第12話 決戦 序列第7位国 王都イシュダリア【Ⅲ】
闘技場では既に千人は軽く越える兵隊がまさお達の周囲を囲み、その前をイシュダリア最強兵団である王の眷属【五眷聖】の内、重装兵団 隊長 堅聖ゴランと魔導兵団 隊長 賢聖ガーナがまさお達と対峙する。
この二人が現れた事で兵士らの全体の指揮は上り、観客席で事の成り行きを見守る貴族達や皇帝席にいるトンガマ宰相の先程の怒声や悲鳴が歓声と拍手喝采へと変わってゆく...
そしてこれから行われるであろうイシュダリア初の眷聖による公開処刑に皆が嬉々とし、闘技場は異様な空気に包まれた。
一方 ナタリカやブランカ、トルネにネルコは眷聖を前に死を覚悟するなか、こんな状況にも関わらず一人だけ笑みを浮かべる まさおにクラリは別の意味で恐怖を抱きドン引きしていると、まさおは堅聖ゴランに指を差し大声で叫んだ。
「おい堅聖ゴランとか言ったなぁっ【不意打ち】とはいい度胸してんじゃね~か! 【卑怯なマネ】しね~で堂々と一対一で勝負せんかい!!」
「ぬぐっ!?」
そのまさおのあからさまな挑発にゴランは眉をピクッと動かすと、まさおは更に捲し立てる。
「それとも何かぁ?【子供】の【素手】の【一人】相手に《大人》が《大勢》で《武器》持って《卑怯な不意打ち》をしねぇと怖いっっっってか~~~~~~? 人々の模範となるべき堅聖様がぁ~~??」
「ぬががっっぐぅっ!!!?」
「落ち着けゴラン、安い挑発など気にせず任務を遂行しろ。」
まさおの言葉に顔を真っ赤にして怒りを見せるゴランを賢聖ガーナがすぐさま諌める...しかしゴランは侮辱を受けた事よりも単純にまさおの言った事実に深くプライドが傷ついていた。
「黙れガーナっ、そ奴の言う通りだクソォ! この国を守り礎となる堅聖ともあろうワシが子供の素手相手に情けないぃ!! これでは部下や民の者達に示しがつかぬぅ」
「んで、一人の武人として漢として大人として人として~何ぃ?」
「んで、一人の武人として漢として大人として人として立派なワシの背中を見せねばならぬのだぁ!!」
「何言わされているんだゴラン貴様...」
まさおの洗脳に簡単に引っ掛かるゴランを見て、ガーナが眉間にシワを寄せ額に手を当てる。
まさおは特に精神攻撃や心理操作などの特殊能力は持っていないが、人を煽ったり怒らせる事にかけては天下一であった.....ヒーローのくせに。
そしてゴランとその部下である副隊長とのやり取りの中で、ゴランは自尊が高くとそれを表に出す承認欲求の強い型と見るや煽り始めた まさおだったが、勿論 まさおにそんな心理学などの知識はなく『あっこいつイケる』程度の何となくの行動であった。
「ガハハッ そこの小僧! 子供ゆえに無意識に手加減していたとはいえ この堅聖の一撃を喰らい立ち上がった誉れっーーー良かろう、貴様を戦士と見なそうぞ!! 魔法攻撃を止めるのだガーナ、今から行う決闘に水を差すは例え貴様でも許さん!!!」
そう言いながらゴランは武器を捨て指を鳴らして まさおの前へ歩み出ると、ガーナも又 溜め息を吐きつつ魔法攻撃を中断する...しかし上空には依然 魔方陣が展開されており、颶は身動きが取れないでいた。
そして闘技場の兵士らや観客達は決闘の言葉に大いに沸き上がる。
その誰しもが堅聖の勝利に疑いはないが、まさおのこれ迄の戦いを目にしてきた者達には少なくとも一方的で一瞬に終わる興醒めな見世物にはならないだろうとの期待がこの決闘に面白味を持たせ、中には まさおを応援し笑いを取る者までいた。
「さぁ、んじゃ始めっか堅聖様。【男同士】【一対一】【正々堂々】との.....あいててて、クソォさっき【不意打ち】で【一発】喰らったダメージが...まあ堅聖様の方が少し【有利】だが仕方ねぇ、決闘を始めようぜ?」
まさおが再び煽るように仕掛ける。
するとやはり簡単に引っ掛かってしまうゴランは『うぐっ』と顔をしかめるも、すぐに開き直り まさおに言い放つーーー
「待てい小僧っ、決闘を始める前にワシを一発...いや十発殴れい! それで貸し借りなしの正々堂々の勝負じゃぁ!!」
「『「『「『オオオォオオォォ~~~」』」』」』
「さすが堅聖さま~~っっ」
「ゴラン様ぁ素晴らしい~」
「五眷聖にゴラン様ありだぁ」
「イシュダリアの守護神ゴラン様ぁ!」
「堅聖さま~~~~っ」
堅聖ゴランの大声が闘技場を響かせると、それを讃える民衆の声で溢れ返り、その余韻に浸るゴランを背に闘技場のボルテージは最高潮に達した。
だが突如クラリの背筋に衝撃が走るーーーそれは先程のまさおの悪魔の笑顔や今のうっすら笑いを堪えてる風な感じといい、まさおがまともに決闘をする気が無い様に感じられたからだ。
そこでクラリは気づく。まさおは無防備になったゴランを全力の一撃で仕留め、更に堅聖が倒された事で生まれる隙をつき退路を塞ぐ魔導兵団と賢聖ガーナに特攻をかける気だと...
全てはこの瞬間の為のブラフーーー
クラリが静かに見回すとナタリカとブランカが小さく頷き返し、直ちに行動に移せるよう低く身構え、颶はいつでも飛び立てるよう視界の端に魔方陣を見据える。
「ガハハッさぁ来い小僧っ十発殴れぃ、そして命を賭した決闘を早く始めようぞ!!」
「いや一発で十分だ。その威風堂々、アンタは男の中の男だーーーーーぜぇっっっっ!!!!」
堅聖ゴランが仁王立ちで構えると まさおは右手に氣を溜め、全力の右ストレートをゴランの腹に炸裂させる。
「グウゥゥッッーーーーー!!!」
「 ーーーーーっ外氣功!? いやーーーげっっしまった~~~やってもうた~~~~~!?!?」
まさおの渾身の拳を喰らったゴランが二十メートルほど吹き飛びながら後ずさると、そのまま倒れる事なく踏み止まった。
そして静まり返った闘技場にまさおの『やってもた』の大声が繰り返し響き渡ると、体をくの字に折り曲げて固まっていたゴランがゆっくりと顔を上げる。
「ガ..ガハハッ、ワシの鎧はミスリル製の特注で【打撃耐性】【魔法耐性】の付与が付いており、自身にも防御強化の魔法を掛けておる...が何よりこの鍛えられたワシの鋼の肉体には何人たりとも傷をつける事など出来やせんわーーーガ~~~ハッハッハッ~~~~~!!」
「オオオォォオオォオォォォ~~~!!!」
ゴランが両手を広げ闘技場の観客席に無傷をアピールすると辺りから割れんばかりの大歓声が上がった。
「ガハハッ小僧、貴様も何かしらの強化魔法を使っておるのだろう? ならばワシも自身を強化する事によもや卑怯とは言うまい。」
「うぐ...」
まさおは悔しそうに顔を歪める...しかしそれはゴランを倒せなかったからではなかった。
ゲームに漫画やアニメ大好きっ子のまさおは異世界モノもよく見て知っており、ファンタジーの戦闘に置いて【強化】や【付与】など初歩中の初歩なのをスッポリ忘れ、更には多分これぐらいならギリ死なないだろうと【相手を殺さない事を前提とした上での全力攻撃】をしていたのだ。
そんな まさおの手加減全力攻撃がゴランの体に突き刺さる瞬間、鈍い感触の何かに阻まれ そこでまさおは『やってもた』と気づく。
「くそっ圧倒的 油断っ!!!」
だが頭を抱え地面をのたうち回るまさおに、ゴランは言葉を続ける。
「ガハハッ、だが惜しい! その力、出会ったのがここでなければ我が兵団への入隊を許可していたものをっっ。そしてお主を一人の戦士として見なすと言いながら十発殴れなどと侮っていた事を詫びよう、さぁこれで貸し借りなしの正々堂々 真剣勝負だ!!!」
この言葉に場内がザワついた。
「け、堅聖様にそこまで言わせるとは...」
「俺ぁ兵士達を蹴散らしてた時からあの子供はタダ者じゃないと思ってたぜ!」
「そんな奴が何だって獣人の味方なんてしてやがんだよ!?」
「いや獣人を庇うのは建前で本当は自分の力を示したかったんじゃないの?」
「馬鹿野郎!死んだら元も子もないだろがっ あぁ勿体ねえ...」
そして客席からは歓声と溜め息が入り交じり場内は益々ヒートアップしていくが、それとは対照的にゴランを倒せず計画通りに進まなかった事にクラリは落胆の色を隠せず、博士や颶も少し肩を落とす。
それはブランカやトルネにネルコも同じで皆が意気消沈し、クラリがすがるようにナタリカを見るとーーー
「おぉ、堅聖を吹っ飛ばすとは...まさお殿っ流石です!! このナタリカ、これからも一番手として傍らでお仕えする所存にございます!!!」
ナタリカがまさお教の幹部へ昇進していた。
「あっ.....終わった。」
ス~~っとクラリの瞳から涙が溢れる...
ーーーと同時に、まさおとゴランの拳がぶつかった!!
まさおはゴランの周囲を付かず離れずの距離で機動力を活かしながら打撃を当てていくが、拳を交えて初めて堅聖の名は伊達ではないと認識する。
強化の魔法を抜きにしても純粋に日々鍛えられた肉体と、争いは絶えず魔物もいるこの異世界で堅聖となったゴランの戦闘における勘と知識と経験の数は地球に生きる まさおの比ではない。
ましてや まさおは、武術を習ってもいなければ体を鍛えてもいない内氣功の能力に依存しただけの喧嘩殺法ゆえに、ゴランは素人の動きなど簡単に予測し防御しつつ隙あらば掴みや反撃を仕掛けてくる。
だが まさおは内氣功で身体だけでなく神経系をも強化し、その鋭く研ぎ澄まされた感覚神経や運動神経が成す動体視力と反射神経でゴランの反撃を直前で見切り逆カウンターを放つーーー
「ぬんっ 《二重防壁魔法》《物理防御強化》!!」
ゴインッッ ゴンッ バイィ~ン
しかしゴランは補助魔法を唱え まさおの攻撃を弾くーーー
「くそっおいオッサン 戦士のくせに魔法とか使うんじゃね~~っ! ドラクエならバグだぞ!!」
「ガハハッ 堅聖たるもの攻防強化魔法ぐらい使えんでどうするか? それにしても小僧、貴様の攻撃は単調ではあるがワシの予測動作と違いその場その場で相手の動きを見ての行動とその反応...まるで獣や魔物と戦っておるかのようだ。ぐぅ やはり惜しい、鍛えればどれ程に強くなれよう.....」
そう言いながらゴランとまさおの見せる肉弾戦に場内の観客や兵士らはいつしか息をするのを忘れるほど静まり返ってゆくと、ゴラン率いる重装兵団の部下と副隊長が重苦しい雰囲気で口を開く。
「あの...ゴラン様は手加減されているのですよね? 相手が子供だから.....」
「馬鹿言うな、ゴラン様は本気で殺すつもりで拳を振るっておられる。それよりもあのガキの方が...いや有り得ん、それこそ馬鹿な話だ。」
その実、まさおは本気を出してはいるが まだ本気を出してはいない。
その答えとは、まさおは既にゴランを倒す方法を思いついてはいるが実行はせず、時間稼ぎをしながらゴランの後のもう一人の賢聖を倒し全員が無事に逃げられる算段に全力を注いでいたのだ。
まさおがヒーローでなければ初めの段階であれ今であれ王を人質にし離脱する事は容易であったが、それはまさおのヒーローとしての矜持が許さない...かと言って兵士らを《本当に》千切っては投げの殺戮ショーをすれば大混乱に陥り逃げ出す隙もあるだろうが当然する訳もない。
どんなに甘い考えと言われようが敵味方の区別なく全員が無事な解決策を模索しながら まさおはゴランと戦いを続ける。
ーーーそして闘技場の遥か上空、
そんなまさお達を見下ろす複数の影がそこにはあった...
「おぉ、やってるワ。」
「で?どうすんだヨ、様子見か?」
「さぁてど~するか...」
ーーーそれから十分が経ち、まさおとゴランは互いに決定打がないものの、それでもまだ壮絶な打ち合いを繰り広げる。
場内の誰もがその光景を緩む事なく いつ決着が着くかと手に汗を握りながら目を凝らすが、ゴランは『ふと』ある疑問を抱いた。
それはゴランが今までの人生の中で、全身全霊の殺すつもりで拳を振るった相手は誰もが死に脅え畏怖した眼をしてきたものだ...だが目の前の一人の子供は戦い始めてから今も尚 その眼に恐れ・焦り・迷いがなく、じっと此方を見据えてくる。
そんな信じたくもない違和感に、ゴランの背中に寒気が生じた。
「おい小僧、まさか貴様...ワシより強い奴と戦った事があるのか?」
ゴランの言葉に まさおはニヤリと笑うーーー
「まぁオッサンにゃ何言ってんのか分かんね~だろ~が俺のいた世界には《エンブレム アメリカ》ってゆ~世界最強の正義の味方がいてよ...海外研修でアメリカのヒーロー協会行ったとき模擬試合をしたんだが、まともに【戦ったら】一瞬で終わったろうし【ただの殴り合い】を三十分して貰っただけだよ。」
まさおの言葉にゴランは意味こそ曖昧なものの、何故か底知れぬ不気味さを感じ背筋ならず全身が震える。
「ぬぅ、それが誠ならワシ以上に強き者とやり合った故の余裕と...にわかには信じられんーーーが嘘を言ってる様にも...」
「まっ世界は広いって事だオッサン。俺だってこっち来てデカい蜘蛛見た時にゃーーーあっっ!!!」
戦いの途中、まさおは何かを思いついたように大声を上げると颶の方を見るなり指で頭をトントンと叩く、
すると まさおの意図に気づいた颶がすぐ様 まさおと博士の頭の中をテレパシーで繋いだ。
〔どうしたの まさお?〕
〔おぉう!? これは颶君のテレパスか? 〕
〔あぁ思い付いたぜ僥倖・圧倒的 閃き・千載一遇の好機!!!〕
〔まさお君、そういうネタは電子君や杏子君が居るときにね? それでその考えとは?〕
まさおは一旦ゴランから距離を取り仕切り直す。
〔颶さんデカ蜘蛛を覚えてるか? あん時みたいに俺と颶さんで味方を町外れまでぶん投げて先回りして受け止める! 脱出方法はもうこれしかねぇ!!〕
〔呆れた...どこから来るのかしらその発想...でも現状それが誰も傷つかない最善かもね〕
〔だが 颶君は空を追って来れるが まさお君はついて来れるかい?大分 消耗しているだろう?〕
〔なら最後に博士を投げて博士の上に飛び乗るぜ。名付けてタオパイパイ脱出法だ!!〕
〔まさお君、私のこと尊敬してる?〕
〔とにかく脱出するなら最低でも上の魔方陣を何とかしないといけないわ〕
〔あぁそれなら大丈夫だ。このオッサン倒す方法ならもうあるし、その後できた隙をついて魔法使い達を襲撃する。〕
〔そうか、なら私はそこから迎撃誘導弾を怪我人が出ないよう辺りに撃ち、爆発させて混乱を誘う。〕
〔決まりね、備えるわ。〕
交信を終えるとまさおはゴランを指差し、再度 悪そうな顔をしながら挑発を始める。
「おいオッサンッ、そろそろ決着を着けね~か? さっきみたいに俺の本気の一撃を受けて倒れなかったらアンタの勝ちだ、そんときゃ素直に投降するよ。これで倒せないならもう俺に勝つ術は無くなるからな?」
まさおがふんぞり返りながらゴランを見据えると、ゴランはフンと鼻息を鳴らして口を開く
「ほう、初めの一撃がまるで全力ではなかった様な言いぐさだな。」
「いや全力っちゃ~まぁ全力だったが本気ではなかったかな?」
「 .....。」
まさおの真っ直ぐ見る眼にゴランは暫し沈黙した後、ゴランもまたニヤリと笑うと拳を握り指を鳴らす。
「ガハハッ良かろう! ここで逃げては堅聖の名折れっ受けて立とうぞ!!!」
「決まりだな。」
「「「「「オオオォォオォ~~~!!!」」」」」
「ついに決着かっ!?!」
「もっと観ていたかったぜっ」
「こんなすげ~戦い初めて見たぞっ」
「何者なんだアイツ??」
「さっさと反逆者を殺ってしまうざまぁす!!」
互いが相手に向かい拳を伸ばすと闘技場では割れんばかりの大歓声が上がり、それと同時に異様なまでの緊張感が一帯を包む。
「ガハハッ名残惜しいがこれも定め、敬意を表し全身全霊を持って挑もうぞ。はぁっ《装備物理耐性付与》《装備魔法耐性付与》《強物理防御強化》《強魔法防御強化》!!」
ゴランが己の鎧と肉体に防御系の魔法を唱え準備万端とばかりに まさおへ向かい仁王立ちで佇むと、まさおはゴランに向って手の届く所までゆっくり歩いて行く。
そして皆が固唾を飲んで見守る中、まさおはそのままゴランの腹に右拳の第二関節を【コツン】と軽く当てた。
「...おい小僧ふざけているのか?何だソレは?」
このまさおの不可解な行動にゴランは不快感を露にし、まさおを睨めつける。
「いや、ふざけちゃいねえさ。おいオッサン、次からはその高価な鎧や自慢の鋼の肉体だけじゃなく...内臓も鍛えとけよ。」
そう呟くとまさおはゴランの腹へ当てた右拳を少し外側へ捻り、瞬時に内側へ捻り直しながら拳を開いて掌底を当てるーーー
「 発勁氣功ーーなんちゃら~え~物体を通して向こう側のアレに気を当てる?通す?アレなヤツッッッ!!!」
ーーーその光景は初めにまさおがゴランを吹っ飛ばした派手な衝撃も音も無く、ゴラン自身その場から一歩も動く事なく場内は静かな時が流れるーーーーと、
「ガハァ」 ...ズズゥ~~~ンンッ
ゴランは口から血を吐くとそのまま静かにその場へ倒れていった...
《 クスクスッ 》
まさおの使った『発勁氣功 なんちゃらのアレ』は氣功を扱う武術の門派や流派によって名前は様々だが、要は氣を練った手を壁に当て、壁を壊さずにその向こう側にある物体へ氣を通し当てる技である。
それが氣功の達人ともあれば、瓦割りなどで三十枚 積まれた瓦の一番上に氣拳を当て、
『五枚目の瓦だけを割る』
『十枚目から十五枚目の瓦だけを割る』
『七枚目、十二枚目、二十八枚目の瓦だけを割る』
ーーーと任意の場所に氣を当てる事も可能である。
しかしそれには氣を練り流す内氣功と体の外へ放つ外氣功の両方を会得し極める必要はあるが、内氣功しか使えない まさおにはまだそこまでは出来ない。
だがナタリカ達との初めての出会いで怪我したブランカを治した様に、対象へ密着・接着した状態ならば静電気みたく氣を流し通す事は可能なのだ。
それに対し物理魔法耐性・強化は物体を覆う膜の様に表面を硬化・強化するものであり、魔法でも打撃でもない まさおの氣はゴランの鎧と肉体をすり抜け直接 内臓にダメージを与える。
そして堅聖ゴランが膝から崩れ落ちる姿を闘技場で観ていた誰もが状況を理解できず固まり声すら出ない。
それは賢聖ガーナですら同じく、まさかゴランが倒されるとは微塵も思っていなかった彼女は思考が止まり身動ぎ一つしないーーーそこを まさおは見逃さず一瞬でガーナの懐に跳び込みガーナの腹に拳を放つーーーーー
ゴッッッ!!!
ーーーが博士達が次に見たのは まさおが倒れる姿だった。
「お待たせだワ、五眷聖が一人《拳聖 リムーク》 参上~だワ。てかアララ...ゴランの旦那ぁ見事にやられちまって、油断し過ぎだワ。」
突然 現れたモヒカン細マッチョ男の拳聖リムークは、まさおが賢聖ガーナを撃つ刹那ーーそれよりも先に空から滑空するスピードに乗せて渾身の一撃をまさおの頭部に喰らわせ、まさおを気絶させる。
そして遅れて空から拳聖リムーク率いるイシュダリア遊撃兵団 二十人が次々と地上に降り立つ
「まさお殿ぉーーーっ!!?」
「アワワ五眷聖がもう一人...副長もう駄目ぇ絶対死んだ~」
この誰も予想だにしてなかった拳聖の襲来に敵味方問わず全員が困惑した反応を見せたが、博士は慌てながらも次の行動に移すーーー
「颶君 脱出するんだっっ私がヒーローを止めて殺人者になろうとも君達だけは絶対に死なさん!!!」
博士はスティール スーツのあらゆるガジェット兵器を起動させ イシュダリア兵に向けて射撃を開始しようとすると、また突如 空から現れる巨大な影が博士を掴み上空へと連れ去るーーー
「なななっっ!?! 一体何が起こーーー!!」
博士が己を掴む巨大な影に眼を凝らし見上げると、
「追加で五眷聖が一人《俔聖 シュナ》、イシュダリア斥候兵団・蝙蝠翼頭竜 騎乗部隊と共に登場だヨ~!」
博士の背中を鷲掴みながら高度を上げて空を飛ぶ蝙蝠翼頭竜に騎乗する小柄女子の俔聖シュナは、満面の笑みで闘技場の観客席に手を振り自己告知をする。
まさおとゴランの戦いを蝙蝠翼頭竜に乗って上空で観ていたこの二人の眷聖とその部隊は、ゴランが倒されるや否やまさお達に向かい強襲を開始して来たのだ。
これに対しまさおは内氣功による耳の強化で周囲を警戒はしていたが、場内の歓声やゴランとの戦いに逃走の打開案とそちらに意識が逸れ、また上空の魔方陣が若干の目隠しとなり上の刺客に気づく事が出来ず奇襲を許してしまうーーー
「はぁっ『爆裂炎々弾』!」
「 っっ!?! 皆っ集まって!!」
すると賢聖ガーナが再び魔法攻撃を始め上空の魔方陣から無数の火の玉が降り注ぐと、颶はすぐに皆に声を掛け念動力のバリアを上に張る
「副長っっっ!」
「離せっ離すのだっっまさお殿ーーー!!」
「ひぃっ助けてカナ~~」
「ぎやぁ~サネ~~~!?」
ナタリカがまさおに駆け寄ろうとするのをクラリとブランカが抱え、トルネ達と共に颶のバリアの下へと潜り込んだ。
「おいガーナ...これじゃぁ俺らも近寄れんワ。」
「五月蝿い、今さら現れよって。黙ってそこで見ていろ、奴等は我の手で葬る。」
「助けてやったのにソレはねぇワ...」
賢聖ガーナの対応に拳聖リムークと軽い口喧嘩をしつつも、颶達を襲う爆炎の炎は弱まるどころか益々その勢いは増してゆくーーー
そしてその遥か上空でも博士を掴み飛遊する俔聖シュナの蝙蝠翼頭竜を中心に九体の蝙蝠翼頭竜騎乗部隊が回遊していた。
「わぁ~下は凄い事になってるヨ、仲間まで丸焦げになっちゃうんじゃないの?」
シュナがまさに対岸の火事の如く呟いていると、蝙蝠翼頭竜に鷲掴みにされている博士がジタバタともがきながら大声で叫ぶ
「くそっ離せっこんな事をしてる場合ではーーーえぇい離すんだ!! 私には責任がーーーーー」
「えっ? 今 放したら炎の中に落ちるヨ? まぁ いっか。ど~してもって言うなら...ハイ。」
そう言うとシュナは蝙蝠翼頭竜に指示を出し、地上五百メートルほどの高さから博士を放した。
「えっ? .....わ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!」
博士が地上に向けて急速落下する。
「くそぉこうなったら最後のエネルギーを使ってスーツを装着しーーー」
『ピ~~~ エネルギー残量 0パーセント。』
「~~~~~~ぅ嘘だろぉぉぉ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~冗談だろぉぉぉぉぉ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~颶く~~ん受け止め~~~~~~~~~~まさおく~~~ん起きてく~~~~~~~~~~~~~~た~~~す~~~~~け~~~~~~て~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~し~~~ぬ~~~~~~~~っっ」
博士が先程のガジェット兵器を起動したところでスーツのエネルギー残量は尽きていた...そして博士は落下しながら もう打つ手はないと短い人生を悔やみ走馬灯を過らせる。
[...]
[......]
[............ピカッ]
博士は落下中ーーなかば諦めムードの遠い目をしながら地上を眺めていると、遠くで何かが光った。
「んっ?」
すると【ソレ】は物凄い勢いで此方に向って飛んで来たかと思った瞬間、博士にブチ当たりーーーーーービリッ
「あばばばばばばばばばっっっーーーーーーーーーーーーあいったぁ!!?!? 」
博士が感電すると同時になんか懐かしい感じを思い出す。それは昔 とある《女の子》とまさおが喧嘩をした時にその女の子がまさおに放った【ソレ】が博士に誤爆した忌まわしい記憶...
「これはまさかっっ《電子君》の【電光矢】か!!!」
博士は電光矢が来た方向を見ると第二・第三・第四の発光を確認する
「電子君...ありがとう、君は命の恩人だ。」
博士はニヤリとしながら空中で身を捩り電光矢が飛んで来る方向に背負っているスティール スーツを向ける。
すると先程の電光矢よりも大きな【弩電光矢】が次々にスーツの充電口へと当たり吸い込まれていくーーー
『ピピッエネルギーチャージ 残量3パーセント』
『ピピッエネルギーチャージ 残量7パーセント』
『ピピッエネルギーチャージ 残量12パーセント』
「よし...さぁ 行こうか、ヒーロー諸君!!」
博士の背負っていたバックパック型のスティール スーツがカチャカチャと動き出す
ドォ~~ンッ ドドオォォ~~~ンッッ
一方 地上では颶達に容赦ない炎による魔法攻撃が隙を与えず降り注ぐ。颶は何とかそれを念動力のバリアで防ぐが次第に多く大きくなる炎弾の熱にその身が焼かれ始める。
「ぐっっっ...」
「熱いっっもう嫌ぁ~~副長ぉ~...」
「やっぱり王族には逆らうべきじゃなかったサネ...」
まさおは倒れ 颶もギリギリの状況に他の皆は膝をつき心が折れる
「おいおいガーナ、このまま焼き殺す気かだワ? 捕らえんのか?」
「黙れリムーク、第4位国 宰相様の仰せだ このまま処刑する。貴様も早くそこに転がっている反逆者に止めを刺せ...まぐれでもゴランを倒した妙な技を持つ以上、起きれば厄介だ。」
賢聖ガーナは攻撃を緩める事なくより一層の魔力を込めると、拳聖リムークも仕方無しにとばかりに気絶している まさおの元へ立ち その首を狙い手刀の構えを取る。
「あ~あ、俺もコイツと戦ってみたかっただワ。小僧...悪く思うな、これも王族様の思し召しだワ。」
「んなモン 糞喰らえっスね (´・д・`)」
「「ーーーーーーーッッ!!?!?!?」」
突如、リムークの頭の上に乗っかる下っ端口調の小娘が出現した。
「おわっ何だワッ!?お前どっから現れっってか人の頭の上から降りるだワ!!」
リムークは慌てて両手を振り上げるが、その小娘は頭上からリムークの目の前に【瞬間移動】するとそのまま黙ってリムークのチンコを蹴り上げた。
「 っあぁーーーー!? あいたっっっ!!!」
[リムーク様っっ!?]
[何奴ーーー!!]
リムークが股間を抑えながら平伏すと、周りにいた拳聖の部下の遊撃兵団らがお惚け顔で立つその小娘に対し攻撃の構えを取るーーーが、
『そうはさせね~~ゼ!!』
隊列を組む王都兵の上を飛び越えてキツネ獣人が拳聖遊撃兵の手足を剣で切りつけると、
『ハアァァッ 殺すナよコークっレイビィッッ!!』
白虎獣人が後方から二人の王都兵を持ち上げ拳聖遊撃兵へ投げつけーーー
『分かってるカイッガイハ!これでも喰らえ!!』
ウサギ女獣人は高ジャンプをしながら弓の3連射を放って遊撃兵の肩を射抜き、不意に現れた小娘と三人の獣人に拳聖兵団ともあろう部隊はまんまと奇襲を喰らってしまう。
『杏子っすぐに離脱だナッ!』
「分かってるっスよ~はいはい集まって~~。」
そして杏子と呼ばれた小娘は倒れている まさおに手を触れると、三人の獣人達も杏子の肩に手を置き一瞬で颶の元へ瞬間移動した。
「へぇ?...あぁ....あれは空間移動...?!?」
この異世界にはまだ存在していない杏子の瞬間移動に賢聖ガーナが素っ頓狂な声を上げ、その有り得ない光景に眼を奪われるガーナが正気を取り戻すよりも先に魔法兵団の足下からそっと冷気が漂った。
「 氷結の拳 」
「ハッッ!? 全員 退避 !!!」
ドカーーーーーーーーーーン!!
賢聖ガーナが我に返り魔方陣を展開している部下達に危険を知らせるが、逃げ遅れた数十名は下から突き上げる直径3メートルの氷の拳に吹っ飛ばされるーーーーと同時に、颶達の真上にあった魔方陣が消失し降り注ぐ炎弾が止まった。
「炎が...止んだカナ.....?」
「た、助かったサネ...」
「はぁっはぁ~まだ生きてる、死んでない...」
そう言いながらトルネ達が深い溜め息をついて前を見ると、金髪男がアロハシャツを靡かせて立つ後ろ姿が目に入る。
「やぁ颶ちゃん、遅くなったねぇ。」
「寧々さん...ホントですよもぅ、何やってたんですか....」
颶は汗を拭って非難じみた事を言いながらも柔らかな笑顔を見せ空を仰いだ...
「まさお殿っっ!!」
「いやっ危ねっスよ?」
そしてナタリカが瞬間移動で此方にやって来た まさおに駆け寄ろうとするのを杏子が制止する。
「はい~離れて~~離れて~~っス。」
杏子がまさおの周りから離れるのを促すと、何処からともなく声が聴こえて来た。
「ぃぃぃいつまぁで寝てんだーーー起きろぉ!!」
ピカッ
チュド~~~~~~~~~~ンッッ!!!
「あばばばばばばっっっあいったぁ!!?!?」
何処から発生したのか晴天の稲妻がまさおに直撃したかと思った瞬間、まさおは感電しながら飛び起きて意識を取り戻すと再び倒れ転げ回る。
「あいったたたっ!? この痺れ具合いっっ電子かテメーーーコラブチ殺すぞ!!!」
「おっ生きてるw あっすんません通りま~すw」
そう言って電子が隊列を組む王都兵の間をシレッとすり抜けてまさお達の元へ向かうのを、もう色々な事が起こりすぎて考えが追いつかない兵隊達は黙って見送っていた。
だが賢聖ガーナはすかさず王都兵 全体に大声で指示を出すーーー
「何をやっているか!残っている魔法兵団はすぐに隊列を組み直し詠唱し魔方陣を展開っっ重装兵団はその防護、それまで各兵隊長は進軍させ時間を稼ぐのだ!!あとリムークいつまでそうしている馬鹿がっっ」
「いやだってだワ...(ToT)」
賢聖ガーナの怒声に各兵士らもハッと我に返ると、各兵隊長のもと士気を上げ雄叫びを放つ。
[第1から第4部隊まで進撃開始!!]
[魔法兵の準備が済むまでだっ入り乱れるなよ!]
[巻き込まれないよう離脱体勢も整えろっ!!]
[オオオオォォォオオォォォォーーー!!!]
周囲を固めていた一般王都兵・総勢二千人は超える大軍が咆哮してゆっくりと歩を前に進める。
その一歩一歩が地響きを起こし大気を揺るがす程の壮絶な光景にトルネとネルコは腰を抜かすと、
「フヌ、これは五眷聖とはまた違った畏怖の念を抱きますな...」
「何よコレッ絶対 詰んでるじゃない!!」
クラリとブランカは、ただ前を見据え、
『たった数人にこれだけの数を投入とかお前ら一体 何やったんだゼ...』
『まぁこんな最期も悪くはない。王族相手に派手にブチかますかナ!』
『そうだネェ、仲間達の積年の恨みを少しでも返すカイ?』
コークは呆れガイハとレイビィも覚悟を決めるーーーーそして、
「まさお殿 大丈夫ですかっ!?お怪我はありませんかっっ!?!」
ナタリカは敵の大軍を前に尻を向けていた...
「副長ぉ......っっ!!」
ここに来てまだ惚けた事をしているナタリカにクラリが呆れながら目をやると、そこで驚くべき光景を目にする。
それは まさおや颶だけではなく その仲間であろう寧々や電子、そして明らかに自分より年下の杏子ですらこんな危機的状況にも関わらず笑みを浮かべていたのだ。
その表情は恐怖に狂った訳でも諦めた感じでもない...
今から狩りをする側の顔ーーー絶対的強者の姿。
「な、なんなのよアンタ達...何でそんな顔出来るのよ?」
クラリがそう呟くと同時に敵指揮官が突撃号令を発し、敵大部隊が360度 中心を狭めるよう歩を早めるーーー
「神様 助けて...」
その迫り来る恐怖に思わずクラリは天を見上げ神に祈るーーーー
直後、正にそれは神が地に舞い降りるが如く天からやって来た。
「迎撃誘導弾 全弾発射」
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドォォォ~~~~ン
クラリ達を中心に、まるで円を描くように迫り来る敵大部隊の手前で突如 連続爆発が起こると、その爆風で敵兵士が次々と吹き飛んでゆくーーー
そして辺りが砂煙で何も見えなくなると、
「赤外線熱感知装置」
「光線 出力 70パーセント カット」
「小型武装目標捜索機 壱・弐 起動」
「自動照準 光線連射機関砲」
ドルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッ!!!!
パパパッパパパパパッッパパッパパパパパパパパパッパパパッパパパパパッパッパパパパパパパパパパパッパパパッパパパパパッパッパッパパパパパパパパパパパッパパパパパッパパパッーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!
「ぎゃっ!?」「グァッッ?」「おわっ?!」「ガァ~!」「いづぁ!?」「なっ何いゃぁ!」「いっ!!」「衛生兵っっえングァ!?」「やられっ誰かっ?!?」「助けっ...」「一体なにウグゥッ」「あっ足がぁ~!」「動けないぃっ」「何が起こってーー!?」「ふんグゥ?」「なっっ!!」「いだぁっっ」「ギッ?!」「がはっっ」「誰かったすけて?!」「立てないっ糞!!」「何も見えない!何が起きているんだ!?」「くっ」「あぁいっ!?」「ぬぐーーー!」「ウグゥ!!」ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッ!!!
空から現れた人の様な【何か】が上空20メートル程の高さでホバリングしながらクルクルと回り光を放つと、それは敵兵士の足の甲に次々と正確に命中していき、又 その【何か】から飛び出た【無機物の鳥】も同じく見えないモノを発射し兵士の足を順次に撃ち抜いていく。
ーーーそして辺りに舞っていた砂煙が薄れ視界が戻ると、闘技場の観客達や皇帝席の王族らに 無事だった他の王都兵だけでなく味方であるナタリカ達やトルネらにガイハ達も皆 目の前の光景に絶句する。
それは二千人は超えていた王都兵の5分の1以上が倒され再起不能となっていたのだ。
[な、何だありゃっ!?]
[あれだけの兵が一瞬で...]
[一体何があったんだ!!?]
[上だっ上を見ろぉ!]
[なんだあの恐ろしい姿はーー]
[あ、あれは悪魔だ...]
[これは悪魔の仕業だっ悪魔が来たぞ~!!]
[きゃぁ~~~っっ!?!]
[逃げろ~~~~~~っっ]
その空から舞い降り一瞬で何百人もの兵士らを倒した【異形】の姿の者に、闘技場の観客達は恐怖し悲鳴を上げながら我先にと出入口に殺到し場内は大混乱に陥ると、皇帝席でも近衛兵が王や王妃、宰相達を王城へ避難させる為 慌ただしく動き出す。
「あ、あれは何ですゾ?!?」
「オカシイと思ったざまぁすっ王都兵達があんな簡単にやられる訳ーーーあれは悪魔っっいや悪魔の軍団ざまぁす!!! 」
そしてまさお達を取り囲む屈強な兵士達ですら立ち竦み恐れおののく その【異形】の者ーーー
それを地球の人達は皆こう言う...
日本のトップヒーロー 《スティールマン》と・・・
「よしっ死傷者 無し!! 少しばかり年甲斐もなくハシャギ過ぎてしまったかな? あっお~い電子君~充電お願い。」
博士もといスティールマンが颶の頭上辺りまで高度を下げるとクラリ達やガイハらが目を見開き口をアングリさせていた。
「フヌ、博士殿が奇妙な背中袋を背負ってたとは思ってましたがこれは...」
『もう何が来ても驚かね~とは思ったが...流石にコレはね~ゼ!?』
『杏子達のこと知ってるウチラでも驚くんだから相手は相当カイ?』
だが皆が一様に動転する中、トルネとネルコだけは両目を金貨マークにして泣きながら天を拝む
「おぉ神よ、この博士殿との出逢い巡り合わせに深く感謝 致しますぅ~」
「間違ってなかったサネッ!こっちで間違いはなかったサネ!!」
「トルネさん達も大概ね...」
クラリがツッコんだ。
そして一同が勢揃いし周囲の敵兵隊に向き直ると博士がまさおに問い掛けた。
「まさお君、まだ撤退案は継続中か?」
その問いにまさおは...
異世界に来て初めてのヒーロー顔で答えるーー
「何言ってんだ博士?まだ悪い子達にお尻ペンペンしてね~だろ? さぁお仕置きタイムの始まりだ。」
王都イシュダリア最終決戦 今 開幕!!
大変遅くなりました。
1話目に挿絵をつけたのでよかったらみてください、随時 各話にも挿絵を載せていきたいと思います。
それと「超職人大家族。せっかくの異世界転移でウハウハ生活も、その頑固一徹が邪魔をする」の
連載も始めました。良かったら見てください。こちらはそこそこストックがあるのでこまめに更新いたします。