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1 試食会

遅くなりましたが少しだけ書き溜めたので

連休中に投稿しようと思います。出遅れましたが。

「本日のメニューは……これです!」

「……おぉー」

「開いた蛇みたいなのです」

「とても良い香りですね。これが『ウナギのカバヤキ』ですか?」


 どーんっ、とボクが出した料理にリゼちゃん、すずちゃん、イリスちゃんが興味深げに注目する。ヘビじゃないよ。

 たしかに形は似てるかもだけど、テーブルの上にあるのは間違いなくウナギの蒲焼だ。


「ではどうぞ、食べてみてください」

「……いただきます」

「いただくのです」

「頂きますね」


 まずは単品で味わって欲しいからご飯を別で用意している間に、みんな香ばしいタレの匂いに釣られて次々に口へ運んでいく。


「どうですか?」

「……ふわふわ」

「おいひいのです」

「甘いタレが柔らかい身によく合っていますね。上品な味わいです」


 三人の感想からすると大好評のようだ。

 特にイリスちゃんのレビューは細かく教えてくれるから、とても参考になる。


「こっちのご飯と一緒に食べるとよく合いますよ」

「……んふー」

「最高なのです」


 言われずともリゼちゃんとすずちゃんはもぐもぐ食べていた。

 続けてイリスちゃんもウナギとご飯の組み合わせを試し、とても幸せそうに頬を押さえる。


「じゃあこれもメニューに追加で大丈夫ですか?」

「……賛成する」

「すずも賛成なのです」

「わたしも異議なしです」


 満場一致で可決した。

 こんな感じで最近ボクたちは第十階層に集って、新しい料理をみんなに試食してもらい、アルマ食堂のメニューに追加するかを決めるのが恒例となっている。


 どうしてわざわざ試食するのかと言えば、そこには大きな理由があった。


 ただでさえボクが出した料理は、みんな喜んで食べてくれる。

 もしも、それが日本人でも中毒になってしまうほどの人気料理……例えばカレーやラーメンなんて食べたらどうなってしまうのか?

 もしかしたら毎日毎食そればかり食べ続けてしまい、栄養が偏って病気になったり、ぶよぶよに太ってしまうんじゃないかな……。

 そんな不安があったから、今まで出すのは控えていたんだよ。


 最近はリゼちゃんも以前に増して肉付きが……いやいや成長だよ! 成長してしまっているからね! うん……まあ、台所を預かっているボクとしては、決して無視できないのである。今度そっと体重計を設置しておこう。


 そういうわけで、まずはみんなに試食をしてもらってから、メニューに加えても大丈夫か確認しているのだ。

 ちなみにカレーとラーメンは特別な時にしか出さないことになった。予想した通りだったね。


「アルマさま、このウナギのカバヤキは高級料理としても通用しそうです」

「イリスちゃんが言うなら間違いないですね! それなら特別メニューにしておきましょう」


 特別メニューは値段が特に高くて、第六階層のホテルでも提供する、つまり貴族も食べるような料理という意味である。

 元々、ウナギはお高いイメージがあったボクからすれば納得できる扱いだ。


 ちなみにカレーやラーメンも大好評すぎるくらいだったけど、イリスちゃんによると貴族向きじゃないとかで、こっちは特別メニュー入りしていない。

 まあ、ボクのイメージ的にも高級料理って感じじゃないけど、なんかちょっと納得できないよね。


「ところでウナギってあまり有名じゃないんですか?」

「……名前だけ知ってた」

「食べたことはなかったのです」

「わたしも、話に聞いたことはあるんですけど……」


 三人とも知っていても、見ることもなかったみたいだ。

 どうやら他の国でなら食べられているけど、この辺りでは知らない人のほうが多いらしい。

 ちなみに、その食べ方はイリスちゃんによると大きく二つ。


 ひとつは蒲焼に近くて、かなり人気の料理らしい。

 もうひとつはウナギの煮こごりで、今はあまり人気がないらしい。

 なんだか両極端な話だ。別々の国なのかな?


「……アルマちゃん、明日のお昼はなに?」

「もう明日の話ですか? うーん、どうしましょうか……」


 もう色々と出したから、そろそろボクの知識だとネタ切れだ。

 あるにはあるけど、お寿司とかお刺身はメニューに載せられないと思う。きっと出せばリゼちゃんはおいしく食べてくれるけど、マネをして新鮮じゃない生魚を食べる人が現れるかもだ。


「もうメニューも一杯ですから、新しい料理はここで止めてもいいのでは?」

「そうかも知れませんね」


 ボクはイリスちゃんの提案に頷く。

 あれから義足で歩くのにもすっかり慣れて、もはや本物の足と同じように出歩けるようになったイリスちゃん。

 領主さんの教育方針が良かったのか見識が広く、貴族としての知識や価値観を活かして、博識なリゼちゃんや万能なすずちゃんとは、別方向で協力してくれているからボクも大助かりだ。


「そうだ! そろそろ温かい料理がいいかもですね。お鍋とか」

「素晴らしい考えなのです、アルマ様」


 お鍋にすずちゃんの耳と尻尾が反応した。

 この世界の和風な地方出身らしいから、お鍋料理は親しみ深いのかな?

 ともあれ、もうそろそろ寒くなって来る季節だからね。お鍋はぴったりだ。




 思い返せばイリスちゃんと出会ってから、もう半年くらい経っている。

 あっという間だった気もするし、色々あって長かった気もするね。

 変わったところもあれば、なにも変わらない部分もある。


 例えばイリスちゃんは、今はヴァルハラの第六階層に新たに建てたお屋敷で暮らしているよ。

 大型ホテルと同じ階層で、噴水広場の周辺は土地が余っていたのだ。

 最初はギルド支部や食堂と同じ第三階層に建てるつもりだったんだけど、警備の観点から中止になった。人通りも多くなってるからダメらしい。


 あとヴァルハラの人口が、半年前の倍まで膨らんでいる。

 数字で言うと、だいたい二百人くらいだったかな?

 らしい、というのはボクが数えたわけじゃなくて、そういう報告をあとから聞いているだけだから、ちょっと曖昧だ。

 まあ、その辺りの細かい仕事を他の人に任せているからこそ、こうして試食会をのんびり開けているわけだけどね。


 せっかくなので詳しくヴァルハラの現状について確認しよう。


 といっても大半は変わらず、大きく変化した部分はあまりない。

 ギルド支部が色々と動いているけど、そちらはボクと直接関係ないから具体的になにをしているのか知らないからね。たまに許可を求められて、リゼちゃんたちと相談してからオーケー出してるくらいかな。


 密接に関係あるのが冒険者ギルド支部だね。

 最近は若手だけじゃなくて中堅冒険者も訪れていて、今では六十人も訓練所に滞在している。

 どうして中堅もいるのかと言えば、この半年間でヴァルハラに送れる若手がいなくなったから、上から引っ張って来たのだとか。

 最初は訓練のやり直しと聞いて反発するけど、アトラクションを体験したり、新しい訓練所でぼこぼこにされた後は、とても素直に訓練するみたいだ。


 その訓練とは例の第八階層……ではなく第九階層だった。

 大自然が溢れすぎている第八階層は、まだモンスターの狩場として開放するには時期尚早なので、先に第九階層を作り上げたんだよ。


 これは以前から考えていた、本物のダンジョンと同じように攻略の練習ができる場所があったら面白いんじゃないかな、という閃きを実行に移したのである。

 もっともボクは他のダンジョンを知らないので、ほとんどゲオルクを始めとした冒険者の知恵を借りての設計だったけど、結果はなかなかのものだ。


 一言で表現すれば、第九階層は大迷宮フロアになる。

 文字通り、長い通路が地下に張り巡らされている迷路で、最もポピュラーらしいダンジョンを模していた。

 内部には様々なトラップや、扉を開けるのに謎解きをしたり、仕掛けを解除したり、色々なギミックが用意されているそうなので、すべて再現してみたよ。


 つまり、この大迷宮を攻略できるようになれば本番のダンジョン攻略でも成功は間違いなしである。

 残念ながら、中堅冒険者でも未だに攻略者は出ていないけれども……。


 ちなみに実力不足で大迷宮へ挑む以前の若手たちは、相変わらずゴーレムとの戦闘とアスレチックによる訓練を続けている。

 そちらで合格判定が出たら、大迷宮への挑戦権が得られる形だね。

 こっちは順調で、すでに何人かが大迷宮へ潜るようになったみたいだ。

 調子に乗って増長しないか心配ってゲオルクは言ってたけど……。


 冒険者と言えば、ものすごく変わった冒険者を思い出した。

 それは桜色のきれいな長い髪をなびかせる美女で、お酒が飲める食堂のほうで舞いを披露していたのだ。冒険者っていうより踊り子さんって感じだったかな。


『みんなヤッホー! モニモニでーす☆ 今日もよろしくねーっ!』

『うぉぉぉぉ!』

『こっち見てくれー!』

『モニモニ! モニモニ!』


 むしろアイドルかも?

 その人気はすごくて、本当にライブ会場みたいな熱気だったからね。

 あまりに騒ぎすぎたので、最初は食堂から追い出されていたけれど、たまに許可を取ってライブ……じゃなくて舞いを披露するようになっている。

 月一で開催しているお祭りの日には、その人の舞いが定番化しちゃうほどだ。


 ただ、とても印象的だったのはモニモニさんじゃなくて、それを初めて目にしたノーラさんの表情だった。

 とても驚いたような、呆れたような、でも喜んでいるような、複雑な顔をしていたので何事かと聞いてみたけど……。


『い、いえ、その、私からはなんとも言いかねますと言いますかぁ……』


 涙目で視線を泳がせて明らかに動揺していたので、ボクはそっとしておいた。

 誰にだって聞かれたくないことがあるからね。

 もしかしたら知り合いの人だったのかな?

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― 新着の感想 ―
[良い点] 再開、お待ちしていました‼️
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