第23話 チンピラヒーロー まさおと杏子。
王室にて、王国側の者らは当然とばかりに別大陸から来たという博士の言葉を信じず、王様を侮辱したといっては罵声を浴びせる。
だがその中で不思議とデスラム王は怒る事もせずただオロオロし、王妃は何かを見定める様にじっと現状を見据えていた。
そこで事態は一変する。
『あのさ王様ーーーー』
あろう事かキツネ獣人のコークが皆の前へ出て、王に向い言葉を発したのである。
次の瞬間ーーーデスラム王の側にいた近衛兵三人が鬼の形相を持ってコークへと斬りかかった。
本来ならばコークに限らず博士達にもいつその刃が届いてもおかしくはないが、今だかつてないこの特殊な状況と竜に兵士達は二の足を踏んでいた...
しかし奴隷の獣人ごときを王の前に歩ませ発言させてしまった事で、自責の念と怒りが王国兵士としての使命を強く呼び覚まし、まさおに斬りかかった時とは比ぶべくもなく油断も隙もない全身全霊の斬撃がコークへと見舞われるーーー
[獣人の奴隷風情が痴れ者めーーーっっ!!!]
『ーーーーーーーッッッ!?!』
コークも王族に対する礼儀を知らない訳ではないが杏子達の為にと気持ちが先走った言動であり、《生きて帰る事が出来たのなら》、うっかり者のコークらしいと村の者達に大笑いされた事だろう。
そしてそんなコークの目の前に一瞬にして間合いを詰めた三人の近衛兵の斬撃に、次の瞬間 己れの首が床に転がる姿を脳裏に過らせるーーーしかしコークが死を覚悟し目を閉じる前に見たものは、
コークと兵士らの間に割って入る博士、寧々、颶、まさお、電子、杏子の姿だった。
この6人は勢いをそのままにコークに斬りかかった兵士らを吹っ飛ばすと、追随を許さないようコークを守り立ちはだかるその姿に、思わず王側からは動揺の声が漏れる...
それは命を救われたコークですらパニクった。
杏子達と初めて会った時もゴブリンの群れから自分達を助けてくれたし、チンベルグ自治領の町でもガイハの為に杏子が王族の領主を殴ったが、それとは訳が違う。
そもそも【王族】と【王】とですら次元が違い、【王族】に逆らってもその親等の遠近によっては腰を上げない者達もいるが....しかしこれが【王】に逆らうともなれば十つ国全てが動き、大陸全土を敵にまわすだろう。
すでに王に喧嘩を売ったまさお達からすれば今更ではあるが、それでもコークは王への不敬にて処刑されても仕方無しと思っていたのに、まさお達は《王よりも》獣人奴隷であるコークの手を取ったのだ。
『バッ俺なんかの...何をやっ....ゼ...』
そしてコークがまさお達に何かを言いたげに口を開くが、溢れ出る涙の方が多く言葉はそれ以上出て来なかった。
すると杏子とまさおがヤンキーさながらポケットに手を突っ込んでガニ股歩きで王へと歩み寄り、途中止めに入った兵士を杏子の瞬間移動でかわしてデスラム王の前に現れると、二人はそのままデスラム王の胸ぐらを掴んでーーー
「おうオッサンッッテメーあっしのダチに何してくれとんじゃワリャぶち殺すぞ!」
「おうっ杏子のダチは俺んダチじゃっっ文句あんなら俺んトコ来いやゴルアァァッッ!!」
「えっ?痛っえっ?ワシは何も?!ゴメンナサイ?!?」
ラストチンピラ~の如く、杏子とまさおがデスラム王のふくよかなアゴや腹をタプタプしながらヒザ蹴りを喰らわせ、その光景を見たカルラ宰相とトンガマ宰相は、
「な、なんだコレは?うえっ気持ち悪い...」
「ゆ、夢...コレは夢ざまぁす...アハハ」
ーーーと思考回路をショートさせ具合を悪くさせ、
[あの様な輩から王を守れなかったせいであの様な...終わった。我の一族もろとも処刑台に.....]
と残った兵士らも床に剣を落として己れの末路に絶望した。
現代の地球ですら、ドコぞの大統領相手に同じ行為をしようものなら普通に国際問題に発展し、止められなかった護衛官はお飯食い上げとなるだろう。
ましてや権威を重んじるこの世界でこんな恥辱と侮辱を混ぜた行為を王族にするなど【王族同士】ですら絶対にあり得ない...それをこの馬鹿二人はやったのだ。
そしてトルネとネルコにナタリカ達もその常軌を逸した光景に呆れて気を失いかける中、ガイハとレイビィはコークの危機に怖じ気づき身動きも取れなかった後悔よりも先に魂が震えていた。
この者達は友人の為に...いや見知らぬたった一つの弱き小さな命の為にすら世界を敵にまわす事に微塵も躊躇わない。
ガイハ達は例えここで命を散らそうとも、己れの辛く苦しい生涯で杏子達と出会えた奇跡に感謝し笑って死ぬ覚悟をした。
そこへドドドッと王室が揺れる程の地響きが鳴り、皆が何事かと辺りを見舞わすと、王室の外で何やら騒ぐ声が聞こえて来たーーーーそして、
「金剛斧岩斬撃っっっ!!」
その何かの必殺技の様な雄叫びと同時に、寧々の能力によって氷で閉ざされた王室の扉がぶち破られ五眷聖であるゴランとシュナと、ゴランに担がれたガーナが王室へと飛び込むように現れたのだった。




