表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒い夢と白い夢Ⅰ ――過去の呪い――  作者: 葉都菜・創作クラブ
第5章 ある女性騎士の台頭 ――封鎖区域テトラル――
40/43

第39話 運命の戦い

※前半はディンター視点です。

※後半はパトラー視点です。

 【封鎖区域テトラル 旧中央市内】


 夕陽が空を赤く染める頃、連合軍は敗北した。コア・シップ3隻が撃ち落され、何故か旗艦のコア・シップは元の位置に着陸した。俺はスロイディアを派遣し、全軍の指揮を執っていた。連合軍の残党を片付ける為に。

 しばらくの間、指揮を執っていたが、突然白いガンシップが俺の前に飛んでくる。中から出て来たのは数人の兵士とピューリタンだった。


「おお、ピューリタン、無事だったか」

「ディンター将軍……。ララーベルはどうなりました?」

「まだ分からん。だが、あのコア・シップにいると思う」

「ではすぐに兵を……」

「なに、大丈夫だ。少し前にスロイディアと兵を派遣している。それよりも、人工知能テトラルはどうなった?」

「人工知能テトラルは私とクラスタで破壊しました。また、クォット将軍によってテトラルの幹部や連合軍の将校らも逮捕されました」


 なるほど。やはり人工知能テトラルをぶっ壊したのはピューリタンらだったか。それに、テトラルの幹部や連合軍の将校らが逮捕されたというなら、この戦いもほぼ終わったも同然だな。


「……よし、俺はスロイディアんとこ行ってくる。後は頼んだ」

「分かりました。お気をつけて……」


 俺はピューリタンに残党討伐を任せると、スピーダー・バイクに乗って着陸したコア・シップに向かって飛んで行った。

 さて、コア・シップでは何が起きているかな。なんとなく、イヤな予感を抱きつつも俺はスピーダー・バイクを勢いよく進めた。



◆◇◆



 【コア・シップ1号艦 内部】


 な、なんだこれ……?


「スロイディア将軍、テトラルの研究員は皆殺しにされています!」


 コア・シップの内部は全く予想していないものだった。バトル=アルファや軍用ウォプルはことごとく何者かによって斬り倒されていた。

 ララーベルと共に逃げ込んだテトラルの研究員や幹部たちも同じ運命を辿っていた。あちこちにある赤い血と身体の一部分。誰かに斬り殺された後だった。


「この様子ではララーベルの命も危ういな」

「誰がこんな事……」


 私はこの惨劇に恐怖を覚えながらも進んでいく。殺されたのは研究員ばかりでなく、連合軍の人間兵士や将校たちもだ。

 軍用兵器の残骸があちこちに散らばる灰色の廊下を進み、私たちはエレベーターに乗ると、コア・シップの最上階へと向かう。

 エレベーターはひたすら最上階のコア・シップ艦橋を目指して進んでいく。開いた先にあるのは、一直線の廊下。その廊下の奥に黒色をした鋼の扉があり、その先が最高司令室となっている。

 やがてエレベーターが止まる。扉が開いていく。だが、その扉のすぐ目の前に人がいた! 銀色をした鋼の鎧に、白いマントを纏った人間。その顔も鋼の鎧に覆われていた。


「…………!」


 その人は腰に刺していた剣を引き抜く。同時にスロイディア将軍も剣を引き抜き、私もデュランダルを引き抜く。


「ララーベルは、生きてるか?」

「…………」


 その人は無言でゆっくりと首を横に振った。……殺した? 確かに殺されても文句が言えないほどのことをしたけど、でも……!

 スロイディア将軍は勢いよくその人に飛びかかる。鎧の人は彼の剣を、白銀に輝く大きめの剣で防ぐ。火花が散り、金属音が鳴り響く。スロイディア将軍はその人の後ろに降り立つ。その人もすぐに降り向き、何度も激しく攻撃する。


「クッ!」


 スロイディア将軍は明らかに苦戦していた。無駄のない素早い動きで鎧を纏った人は何度も攻撃する。その度に火花が散り、金属音が鳴り響く。

 私もエレベーターから飛び出し、その人に斬りかかるとする。だが、その直前、その人はスロイディア将軍の剣を弾き飛ばした!


「…………!」


 その人はこっちを向く。この時、私は剣を振り上げていた。その人は黒いゴム製のハンドグローブを着けた手で私の剣を掴む。剣の動きが封じられる。なんて力だ……!

 その時、私の身体の周りに物理シールドが張られる。スロイディア将軍だ。彼はスタンロッド型の魔法発生装置を握り締めていた。


「連合政府の人間か、傭兵かは知らないが、大人しくした方がいいぞ」

「…………」


 その人は素早く私の剣から手を離すと、少し距離を取る。だが、スロイディア将軍は一気に距離を詰めていく。強化魔法で動きの速度を上げている。

 これまでの倍はある速度で鎧の人を激しく何度も攻撃する。その人も自身の剣で攻撃を防ぐが、不意を突かれた事もあってか、その人は一気に劣勢に立たされる。

 スロイディア将軍が僅かな隙を突き、白銀の剣を弾き飛ばす。白銀の剣は空中で何度も回転しながらその人の遥か後ろまで飛んでいく。


「はぁはぁっ、降参しろ!」

「…………」


 スロイディア将軍は鎧の人に剣を付きつける。だが、その人は彼に手をかざす。その瞬間、彼は強い力で弾き飛ばされ、エレベーターの扉に背を打ちつける。彼はそのまま、床に倒れ込み、ピクリとも動かなくなった。たぶん、死んではいないと思うけど……。


「クッ……」


 私は震える手で剣を握り締める。勝てる見込みはない。でも、やるしかない。勝てる見込みのない戦いに身を投じるのは愚かだと思うけど……!

 鎧の人は私に背を向け、最高司令室へと通じる扉の前まで飛んで行った白銀の剣を拾う。明らかに攻撃のチャンスだった。それなのに、私は動けないでいた。


「……あなたは連合軍の人間ですか?」

「…………」


 鎧の人は無言で白銀の美しい剣を握る。ど、どうしよう……。勝てない! でも、連合軍の人間なら逃がすワケにはいけない! 

 私は震える手でデュランダルを握ると、その鎧の人に向かって走って行く。勝てなくても、時間稼ぎになればそれでいい!


「うわあぁぁッ!」


 叫びながら走り、剣を振り上げる。その人は白銀の剣でデュランダルを受け止める。私はすぐに離すと、何度も素早く攻撃する。何度も高い金属音と、空気を切り裂くような音がする。

 私はいつもの倍の力で攻撃する。それが功を奏したのか、鎧の人の白銀の剣を叩き落した!


「クッ!」

「…………?」


 鎧の人は初めて声を上げた。女の人の声だった。一瞬で、それが誰なのかは分からなかったけど、どこかで聞いた事のある声だった。

 私は彼女の首にデュランダルの先端を突きつける。喉は鎧で覆われていなかった。


「降伏してください……!」

「…………」


 その時、後ろの扉が開いた。エレベーターの扉だ。その途端、鎧の人は私に手を向ける。その途端、黄色の電撃が私に直撃し、吹っ飛ばされる。

 あわや壁に激突しそうになった私を素早く抱き抱えてくれたのはディンター将軍だった。彼の側から2人を兵士が飛び出す。


「…………」


 彼女はさっきと同じように電撃で2人を吹き飛ばす。そして、大きくジャンプしてこっちに飛んできた!


「おっと、マジか!」


 ディンター将軍は私をエレベーターの床に放りだすと、慌てて剣を引き抜こうとする。だが、間に合わなかった!


「おっ、わっ!」


 彼女はディンター将軍の胸倉を掴み、軽々とエレベーターの外に放り投げる。そして、ボタンを押すと、扉を閉めて下階に向かう。


「あ、あなたは、何がしたいッ!」

「…………」


 答えなかった。痺れる体で私は手すりにつかまりながらようやく立つ。だが、動けるようになる頃にはエレベーターは到着した。

 彼女はエレベーターから出ると走り出す。出た場所はガンシップ格納庫だった。政府軍の兵士が何人かいる!


「な、なんだ?」

「誰だ、お前は?」

「その人を逃がさないで!」


 私は叫ぶ。慌てて兵士がアサルトライフルを向ける。発砲。だが、彼女は軽々と空高く飛び、銃弾を避ける。また、近づいてきた兵士を蹴り飛ばすと、そこにあったスピーダー・バイクに乗り、あっという間にコア・シップの外へと消えていった。


「も、申し訳ありません、パトラー准将……。“2人”も逃がすとはあるまじき失態でした……」

「ふ、2人……?」

「さきほど、七将軍のケイレイトもここに現れ、スピーダー・バイクを奪って逃げました」

「……そっか」


 ケイレイト、逃げれたんだ……。なぜかは分からないけど、私は少しだけホッとした。

 それよりも、さっきの鎧の人のことが気になっていた。あの人、なんだったんだろう? 連合政府の人間なら、ララーベルを殺すハズない。かといって政府の人間でもない。なら、彼女は何者だったのだろう? なにが目的だったのだろうか……?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ