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9 お助けキャラとして頑張ります

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 うっ、ま、まあそうよね。私は、マデリーンの真剣な言葉を聞いて、すごく納得しつつも、複雑な思いだった。


 そりゃあ、人外と結婚しろって言われたら普通嫌よね。あのニタァは明らかに自分は人外だよと私達に教えていた。だって、顔が一瞬崩れてたのよ。あれ見て、変顔がお上手ですねと思える人は少ないわ。


 でも、アルス、マデリーンカップルファンとしては複雑ですよ。マデリーンがアルスとは絶対に結婚したくないって言ったんだから。


 でも、でも、私はマデリーンのお助けキャラを自認しているわけで、ヒロインには心から幸せになってもらいたい。それに友達付き合いするようになってから、本当に好きになったわ。優しいし、頑張り屋さんで、何より雰囲気が好き。なんだか合う人っているじゃない?私にとってマデリーンは一緒にいて心地よい大好きなお友達になっている。


「分かったわ、マデリーン。なんとかアルス様と結婚しなくて済むように考えてみるわ。とりあえず、仮病でもなんでも良いからお泊まりの約束はギリギリまで引き伸ばして」


 そう言うとマデリーンは嬉しそうに頷いた。


「ありがとうございます。私もリンダ様がベルゼ様から逃れられる案を考えますわ。」


 マデリーンはそう言うけど、私があの悪魔さんから逃れるのはきっと難しい。常識が通じないからね。あいつは思い通りにならなければ、私を殺す事に迷いがない。罪悪感もほとんど無い。怖いわ。怖すぎるわ。


 そして、私が死ぬとこの世界が悪魔さんにとっては不要になって滅ぼされる可能性もある。


 あー、嫌だ。嫌だわ。私が人外と結婚するより無理だわ。お父様もお母様も、ランもアディード一族はずっと私を愛してくれた。私もこの世界が好き。それに、ベールゼブブは悪魔なんだけど、元々あの辺りの悪魔は別の信仰では神だったはず。ちなみにこの世界の創造神の名前はベルゼアス。多分あいつだ。


 私の気を引くために、前世で好きだったゲームの世界を再現してて、その世界が仮想現実でないとしたらそれを作ったのなら、まごうことなく創造神だ。これが仮想現実としてもゲームマスターになるだけで、その仮想現実の中ではやっぱり神でしょう。


 前世の秋月 桜の感覚ではベールゼブブは悪魔だし、頭の中にある記憶を考えればやってる事は悪魔以外の何者でもないけど、まあ、それでもこの世界の神な訳で……あ、でも、明らかに最強じゃないよね。悪魔にされた以上、もっと強い神がいるし、悪魔の中でもナンバーワンじゃないし……妻になんかなったら、その辺りもややこしそうだなあ。


 色々と気は進まないが、あの悪魔さんから逃げる事は、ほぼ諦めている。それなら私は、今日のお泊まりを決行して、その時マデリーンの事を頼むというのはどうだろう。


 マデリーンに何度か探りを入れてみたけど、彼女は他の攻略対象に好意は無さそうだ。今の時点である程度の仲なのは、無一文で城を追い出されたジオルだったりする。


 うちで引き取って、別邸にいるんだけど、マデリーンは何度も足を運び、励ましたり、回復魔法を使ったりしているようだ。そのおかげでジオルはめきめき回復して、キラキラしい王子様ルックスに戻っている。今までの俺様少年から、陰りを帯びた大人になったようで、ちょっとドキドキしているのは秘密だ。世話になってばかりでは申し訳ないとメイドの仕事を手伝ったりし始めた。いや、これはなかなかの物件。マデリーンを任せても良いのではと、私は勝手に思い始めている。


「そうだわ。マデリーン、今ジオル様のことどう思っているの?アルス様を断る上で、理由を聞かれたら、マデリーンはジオル様に同情して愛し合ってしまったなんて言っても良いかしら。」


 ジオルはあんなにマデリーンに恋していたし、ゲームで言えばメインルートなのよね。もう、跡形もないほど話が変わってるけど、最終的には幸せになれるんじゃないかな。


「え?」


 マデリーンが困惑している。あー、だめかな。


「いえ、あの、ジオル様と貴方がと言うのは、ベルゼ様には分かりやすいかと思ったの。ジオル様はマデリーンに夢中だったし。ベルゼ様から説得されればアルス様も無視できないと思って。それにジオル様が一皮剥けてなかなか素敵になってきたから、このままじゃ可哀想で……あ、でも、ダメなら良いのよ。最近は二人の仲が良さそうだったから、もしかしたらそうなのかなと思っただけなの。」


 それに、あの悪魔さん、ジオルが前世の彼方だから私との仲を心配していた。だから、マデリーンとジオルがゲームどおりに恋人になれば安心しそうだし、アルスを説得してくれそうかなと。


「……そうですわね。ジオル様のこと嫌いではありません。あんなことがあったのに前を向いておられるのは尊敬しています。……分かりましたわ。今はアルス様よりジオル様の方が好きですわ。リンダ様のお考え通りによろしくお願い致します。」


 うーん。アルスがどうしても嫌だからジオルでもって感じね。まあ、うん、仕方がないわ。これしか考えが浮かばない。早くしないとアルスも手が早そうだし。うん、うん、きっと前世の彼方だし、ジオルはいい奴よ。多分私に酷いことしたのは悪魔達に何かされたんだわ。あんなに愛されてるんだし、マデリーンも幸せになれると思う。


 経済的にもこの作戦がうまくいけば、領地の一つ、爵位のひとつも貰って不自由なく暮らせるはずだわ。無理ならうちの荘園の一つくらい管理させてあげよう。


 私はヒロインの幸せのため、悪魔の生贄になるべく馬車に乗り込んだ。できれば、作戦は上手くいって、悪魔さんとは進展がない事を祈りながら。

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