第13話 決戦 序列第7位国 王都イシュダリア 【Ⅳ】
王都イシュダリア闘技場にて王族に仇なす者達の討伐として王都中から兵士らがかき集められる。
しかし その集まる兵達も場内には入れず場外や出入口付近で溢れ返り、周囲は怒号と混乱で喧騒していた。
〔おい中に入れないぞっソコをどけ!!〕
〔謀反人は数人だろっ何でこんな事になってる!〕
〔中で一体何が起きてるんだ!?〕
そして闘技場内から聴こえる激しい爆音と共に悲鳴や叫喚が響き渡ったかと思った瞬間、辺りは急に静寂に包まれた...がそれも束の間、また場内からは今までとは比較にならぬ程の絶叫が足元からも地鳴りのように伝わって来た。
ーーーと同時に闘技場の出入口から足を怪我し血を流す幾人もの兵士達が次々と外へ運ばれて来る。
〔どけっお前達も見てないで怪我人を運び出せ!〕
〔うああぁっっあっ悪魔だ?!助けてくれぇ~〕
〔堅聖様もやられ...なんなんだよアレはぁ~~〕
場内から運び出される錯乱した兵士達を目の当たりにした外の兵士らに一気に悪寒と緊張が走る。
〔ホントに中では何が起きているんだ...〕
そして闘技場の中でもスティールマンに足を撃ち抜かれた兵士らが痛み悶えながら他の者らの手で外へと運ばれていき、観客達もこの不測の事態に我先にと出入口へ詰め掛けパニックが起こる。
《 クスクスクス 》
それは闘技場 皇帝席でも同じで、イシュダリア宰相 カルラの指示により大勢の近衛兵に囲まれて王らは闘技場から城まで直通の地下通路を通り避難を始めた。
〔ここは危険ですっデスラム王に王妃、早く城へと避難してください! トンガマ宰相殿もさぁ早く此方へ!!〕
「あわわわっこれは大変ですゾ!?」
「おっ王族に対する侮辱とこの屈辱っっ決して忘れないざまぁす!!!」
トンガマが捨て台詞を吐きながら姿を消すなか闘技場の中心では依然 まさお達を取り囲み警戒する兵士らも不測の事態と未知への恐怖、また怪我をした者達への対応と態勢を整えるのに指揮は大きく乱れ、それは眷聖らの声によっても統制は難儀した。
その僅かな隙を見計らって博士達も作戦を確認する。
「さぁ全員揃ったなら百人力だぜ! 今からここにいる奴ら全てブッ飛ばす!!」
「うん、却下だね。」
「却下よ まさお。」
まさおの言葉に博士と颶が即決で拒否る。もし先程のまさおの撤退案を実行していたならば、空に待ち構えていた眷聖 二人によって計画は失敗に終わるどころか死者すら出ていただろう。
しかしその前に運良く眷聖らの妨害によってその存在に気づき、そして寧々達との合流によって今なら全員無事に撤退できる千載一遇の好機だと博士は確信する。
「まさお君には悪いが一旦 仕切り直しそう。空からの逃走を確保する為、私は上の《わいばんらいだぁ》を何とかする、他の皆は上の魔方陣を展開してる魔法使い達を頼む。」
その後はまず杏子が子供達とトルネとネルコを連れて瞬間移動し博士と颶が二人づつ連れて空からの撤退、最後にまさお・電子・寧々と残りの者が殿しつつ頃合いを見計らって撤退するという作戦になった。
「ちっしゃあねぇな、お仕置きはまた今度にしてやるか。んじゃ敵さんがゴタついてる内にやるぜ!」
そう言いながら まさおはナタリカ達を見た。
「ま、まさお殿...もしや私達の事を案じて.....このナタリカっそのお心づかいに痛み入ります!!」
「ナタリカ、それはもういいから。」
ついにクラリが呼び捨てにし始めた。
「ねぇ?アナタ達は寧々さん達の新しい友達かしら?」
『へっ? あっいやっ...何というカ 俺達は.....』
そこへ颶から唐突に声をかけられたガイハが突然の事に驚きマヌケな声をあげると、杏子がサムズ アップしながらガイハ達を紹介する。
「あ~ガイハさんにコークさんにレイビィさんッス、もち アッシらのダチっスよ!」
「そう、アナタ達も戦えるならこの子達を少しだけお願いできるかしら? 私もやられっぱなしは性に合わなくてね。」
そういって颶は微笑むと処刑されるはずだった子供二人をガイハらに預け、手に能力を纏いながら宙へ浮かぶ。
「あ~大分キレてるッスねぇ...」
『てゆうか、まさかこの子らの為に国に喧嘩を売ったのカイ?』
『良い意味と悪い意味でも杏子達の仲間って感じがするゼ。』
『あぁそうだナ、あの時の杏子と同じ眼をしてやがる。そして簡単に俺達を信じやがるんだナァ...』
颶の先程の温かい笑みが急に温度を下げた事でガイハ達の背筋に寒気が走るが同時に胸が熱くなる感じがした。
そしてガイハの毛が逆立ち筋肉に力を入れた体が一回り大きくなると、それに続きコークとレイビィの目も座った。
『こっちは任せろだゼ!』
『いっちょやってやるカイ!!』
一同が360度を取り囲む王都兵に向かい臨戦態勢を取る。そこへ まさおが大声で突撃の号令を出した。
「うおおぉぉ~まさお軍団っアッセンブル!!」
「『「『「 ........。」』」』」
暫しの沈黙がながれた。
『 ん? あせぶるって何カイ?』
「出た...まさおの英雄症候群」
レイビィの頭にはてなマークが飛び出ると、電子がガックシと肩を下げた。
「いや電子っちもそ~ゆ~トコあるスけどね。小鬼さんの時とか...」
「だ~~~~その事はーーーむしろその後の事はもっと忘れて!!?」
「まさお殿っこの不肖ナタリカにそのあせぶるの事をもっと詳しくっっ!!」
「なにコレ...」
クラリが深い溜め息をついた。
このグダグダ感 満載の状況を払拭するかのように博士がコホンと咳払いをすると、
「さぁ始めようか。」
博士は空に舞うワイバーン ライダーの元へと飛び去り、続いて寧々が賢聖 魔法兵団へと特攻をかける。
「 氷ーーーっっ」
「そうはさせねぇだワ!!」
寧々の先制攻撃を立ち塞がるように拳聖リムークが寧々の顔面に蹴りを入れる。
パキパキッ
しかし地面から突き出た氷の障壁に阻まれ、そのままリムークの足が凍り始めると危険を察知し瞬時にリムークは後ろへ下がる。
そこへリムークの後ろから拳聖 遊撃兵団の数人が飛び出し寧々に奇襲を仕掛け、それをまさおがカウンターの跳び蹴りを喰らわせながら更に両足を開いて左右にいた遊撃兵の横っ腹を蹴撃するーーー
その隙を見逃さずリムークはまさおの下に潜り込みアッパーを繰り出すが、杏子が瞬間移動でまさおと共に消え、リムークの攻撃が空を切るーーー
そして魔法兵団の上に現れたまさおと杏子が賢聖ガーナを急襲するが、魔法兵団を守護する重装兵団の副団長は まさお達とガーナの間に割り込み戦斧を真横に鋭く振ると、杏子は瞬間移動で退避し まさおは宙で体を捻りかわすーーー
そこを他の重装兵 二人がまさおへと間合いを詰めて鉄棍棒を降り下ろそうとするが、遠くで突っ立ってた電子は両腕を組んだまま足でその辺に落ちていた鉄盾を上に蹴りあげ その鉄盾を前蹴りしながら電気を流し足で電磁加速砲を放つーーーそれが重装兵の二人とまさおをふっ飛ばした...
「ぐへっ電子テメェーーーッ!!覚えてろぉ~」
《火を纏いし真紅の精霊よ 我の召喚に応え 力を与えよ 火炎弾!!》
まさおの恨み節が炸裂するなか、レールカノンに耐えた重装兵団 副団長の背後から賢聖ガーナが飛び出し電子に向け炎の玉を飛ばすーーーがそれを颶は念動力を念動弾にして炎の玉へと飛ばし両者の間で爆発が起きる
『すげ~ゼ...これが寧々達の仲間か。』
『やはりただ者ではないナ。』
この数秒の間に起こった一進一退の攻防にガイハ達が呆気に取られていると、周りを囲む王都兵らもまた身動ぎせず傍観していた。
〔何をやっておるかっ!!眷聖様がたが戦っておられるっ我らも己の職務を全うするのだっっ!!!〕
しかしそこへ敵兵隊長らの激がとび我に返った兵士らは、幸いな事にスティールマンが上空へ飛び去った事もあってホッと安堵しながらも互いに鼓舞し合い、中央の逆賊を見据え再度進軍を始める。
「「「「「オォオオオォォーー!!!」」」」」
「電子、後ろを守るわよ。」
大勢の兵士らの咆哮に颶はガイハ達を守る為 まさお達とは逆側を陣取ると、空から連続で念動弾を発射し兵士達を吹っ飛ばしてゆくーーーがその土埃と兵士らが宙に舞う隙間からも続々と兵士らが突撃し向かってくる。
「は~い 《雷蛇の鎖》っ ほいこっちも雷蛇の鎖、あっそれチェイン! チェイン!」
そこへ王都に向かう馬車の揺れであまり寝ていない電子のテンションが変な方向へいくが、電子の放った《雷蛇の鎖》が向かって来る兵士に当たるとそれは 生きた蛇がうねり進むように次々と他の兵士達へと感電の連鎖が広がっていく。
だが感電した兵士らは膝をつきつつも再び立ち上がろうとするがーーー次の瞬間、電子の電気を帯びた大勢の兵士達が引き寄せ合いくっつき始めた。
〔おいっ邪魔だ!くっつくな!?〕
〔お前こそっって離れないぞ??〕
〔くそ どうなっているんだ動けない?!?〕
「ふっ私の能力はガムとゴムの両方の性質を持つのよ?」
勿論そんな能力はなく、兵士らの身につける【鉄】の剣や鎧に電気を通し磁力化しただけである。そしてその兵士らの塊が壁の役割を果たし後続からの兵士達の進軍を著しく妨げる。
〔どけっ進めんぞ!!〕
〔おっ押すな!? 潰れちまうっっ〕
〔何やってんだ前の奴らは?!〕
そんな詰まって身動き出来ない後ろの兵士らを颶は念動弾で吹き飛ばし更に肉の壁を積み上げていき、それでも僅かに隙間から抜けて来た兵士らをナタリカ達やガイハらが撃退していく。
『よぉ、お前らは杏子...いやあの【日本人】とは仲間なのかだゼ?』
そこへコークは戦いながらも同じく共に戦うクラリに話しかけた。
獣人種族は鼻が良く、長い間 人との接触を絶って森で暮らしていたコーク達は久しぶりにこの世界の人間に触れた事で、地球から来たまさお達とはやはり匂いが違うとを感じていた。
シャンプーや石鹸、洗剤に香水とまさお達から漂う香りは今までに嗅いだ事もなく、だからこそコークは明らかにこの世界の匂いがするクラリ達やトルネらに警戒心を抱いたのだ。
クラリ達がどのような経緯でまさお達と知り合ったのかは知らないが、この世界の者は王族には決して逆らわない。故にクラリらがまさお側につくこと自体なにか裏があると思い、また命を賭けた戦いに己の背中を預ける事にコークは躊躇した。
そしてクラリも【この世界の人間が獣人を見る】ようにコークを見据え、その警戒心を煽る。
「お前って獣人ごときがいつからそんな偉そうな口を利けるようになったわけ? 殺すわよ?」
クラリが冷めた眼で隠す気もない殺気をコークに放つと、そこへ こんな危機的状況にも関わらずズボンに手を突っこんで肩で風を切りながら杏子が電撃参戦して来た。
「おうおうおう そこの嬢ちゃん! あっしのダチに文句があんなら あっしが聞きまスよ?」
「はっ?なにアンタ? 博士達の仲間か知らないけどガキが口を挟むんじゃないわよ!!」
端から観ると なんか容姿も性格も似た者同士な感じがする杏子とクラリの二人がメンチの切り合いを始めると、流石にそれどころではないとトルネとネルコが喧嘩を諌める
「なっ何をやってーーー今は喧嘩をしてる場合じゃないですカナッッ!!?」
「そうサネッ味方同士で揉めてどうするサネッッ!!」
しかし怒りが収まらないクラリは、王都兵をいなしながらも自棄になって叫んでは杏子と口喧嘩を続けた。
「は~~~っっ!!? 冗談じゃないわっ誰が味方よっっ私はバカまさおに巻き込まれただけよ! 決して仲間なんかじゃないわ!!」
「あっっ?! 確かに百歩譲ってまさおはクソ馬鹿野郎ッスけどダチがナメられて黙ってる程 あっしは人間が出来ちゃーーー」
ヒュヒュンッ ゴゴンッッ
「「 あいたっ!?!」」
そこへドコからか飛んで来た王都兵の鉄兜がクラリと杏子の頭にヒットし 二人が頭上にハテナ マークを出しながら周りを見渡していたが、遠くで まさおが鬼の形相をしていた事にトルネとネルコは今は見ない様にしていた...
そしてその地上から遥か上空でも、イシュダリア斥候兵団・俔聖シュナ率いる蝙蝠翼頭竜 騎乗部隊十体がスティールマンと大空でのスカイチェイスを繰り広げる。
だがスティールマンが先頭として町や王城の上を飛び回り その後ろをワイバーン ライダーが追撃する形とはなっているが、両者とも攻撃を仕掛けず ただ連なって飛行していた。
博士としては、むやみにワイバーンを撃墜すればそれに騎乗してる兵士が墜落する危険がある...勿論 地面に激突する前に受け止める気ではあるが他のワイバーンらの邪魔が入ればそうもいかない。
更に騎乗する兵士は助けても墜落するワイバーンが下の住民達の身を危険に晒すかもしれないし、町の外れまで行き戦闘をしてスティール スーツの残量が尽きてしまう事を考えれば なるべく電子の傍を離れたくはない。
そして騎乗している姿見る限り【地球の馬】のような感じであろうワイバーンを傷つけて良いものかとの倫理観が博士の頭を悩ませた。
一方 俔聖シュナ側も、スティールマンに対し追尾するだけで攻めあぐねる。
〔シュナ様 このままでは悪戯に過ぎるだけですっ 攻撃の許可を!〕
斥候兵団の副団長の男がシュナの乗るワイバーンに横付けしスティールマンへの攻撃許可を求めるが、しかし先程からシュナは首を縦に振らない。
「ダメダメッ絶対にダメだよ~! 皆も観たでしょ? あの【空飛ぶ鎧】は間違いなく【超国宝級】だよっ下手に攻撃して壊したらどうするの?? 何とか傷つけずに捕まえるんだヨ~~!!」
その言葉に斥候兵団 副団長の男は歯噛みしながらも、確かにあの空飛ぶ鎧を王へ献上すればと思うと褒賞の文字がチラつき おもわず口元が緩む...だがシュナは単純に自分の物にしようとしていた事を彼は知らない。
そしてーーー
そんな陸・空での激しい攻防戦を少し離れた王城の城壁の上から眺める【背中に大剣を携えた】ロン毛の美青年がいた.....
13話を執筆していたら一万二千文字を越えてしまったので分割しました。なので14話めも早めに載せれると思います。よろしくお願いいたします。
あと「超職人大家族。」も連載中なので宜しかったら見てください。後半になる程、ギャグとボケが加速していきます。




