第38話 ララーベルの最期
※前半はララーベル視点です。
※後半はパトラー視点です。
【コア・シップ 1号艦 最高司令室】
[ララーベル閣下、3号艦と6号艦が墜落しました!]
我が入ってきた途端、操作をしていたバトル=コマンダーが叫ぶように言う。ハハッ、3号艦や6号艦はこの艦じゃない。慌てることは何もない。
すでにこの1号艦は空高くにまで飛び上がり、キャンセル・シールドを張っていた。これでいくら弱点である左翼下を攻撃しようと落とすことは出来ない。
パトラーはバトル=パラディンに邪魔され、結局ここに来れはしなかった。ましてやクォットやクラスタがここに辿り着く手段はない。
「連合政府首都ティトシティへ向け高速ワープを使うのだ……。戦線を離脱する」
[イエッサー]
我は側にいたバトル=パラディンからグラスを受け取る。中にあるのは高級ワイン。いつも飲んでいるものだった。それを一気に飲み干すと、我はグラスをそのバトル=パラディンに渡す。
その時、いきなり最高司令室の扉が開く。……なんだ? 我は椅子を回転させ、後ろにある扉の方を見る。そこにいたのは全身を銀色の鎧で覆った人間だった。誰だ、コイツ?
「誰だ、お前は? こんな所で何をしておる?」
「…………」
この部屋にはバトル=パラディンが10体もいる。万が一、我を捕えようとしても、即座に取り押さえることが出来る。
「ララーベル、大人しく“アイツ”に捕まっておけばよかったものを……」
……この声、クローン・フィルドの1人か? クローン・フィルドはこの戦いが始まる前に全員、コマンダー・アレイシアに命じて首都ティトシティに送ったハズだが? ……脱走クローンかも知れんな。
「ハッハッハッ、命令に背いた哀れなクローンよ……。パラディン、殺せ」
側に控えていた8体のバトル=パラディンが槍の電撃を起動させる。命令に背くクローンなど我はいらぬ。そんなクローンは廃棄処理だ……。
クローンは手をかざす。それと同時にバトル=パラディンの1体が、鋭く尖った槍の先端を、鎧を纏ったクローンに刺そうと振り上げる。だが、動きが止まった。全てのバトル=パラディンの。
「……は?」
それはゆっくりとしたものだった。全てのバトル=パラディンの腹部が横に斬れ、その頭も真っ二つに斬れ飛んだ。8体のバトル=パラディンが、床に倒れ込んだ。
「なッ……!?」
鎧を纏ったクローンはゆっくりと歩み寄ってくる。なんだ、コイツ? そんなバカな! クローンにバトル=パラディンほどの硬度を誇る鋼を斬る力など……!
「な、おっ、よせ、クローン……!」
「…………」
ソイツは無言で歩み寄ってくる。
「う、ぁッ!」
連合政府に加わって以来、初めてだろう。この恐怖は。今までは全て人工知能テトラルが計算し、全ての敵を打ち下してきた。だが、なんだ……コイツの出現は想定外だ!
我は椅子に座ったまま動けないでいた。その間にも鎧のクローンは近づいてくる。彼女は目の前に立つ。クソッ、後ろのバトル=パラディンはなにを……。
「後ろが気になるか?」
「…………!?」
「誰もいない」
「は、はッ……!?」
「もう、動くものはなにもない」
まさか、コイツ超能力で最高司令室のバトル=パラディンはバトル=コマンダーを……!
この時になってようやく気がついた。後ろから何も音がしない。コンピューターを操作するバトル=コマンダーの音も……。
「こ、降伏する……! 降伏する! よせ、やめろぉッ!!」
「お前は同じセリフを何度も聞いたハズだろ?」
「…………!」
――クラスタ親衛隊やクローン共か!
そのクローンは我に向けて手をかざす。ク、クソッ、なんでこんな事に! こうなるなら連合政府なんかには入らなかった!
「よせ! 我は連合政府内部の情報を知っている! 政府軍に引き渡せば、引き渡せば大金を貰えるぞ! クローンのお前だって保護される!!」
「…………。“私の事、クローン・フィルドの1人だと思っているのか”?」
「……えッ?」
我がその言葉の意味を探ろうと頭を働かせようとした。だが、それとほぼ同時だっただろうか。自身の首が宙を舞い、意識が消えたのは――……。
「…………」
◆◇◆
【テトラル本部要塞 緊急脱出用ヘリポート】
私は信じられない光景を目にしていた。ララーベルが逃げ込んだと思うコア・シップが徐々に高度を下げ、最後には元の着陸場にまで降りて来た。
コア・シップは降りてくると、こっちの方に1本の細長い通路を伸ばしてくる。ララーベルもこの通路を使って直接コア・シップへと乗り込んだのだろう。
しかし、私はこの奇妙な現象に戸惑い、先に進めないでいた。罠だろうか? さっきまでは乗り込む気満々だったけど、こうなるとさすがに躊躇する。
「ど、どうしよう……」
サブマシンガンを握り締めたまま、私は迷っていた。今すぐにでもララーベルを捕えるべきなんだろうけど、捕まってみんなに迷惑をかけるのは避けたいし……。
その時、南の方から2機の白いガンシップが飛んでくる。政府軍のガンシップだ。それはこのヘリポートに着陸する。中から出てくるのは政府軍の兵士とスロイディア将軍。
「スロイディア将軍……」
「恐らくララーベルとテトラル研究員が逃げ込んだコア・シップだろう。なぜ戻ってきたのかは分からんが、行くしかない」
スロイディア将軍の言葉に私は頷き、コア・シップへと通じる橋へ足を踏み出す。私の後ろからスロイディア将軍とその兵士たちが付いてきた。今度こそララーベルを捕えるんだ!




