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26 トランス

 作戦会議の翌朝。

 つまりナンデモニウムでボクがサメ怪人に見つかって『戦争』が始まってしまった次の日だけど、もう『偵察部隊』と『戦闘部隊』をヴァルハラから送り出せる準備が整っていた。

 こんなに早く終わったのも、みんなのおかげだ。


 特にリゼちゃんの働きがすごい。

 あの銀の魔動車(アルゼンタム・マキナ)が改造によって、もう馬車というより砲塔と分厚い装甲を纏う戦車みたいな形状となり、完全に魔力で走るため馬すら必要なくなったのだ。

 おまけに車輪にも改造を施したようで、雪の上でもすいすい走れて二つの部隊を目的地まで迅速に運べる。

 言うなれば銀の魔動車・改(アルゼンタム・マキナ)だね。


 問題点は一台につき十人程度しか乗れないことだけど、そこはボクが同じものをエネルギーで複製すれば解決した。

 リゼちゃんも最初からそのつもりで設計していたようで、イメージしやすい図解まで用意していたよ。


 実は雪道の移動手段をまったく考えていなかったので、リゼちゃんが用意してくれて本当に助かった。

 ただ、リゼちゃんによるとアレクシスさんの指示によるもので、改造できたのも助言があったからこそらしい。

 さすがは経験者というべきか。なにが必要になるか把握しているようだ。雇うようにアドバイスしてくれたブラッドさんにも感謝しないといけないね。


 ちなみに『偵察部隊』と『戦闘部隊』のメンバーは────。



○偵察部隊

 指揮官:ザクロ

  隊鳥:レッドアイ(100羽)

  隊鳥:ライトニングフェザー(100羽)

  隊鳥:サイレントアサシン(100羽)


               総勢301羽



○戦闘部隊

 指揮官:夜美

  隊鳥:シラタマ

  隊員:グラキエス・ユニコーン

  隊員:霧込む騎士隊(ミスティーナイツ)(五十名)


               総勢53名



 こんな感じになっている。

 ちょっと驚いたのは、戦うのは苦手だと言っていた夜美さんが『戦闘部隊』に立候補したことだ。

 夜美さんいわく。


『元はといえば私のミスだから責任を取らせて欲しい』


 などといって譲らないのである。

 今では剣の素振りまでして、やる気に満ち溢れている。ただの罪滅ぼしとは思えないけど、どういった心境の変化だろう。

 本人がそれで納得できるなら止めないけど、無理はしないで欲しい。


 グラキエス・ユニコーンは乗ってよし、戦わせてよし、回復役を任せてよしと器用だからメンバー入りは理解できる。

 だけど、シラタマまでメンバーに入っているのはなぜだろう。


 理由はよく知らないけど、夜美さんが連れて行きたがっていた。魅惑のもちもちボディが気に入ったのかな?

 ちなみにシラタマも乗り気で、夜美さんの頭上をふわふわ浮かんでいる。邪魔にならないなら別にいいけど、ちょっと心配だ。


 そして最後の霧込む騎士隊(ミスティーナイツ)こそが、ボクの設立したヴァルハラ騎士団だ。

 正確には騎士団の中のひとつで、ゆくゆくは第一騎士団みたいな感じにするつもりだよ。

 まだ他に騎士がいないから、今は唯一の騎士団だけどね。


 霧込む騎士隊(ミスティーナイツ)は五つの小隊に分けられていて、それぞれ五名の小隊長が九名の騎士を率いる形だ。

 ただ、みんな黒い騎士甲冑で他の騎士と見分けが付かないので、小隊長にだけ飾りを付けたり、名前を付けて区別している。


 その名もグラム、デュラン、エクス、レイヴァ、アスカだ。

 さすがに五十名全員の名前を考えるのは難しいので、申し訳ないけど小隊長だけになっている。

 いずれクーちゃんに考えて貰おうかな。やっぱりやめとこう。


 出発前に激励するつもりで声をかけてみる。


「がんばってください」

「了承、我々、完勝、確定」

「でも無理はしないでくださいね」

「主君、感謝、至上、法悦」


 風が囁くような声でグラムが答える。

 ちょっと独特な喋り方をするので、正確に意味を汲み取るのは難しいけど、がんばってくれるみたいだ。

 ありがとう。でも本当に無理はしないで危なくなったら戻ってね。


 そんな二つの部隊が、いよいよヴァルハラから出発する。

 作戦総指揮はアルヴィトが務めるので、ここから先はボクの仕事はもうなくなってしまって……いや、ある!

 ボクはこれから、年末に控えるお祭りの準備をしなければならないんだった。

 慌ただしくて忘れかけていたよ。


 ダンジョンが女神さまの作った試練とか、エネルギーの正体とか、色々と驚く情報もあるんだけど、これは急ぐ必要もないし落ち着いてからにしようかな。

 まずは飾り付けのイルミネーションからだ。





 そんなこんなで二日後。

 一通りの準備がようやく終わった。

 ヴァルハラのあっちこっちがクリスマス仕様の飾り付けで彩られて、電球が眩しいほどに明るく照らしている。


 少し凝ってヌマネコちゃんや、ぶっ飛び兎、ホットドッグたちの形を模したイルミネーションも作ったり、有名な光のアーチを真似してみた。

 これが大好評で、調子に乗ったボクは光の滝にも挑戦していたら思ったより時間がかかって大変だったよ。

 ほとんどボクじゃなくて、お手伝いのすずちゃんがやってくれたんだけどね。


 他にも料理は温かいものを中心としてメニューを考えた。

 これは当日、ボクがエネルギーで用意するだけなので楽だけど、職人ギルドの料理人さんたちに、自分たちの手で作った料理をお披露目したいと頼まれたので、テーブルを別にしてバイキング形式で自由に食べられるようにするつもりだ。

 料理の感想を聞いて、さらに精進すると意気込みを語っていたよ。


 それと忘れてはならないのが、クーちゃんから頼まれた羊肉だ。

 たしか仔羊のお肉がラムで、成長した羊のお肉をマトンと呼ぶんだったっけ。

 これをエネルギーで生成するのは問題ないけど、ボクは食べたことがないので味がよくわからなかった。

 おいしくても羊のお肉だと感じられなければ意味がないと思う。


 そこで食べたことがあるというユリウスに頼んで、いくつか試食して貰った。

 ジンギスカンは具体的にどういう料理なのか知らなかったので、ユリウスが教えてくれた仔羊の骨付きロース肉(ラムチョップ)と、スパイスを付けて焼いたマトンに、ビーフシチューならぬマトンシチューなどを作ってみる。

 これは味見をしたボクも大満足の味だった。


 でもマトンのほうは、ちょっとクセというか口に入れると独特の匂いがする。

 ボクは苦手だけどユリウスはそれがいいと言っているし、ラムチョップは食べやすかったので、人によってはそっちをオススメしよう。

 これで飾り付けと料理に関しては万全だ。


 続けて……お酒について考える。

 商人ギルドが仕入れた品を購入して飲むのは以前から許可していたけど、ボクがエネルギーでお酒を生成するのは断っていた。

 でも年に一度のお祭りなら、解禁してもいいかなって思い始めている。


 ひとりでは判断できなかったので、ボクはイリスちゃんに相談してみた。


「アルマさまが作ったお酒でしたら、わたしも飲んでみたいです」

「あはは、大人になってからですねー。……あれ? そういえば、お酒って何歳から飲んでいいの?」

「どういう意味ですか?」

「え、どうって……あれ?」


 なにやら話が噛み合っていないので落ち着いて確認すると、どうやらお酒を飲むのに年齢とか関係ないらしい。マジかー。


「あまり強いお酒は周りの大人が止めますけど、弱いお酒でしたら子供でも飲むそうですよ」

「じゃあイリスちゃんも?」

「わたしは、お父さまが許してくれませんでした……」


 だからこそ、ちょっとお酒に憧れみたいなものを抱いているみたいだ。


「うーん、それなら……ちょっとだけ飲んでみますか?」


 ボクは小さなボトルを作り出して片手で掴む。

 もちろん中身はお酒だ。


「でも、アルマさまはお酒が嫌いだったんじゃないんですか?」

「お酒というより、それで酔った人がちょっと……でも、これはアルコールが弱くなるようにイメージしたので大丈夫のはずです」


 二人分のグラスも用意して注ぐと、イリスちゃんが首を傾げた。


「あれ? アルマさまも飲むんですか?」

「ま、まあ、せっかくなので……」


 正直に言ってしまうと、ボクも少し興味があったり……。

 だって、あのブラッドさんもおいしそうに飲んでいたし、この国に年齢制限もないんだったら、ちょっとくらいいいよねって思うんだ。

 もし、これがひとりだったら怖くて思い留まったけど、イリスちゃんと一緒に飲むということもあって、気が強くなっているのかも知れない。


「えっと、それじゃあイリスちゃん……かんぱい? でいいのかな?」

「そ、そうですねアルマさま。かんぱいしましょう!」


 ぐだぐだしているけど、とにかく飲んでみよう。

 グラスに口を付けると、まず最初に甘いフルーツの柔らかな香りがした。その次に口の中に広がったのは――――。


「んっ!」

「ど、どうしましたアルマさま?」


 様子見していたイリスちゃんが、ボクの反応にわたわたしている……けど。


「すっごく、おいしい!」

「ほ、本当ですか?」

「イリスちゃんも飲んでみてください!」

「で、では……んっ 本当です……こんなにおいしいなんて」


 恐る恐るだったのは最初だけで、イリスちゃんは流し込むように飲み干してしまった。もちろん、ボクのグラスもとっくに空っぽだ。

 ボクとイリスちゃんの目が合った。お互いの心が繋がった気がする。


「……もうちょっとだけなら、いいですよね?」

「そ、そうですね。もうちょっとだけでしたら……」


 お代わりを作り出して再びグラスに注ぎ、するすると喉を通るお酒に舌鼓を打って、またお代わりを……。

 ふと気付けば空のボトルが周囲に散乱していた。


「しゅこしらけ、のみふぎひゃいましらね……」


 よったらこまる。

 そろそろやめよう。

 いりすちゃんをみる。

 ねてる。

 ぼくもねむい。

 ねちゃおうかな。

 ねる。


 ……あ、ねこ。











 アルマとイリスが酔い潰れてしまった頃。

 地上にあるヴァルハラの入口前では、門番を務める警備隊が今までない事態に直面していた。

 突如として武装した集団が現れ、こう言い放ったのだ。


「我らは『春の神殿』より派遣された神殿騎士である! ここに無辜の民を唆すダンジョンがあるとの報告を受けて調査に参った! やましいところ無くば抵抗せず我々に協力せよ!」

ここまで読んでいただき、ありがとうございます!

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