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お家存亡のため、ヒトの心が解らない辺境伯さまとやらに無理矢理嫁がされましたが、毎日一緒に過ごしていたら情緒が未完成なだけだと解ったので一緒に外交内政を頑張ります。ところで実家、私が居なくても大丈夫?  作者: 雪車町地蔵
第三章 ユングバリ辺境伯領の産業を見直していきましょう!

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第五話 閣下、それはどういうことですか!?

「諸外国をあっと言わせてあげましょう! なんて、どうして言ってしまったんでしょう……」


 大言壮語(たいげんそうご)でした。

 調子に乗っていました。

 傲慢(ごうまん)でした。


 だって、せっかく出来上がったものを、どうお披露目すればいいか、私にはてんで解らないのですから!



§§



 ことは少しばかり前後します。

 絹糸を染め付けるための紅花(ベニバナ)山藍(やまあい)を村の男性陣に準備していただいている間。

 女性陣には、とあることをレクチャーしていました。

 刺繍(ししゅう)やレースの製作技法です。


 最終的には生糸(きいと)と合わせてドレスを作り、刺繍などの技術自体も、合わせて周辺の村へ売り込んでいきたいという狙いがありました。

 初めに教わる彼女たちが、以後先生のような役割を帯びますからね。


 そうして紡績(ぼうせき)染色(せんしょく)機織(はたお)り、レースの縫い付けと段階を()て、ついにドレスが完成しました。

 村の皆さんの集大成。

 これを大々的に売り出すには、ある程度の〝物語〟が必要です。


 人々がものを買うとき、それが必要だから購入するか、あるいは魅力的だから手に入れたいと考えます。

 商品の背景を彩る物語は、そんな購買意欲を掻き立てるのに、何よりも強く左右するのです。

 いわゆるブランドとしての銘柄。


 画家の苦悩。

 もう産出されない稀少な鉱物。

 そう言ったエピソードです。


 それは、一回性かも知れませんが、既存の生活様式すら変えてしまう劇薬です。

 辺境伯領自体が、ファッションをあまり肯定的に捉えていないのですから、起爆薬としてなおさら必要だと思われたのです。


 問題は、私が曲がりにも貴族ながら、こういった情報を大口のお客様がどこで得ているか、まったく知らないという事実にありました。

 なにせ男爵領の屋根裏に閉じこもっていたので、世のことを本と口伝(くでん)でしか知りません。

 体感的に効果的なものがなにか、わからないのです。


「それでここ最近、きみはウンウンと唸っていた訳か」


 ついに万策尽きた私。

 これをセレスさんが、イェルハルド閣下に報告。

 呼び出しを受け、包み隠さず説明することとなり、今大きく息をつかれているというところで、時間が追いつきます。


「きみは賢いが……なんというか、勢いで突っ走るな」

「閣下、その感情はおそらくあきれです」

「どうかな。しかし、こんな時どうすればいいか、きみは本当にわからないのか?」


 表情こそ変えないものの、彼は首を傾げました。

 不思議そうに。


 逆に私は戸惑うばかりです。

 どうしたらよいかなんて、本気でわからないのです。

 お手上げですとジェスチャーをしてみせれば、彼はまた大きく長い息をついて。


「俺に頼る。そんな選択肢は、なかったのか?」

「……!」

「俺たちは夫婦だ。足りない部分は(おぎな)うべきだろう」

「閣下、そんな畏れ多い」


 だって、私は、男爵家の役立たずで。

 本来なら、閣下につりあうわけもない身分で。


「アンリ。きみがなにを考えているかはわからない。けれど、ハッキリと言っておこう。俺は、俺の意志できみを選んだ」

「え?」

「きみとともに暮らしたくて、手を尽くして、政略結婚という形を利用してまで、きみをこの屋敷へ招いた。だから、願ってくれ、頼んでくれ。それは、イェルハルド・ユングバリにとって喜びだ。そう、この感情は、喜びだ」


 パチリと指を鳴らされる閣下。

 唖然としてしまう私。


 だって、こんなにも饒舌(じょうぜつ)に。

 真っ直ぐに私を見詰めて話をしてくださるかたなんて、これまで居ませんでした。

 熱く、真摯に語りかけてくれるひとなんて。


「閣下らしくありません」

「そんな俺は、(いや)か?」

「いいえ、いいえ」


 私は、熱を帯びている目頭をキュッと押さえて。

 それから笑顔で、お願いするのです。


「よろしくお願いします、閣下。お知恵を貸してください」

「もちろんだ」

「それで、どのような妙手(みょうしゅ)があるのですか……っ?」

「簡単だとも」


 彼は、自信たっぷりに言われました。


「君を社交界へ出す。とびきりのドレスを着せて」

「――は?」


 はぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!?


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