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何も知らない世界の君へ  作者: 瓜戸たつ
第一章 最後の日常
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第九話 違和感


今回はあまり話が進んでいません。


サブタイトルミス、二度目です。二度あることは三度ある……って事にならないよう気を付けます。









「ちょっ、ユニトレイア?死んだって……」



 眼帯の女性が、信じられないと言わんばかりに目を丸くした。



「ユニトラレイア、誤解だ、悪ィ。行方不明ってのも、まだ分かってねェの」






 「だって、アイツはすぐどっか行く奴だからさァ。」と黒髪の男性は頭を掻いた。「俺達が勝手に言っただけだ」






 本当かよ。決めつけにも程がある、とユニは嘆く。落ち着いて考えれば、朝に出て行って昼に行方不明だというのはおかしいとすぐ分かるが、取り乱したユニの頭には行方不明という響きは深く突き刺さった。



「じゃあ、何で……」


「皆さま!」



 ユニが口を開いた時、丁度宿屋の主人の声が被った。キュッと口を閉じてしまう。鎧兜や武器の擦れる音を不規則に立てて、一斉にロビーの冒険者達が受付の主人に注目する。



「アルベルト様は、お帰りが遅い時が多い事は、皆様存じていると思います。今回は私達で対処致しますので、皆様はお部屋で待機願います」



 はきはきとした口調で堂々と、いつもらしからぬ雰囲気で主人は言った。一瞬、ロビー内で音が止む。が、すぐに各々不平不満を、誰かに向けたわけではなく、独り言に近い声量で発した。




「でもさあ」


「一人で『醒石』を見つけたのかな」


「石の持ち逃げか?」


「アイツがまたどっか行ったんじゃね?」


「ほっとこほっとこー」




 ざわめく中、ユニは先程の黒髪の男性の腕を叩いた。



「さっき、なぜ行方不明と言ったんですか?」


「ん?ああ、服だよ服」


「えっ、服?」


「森の中でアイツのなァ、服だけ見つかったんだよ。それも切れ端みたいなやつ」



 ユニは聞き返したつもりで言ったのだが、黒髪の男性は気にせず続ける。



「その切れ端が落ちてた所に血溜まりがあってさァ。それが結構な量で、見つけたビビりな奴が悲鳴上げる程で」



 面倒臭そうに、彼は欠伸をしてワンテンポ遅らす。



「もしかしたら動物や魔物の血かと思ったんだが、魔物つっても、この辺りにはいねェから。これは仮定だが、何らかの原因でアイツが深手でも負ったとする。で、怪我したのに居なくなるのは不自然だ」



 「そう思わねェか?」と、突然黒髪の男性はユニに同意を求めてきた。反応は遅れたが、とりあえず首を縦に振った。



「で、俺とカーラ……ああ、カーラってのはさっきの眼帯の奴な?俺らはアイツは一人で逃げるような奴じゃねェ、もしかしたら何かに攫われたんじゃねェかなーって」



 本当に攫われたのか?と、ユニは自分の思考に飛び込む。

 まとめると、血溜まりがある所に『あの人』の服の切れ端が落ちていて、血が誰のもので原因は何なのかという事と『あの人』の居場所が分からないという事か。じゃあ、何故みんなが『あの人』に絞ったのか?冒険者はたくさん居るのに、どうして彼と分かったのだろう。

 ユニは荒ぶる心臓を必死に抑え込む。少しでも、少しでも『あの人』ではないという保証が欲しい。マナシィが言った事を、否定したい。



「……本当に、彼だったんですか?」


「あ?」


「だって、だって『あの人』の姿がないから、その血が『あの人』だっていう決め手はないじゃないですか!」










 何気なくユニが叫んだその言葉に、騒ぎが止む。始めは周りの音が聞こえないだけと思っていたユニも、異変に気が付いた。

 ハッとして黒髪の男性の顔を見ると、頬が引き攣っている。そしてすぐに笑うと「そうだなァ!ああ、確信じゃねェな!!」と嬉しそうにユニの肩をバシバシと叩き、周りの冒険者もそうだそうだ、と同意した。





「アメジストリーさん!確かにユニトレイアの言う通りだ!だから、確信がもてるように赤目の冒険者を探そう!!」


「私達だって、協力する!」






 喜びの波に流されるように、次々と冒険者達は歓声を上げた。宿屋の主人が、ユニを満足そうに見て、また大きな声で言った。



「では、皆様探しに行きましょう。まず、その血溜まりがある所に連れて行ってください。その他の方は森の中を探してください」



 冒険者達は全員、主人の言う事を素直に聞いた。皆々が黙って頷き、外へ飛び出して行く。至って冷静に、団結して。













——何かおかしくないか?



 ユニは違和感を感じた。黒髪の男性の引き攣った顔、流れるような冒険者達の団結力——何かが引っかかるのに、その正体は分からない。

 が、考える度に『絶対よ』とマナシィの言葉が暗示のように繰り返される。『あの人』は生きているし、迷っているだけだ。その筈だと信じているのに、不安が拭い取れない。





「ユニ」



 何故、こんなにもマナシィの言葉を思い出してしまうのか。



「おい、ユニ」



 何故、自分は『あの人』が生きていると確信出来ない?



「ユニ!!」


「っ?!」



 宿屋の主人に、ユニは肩を強く掴まれて現実へと引っ張られた。



「また考え事か?そんなに集中するのは、やめておけ」



 ロビーを見渡すと、人が少ない。ユニが悩んでいる間に、数人の冒険者を残してロビーにいた殆どの人が外に出て行ったようだ。



「えっと、親父?俺、何すれば……」


「宿の留守番は任せた。母さんは居るが、とりあえずお前は受付から動くな。アリゼにも言うなよ?アリゼが記憶をなくした原因が、もしかしたら大切な人が居なくなった事だとも考えられる。

 大切な事だから、もう一度言うぞ。アリゼには言うな」



 宿屋の主人は妙に迫力があり、ユニはあまり見た事のない父親の表情に、無言で頷いた。



「それじゃあ、夜までには帰ってくる」



 そう言って、主人は宿屋から外に出て行った。





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