ……それに、あいつ等、今回は利用されてたようだし、立場は矢本と同じだろう」
矢本も頷く。
「あいつ等もおれたちと同じく脅されてやってただけだ。……盗みをするような真似はしてない」
「では、これ以上の警報措置は自治会で決定された罰則に則するとしましょうか……。ああ、それと自治会の次の会議ですが……」
その時、エントランスホールの入り口に一人、入ってくる者があった。
矢本が見ると、そこに渡瀬桜が居た。彼女は不安そうな面持ちで周囲を見回し、矢本の元へ走って近づく。
「何があったの……?」
矢本は彼女に申し訳なさそうに答える。
「全部話すよ……全部」
千歳実巳はそれを見て、安心した笑みを浮かべた。
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【デスクロウズ】はその逃走以来、迷宮へと戻ることはなかった。重吾は勝ったとも負けたとも言えない、不完全燃焼に終わった戦いに不満があったが、他の面々にとっては【デスクロウズ】が去ってくれればなんでも良かった。
矢本は皿間らが『誠実組』を利用して自分の周囲に報復が行われることに恐怖があった、が、戦闘当日の街での乱闘事件やそれ以降数日間にわたって音沙汰なく続く日常に、次第に恐怖は薄れていった。彼は渡瀬と千歳と共に今日も『傭兵』として以前と同じ、いや、以前以上に充実した日々を過ごしていた。
冒険者自治会は次の会合で、矢本らの協力もあり何とかスムーズに進んだ。罰則規定としては『窃盗等の現実での刑法』のほとんどに違反するものが対象となる。だが、『決闘罪』に関しては保留され、冒険者同士の合意の上での戦いはある程度認可されることとなった。これは重吾の意見と他の比較的最近迷宮にやって来た者たちの意向が反映された結果であった。
また、制裁に関しても従来通りランキング上位者と他冒険者たちの多くが参加し集団で対応することとなった。
かくして、迷宮の規律は制定され、DMは書記兼議長として規律を明文化し掲示板の隣に張り出した。彼はそれを書き出す際、普段以上の笑みを浮かべていたように重吾たちには思えた。
―――――
重吾たちは第三層のホールで各々のステータスを参照していた。【デスクロウズ】との戦いと、第三層の隅々を探索した彼らのレベルは40を超えていた。
金田修 Lv44 HP100/100 MP600/600
・|戦闘点《BATTLE POINT》:511
・|知力点《INTELLIGENCE POINT》 :187
・|魔力点《MAGIC POINT 》:600
・|感知点《SENSE POINT》:250
・|予知点《PRECOGNITION POINT》:240
・|技能点《TECHNIC POINT》:321
『拘束』を使用できる
三本健 Lv48 HP60/60 MP990/990
・|戦闘点《BATTLE POINT》:210
・|知力点《INTELLIGENCE POINT》 :691
・|魔力点《MAGIC POINT 》:990
・|感知点《SENSE POINT》:690
・|予知点《PRECOGNITION POINT》:340
・|技能点《TECHNIC POINT》:280
『電撃』『拘束』を使用できる
伏見重吾 Lv45 HP70/70 MP550/550
・|戦闘点《BATTLE POINT》:410
・|知力点《INTELLIGENCE POINT》 :210
・|魔力点《MAGIC POINT 》:550
・|感知点《SENSE POINT》:270
・|予知点《PRECOGNITION POINT》:273
・|技能点《TECHNIC POINT》:560
『拘束』を使用できる
稲葉南 Lv43 HP70/70 MP520/520
・|戦闘点《BATTLE POINT》:410
・|知力点《INTELLIGENCE POINT》 :220
・|魔力点《MAGIC POINT 》:520
・|感知点《SENSE POINT》:260
・|予知点《PRECOGNITION POINT》:282
・|技能点《TECHNIC POINT》:391
『拘束』を使用できる
伏見靖穂 Lv44 HP50/50 MP750/750
・|戦闘点《BATTLE POINT》:199
・|知力点《INTELLIGENCE POINT》 :750
・|魔力点《MAGIC POINT 》:750
・|感知点《SENSE POINT》:450
・|予知点《PRECOGNITION POINT》:340
・|技能点《TECHNIC POINT》:481
『回復』『復活』『拘束』を使用できる
國山千秋 Lv44 HP60/60 MP799/799
・|戦闘点《BATTLE POINT》:210
・|知力点《INTELLIGENCE POINT》 :660
・|魔力点《MAGIC POINT 》:799
・|感知点《SENSE POINT》:421
・|予知点《PRECOGNITION POINT》:720
・|技能点《TECHNIC POINT》:82
『防護』『回復』『拘束』を使用できる
重吾が全員に言う。
「さあ……とっとと第四層まで上がろうぜ……。これだけレベルが上がれば、この階層の攻略も楽勝さ」
三本が苦笑する。
「油断は禁物だ。じゃないとモラクスに負けた僕みたいになるぞ」
「あれはお前ひとりで行ったからだろ」
靖穂が釘をさすように重吾に言う。
「兄貴はすぐに調子に乗ってヘマするんだから、緊張するくらいがちょうどいいよ」
稲葉さんも笑う。
「フフフ。緊張してもこけちゃったりするけどね」
國山先生があきれた様子で言う。
「結局緊張がほぐれちゃってるじゃないの……。まあ、久しぶりにただのボス戦だから無理もないけどね」
重吾が先頭に立って言う。
「よし、それじゃあ、ボス部屋までレッツゴー!」
放課後ダンジョンクラブは久しぶりの通常迷宮探索に胸を躍らせるのだった。
そのとき、第三層のボスの部屋では闇の中で『グルルル』と獅子の唸り声が響き、冒険者が来るのを待ちわびているのだった。




