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奇妙な魔法少女たち  作者: みずゆめ
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八話 魔法少女マリネ

 昼空がひび割れて出来た大きな穴の中から黒い何かがずるりと出てきた。

 その何かは俺達がいる屋上へと落ちてきて、ぺたりと着地する。


 そいつは人のような見た目だが、関節がなくウネウネしている。

 大きさは2メートル弱。腹のあたりに穴が開いていた。

 黒い巨人を見た後だと大したことないように感じるが、魔物特有の異様な雰囲気を纏っていて、油断してはならないと本能が告げる。


 しかし、ビビっているのは俺だけなのか、マリネがはしゃぎながら前へ出た。


「現れましたわね! ハジメさん、本当の魔法少女の戦いをご覧に入れますわ! ”ライチ”、行きなさ――」

「ミーティア・ストライク!!」


 マリネのセリフを遮って、レイがマジカルジュエルを黒いウネウネに投げつけた。

 マジカルジュエルは黒いウネウネの真上で大剣に変化し、重力に従ってそのまま落下する。

 黒いウネウネは為す術もなく大剣に貫かれ、体の先から消滅していく……。


 ……黒いウネウネを倒した。


 場に沈黙が流れる。

 その沈黙を破ったのは、この空気を作った張本人のレイだった。


「大したことなかったわね。あ、いや、私の新技が強すぎたんだわ……。ふっ」

「ふっ、じゃありませんわよおおお! せっかくのわたくしの見せ場が! なんてことをするんですの!?」


 キメ顔をしているレイに猛抗議をするマリネ。

 俺もマリネがどうやって戦うのか見ておきたかったんだけどな……。


「おーい、その辺にしとこうぜ。怪我もなく倒せたんだからいいんじゃないか。マリネはまた今度見せてくれたらいいからさ」


 俺の言葉にマリネは渋々といった感じで了承した。


「むう、仕方ありませんわね。ではまた今度ということで」

「マリネマリネ、”ミーティア”を回収したいんだけど、あの高さだと届かないから肩車してくれない?」


 レイが床に突き刺さっている大剣の前でぴょんぴょん跳ねている。

 その柄頭にある宝石にレイが触らないと回収が出来ないらしい。

 レイの大剣は直径3メートルに近く、手を伸ばしただけでは届かない。


 ミーティア・ストライクは威力は申し分ないが、外した時が大変だろうな……。

 ていうか魔法……。まあいいやもう。あれも宝石から剣出すし、魔法だ魔法。


「はあ、仕方ありませんわね……。”ライチ”」


 マリネはため息を付きながら”ライチ”を動かし、レイを肩車する。

 ”ミーティア”は回収され、残ったのは床の大きな穴。

 すぐに復元をと思ったが……。


「あれ? そういや”たまごっティン”って使ってたか? これ復元しないと……」


 魔物との戦闘の際に周辺を保護する魔法道具を使用した覚えがなく、冷や汗をかく。

 しかし、心配は杞憂だったようで


「大丈夫よ? ハジメが魔物にビビって腰が抜けている間に結界張っておいたから」

「ぐ、腰は抜けてねえよ……」


 レイがしっかりフォローしてくれていたらしい。

 さすがはベテランというか経験者ということか。


 ――そうだ、”たまごっティン”について聞きたいことがあったんだった。


「なあレイ、それって復元もするんだったよな? 魔法少女も復元できるのか?」

「いやいや、出来ないわよ。クロが言ってたわね、確か魔法少女の魔力が干渉しちゃうからとかなんとか。復元できるのは魔力を持たないものだけみたい」


 そうなのか。いやまあ、そうだよな。そんなに都合よくないか。


「そっか。無限に復活できるなら、もっと捨て身の戦法を取れると思ったんだが」

「まあ、ハジメさんたら。冗談がお好きなのですね。例え復活できたとしても、痛い思いはごめんですわよ」

「……気をつけなさい、マリネ。この青髪の男女は平然とそういう作戦を考えるわ。そして私たちにやれって命じてくるわ。ていうか私はさせられたわ」


 いやいや、……あの、……何も言い訳が思いつかねえ。

 そんな俺に構わず、レイが手を鳴らして場を仕切る。


「そんじゃ復元させて教室に戻りましょうか。そろそろお昼休み終わっちゃうし」

「あああ! まだわたくしご飯を食べきっていませんわ!」


 すっかり緩んだ空気の中、俺はふと空にできたひび割れが気になった。


 ……まだ割れてるな。復元すれば元に戻るのか? ……ん?

 ひび割れから黒い何かがうごめいているのが見えた……!


「――っレイ、マリネ! まだだ! 次が来るぞ!」

「「!!」」


 二人はすぐさま構える。

 二人が構えたのと同時、空のひび割れから魔物が複数・・落ちてきた。


 降りてきたのは最初の魔物と同様の姿をしていた。

 数は4……いや、5体だ。数で不利だ。

 戦術次第で状況は覆そうだが、先程はレイが瞬殺してしまったので、魔物の戦闘能力が分からず作戦が立てられない。


 いや、俺がわからなくても先輩の魔法少女に聞けばいい……!


「レイ、マリネ、あいつらの強さはどんなもんだ!? 注意するところとか知ってたら――」

「ミーティア・ストライク!!」


 魔物のことを聞く間もなく、レイが宝石を投げた。 

 宝石は魔物の真上で大剣に変わる――前に、魔物がゴムのように伸ばした腕によって弾き飛ばされてしまった。


「ああああ!? あのひょろ助、何してくれてんのよ!?」


 宝石は遠くの方で大剣へと変わり、大きな音を立てて床に落ちた。刺さらなかったのは幸いか。

 回収しに行こうにも俺達と大剣の間に魔物達がいるため、そう易々とは取れそうにもない。

 ミーティア・ストライク、破れたり。いやいや、ふざけてる場合じゃない。


 今攻め込まれたら負けてしまいそうだが、魔物達は一辺に同じ場所にきたせいか、互いの体が絡まって身動きがうまくいっていない。バカなのか……?

 しかし、状況は楽観視出来ない。

 魔物が絡まっている今なら、レイに”ミーティア”を回収させることはできそうだ。

 しかし、先程魔物がレイの宝石を弾いた時に、腕が異様に伸びていたため、近づいたら伸ばした腕で迎撃されてしまうだろう。


 俺は魔物達が本格的に動き出していないうちにできるだけ情報を集める。


「マリネ、魔物について知ってることを教えてくれ! あと、お前はあいつら相手にどれだけやれる!?」

「全く分かりませんわ! 分かることは、”ライチ”だけだと歯が立ちませんわね!」


 ダメかもしれない。

 頭を抱えたくなるが、その前にちょっと閃いたことを聞く。


「じゃあ、制御不能の暴走した人形達ならどうだ!?」

「ええ!? は、話になりませんわよ!? 言うことは聞きませんし、何故かわたくしを執拗に狙ってきますし! 勝てるとは思えませんわ!」


 マリネしか狙わないのか……。

 無差別に襲うなら、魔物を巻き込んで倒せるかと思ったが。


「じゃあ、そいつらはあの魔物の真上に出せるか!?」

「だ、出せますけども……」


 ここで魔物達が動き出した……!

 くそっ迷ってる暇はない。


「頼む! マリネ、人形をありったけ奴らの上に出せ!」

「だからこの天気だと制御が……」

「マリネ、私からもお願い! ハジメの言う通りにして!」


 俺とレイに押されマリネが観念したように、いや、ヤケクソのように叫ぶ。


「ああああ! もうどうなっても知りませんわよ! 舞い踊れ! ラヴリィ・マリオネット!」


 マリネが魔物達の上へ向けて手をかざす。

 光の粒が空中に集まっていき、大量の人形を作り出した。

 数は10~15くらいだろうか。


 作り出された人形達は重力に逆らえず、落下していく。

 ――下にいる魔物達目掛けて。


 十数体の人形に魔物達は押しつぶされる。

 衝撃に耐えきれず、数匹の魔物が消滅していくのが見えた。


 ありがとう、重力センパイ。また助けられました。これからも多分お世話になります。


「こ、こんな使い方があるなんて……」


 マリネが驚いている。

 俺も驚いてるよ。魔法少女なのに2日連続でこんな物理攻撃的な戦法をすることになるなんて。

 ていうか魔法少女になってから重さによる攻撃ばっかだ……。重力操作魔法の使い手って名乗れるかな。


 しかし安心するのはまだ早い。魔物は全滅していないのだから。


「レイ! 今のうちに”ミーティア”を回収してきてくれ!」

「わかったわ! ハジメ、気をつけてね! あの人形達は、お子様が見てはいけないものだから!」


 なにそれこわい。

 一応、大剣に向かって走り出すレイに強化魔法をかけておく。


 残った魔物は3匹……今1匹が消滅し、2匹になった。

 そのうち片方はレイの方へ動いている。こちらには魔物1匹と人形が十数体。


 中々厳しい状況だが、人形については対策を考えてある。多分一発で全部消せる、スマートな方法を。

 とりあえず人形を消して、後は残った魔物を各個撃破だ。


「マリネ、変身解除だ!」

「え!? どうしてですの? まだ魔物も人形もいますわ」

「あの人形を消すんだ。制御不能だろうと、動力源である魔力が流れなければ動きようがないだろ? だから変身解除して魔力を切るんだ」


 どんな機能があろうとも動力源が断たれれば動けなくなるはずだ。


「え、いや、あの子達はあらかじめ込められた魔力を使って動きますのよ。半自立式なんですの。ですのでわたくしが変身解除しても動いていると思いますわ……。おそらく明日の夜明けまで」

「……マジっすか」

「マジっすわ」


 半自立式だったかー。アテが外れちゃったな―。はははは。やっべえやー。マジで。


 俺が真顔で黙っていると、マリネが不安そうな顔でこちらを見ていた。

 俺はマリネに、俺の人生において今までにないくらいに優しく、この上がないほど諦観した顔で微笑みかけた。


「……安心しろよ、マリネ。一緒に死んでやることくらいはできるさ。一人ぼっちにはさせない。一緒に旅立とう」

「わたくしが嫌ですわよ!? どうするんですの!? あなたの言う通りにしたのに!」


 フラれてしまった。いや乗られても困るが。


 この状況は確かに俺のせいだ……。だから俺がどうにかしないと……。

 そう思い、何か突破口はないかと人形を観察する。……と。


「……なんだ、こいつら……」


 その人形は異様・・だった。

 姿はマリネを模しているようだが、カラーリングが反転している。黒が白に、白が黒に。

 マリネとは色が反転した黒い髪は、艶もなくボサボサだ。

 どの人形も前かがみで、フラフラと足元もおぼつかないが、赤く光った目だけはこちらへ向いている……。

 口は半開きで、そこから液体のようなものがポタポタと垂れていた。

 よく見たら服がボロボロだ……。破れた服の隙間から見える肌は土気色をしていて、ただれているようにも見える。


 これは……まるで……。


「マリネ、お前の魔法ってゾンビだったのか……」

「違いますわ!! ゾンビなんかじゃ……。か、可愛い人形なのですわ……。可愛い人形を出すはずなのですわあああん!」


 泣いてしまった。


 なるほど。これはあんまり使いたくない魔法だ。制御ができないとこんなことになるとは……。

 ……ああ、天気が良い日なら制御ができるっていうのは、ゾンビは日光が苦手だからなのかな……。

 日光でゾンビの力が弱まって制御しやすくなる、みたいな。

 でも見た目まで変化するとは……。どんな魔法だよ。


 ていうかどんな魔法少女だよ、マリネ。


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