57話 商業ギルド長
買い取りカウンターを出てクリスさんと手を繋いで食堂に行きます。
調理場に行きサキさんを見つけます。
「サキさん!」
空気を読んだクリスさんの手が離れます。
デパートで1000円のチョコレートの詰め合わせを購入し、サキさんに渡します。
「これ、お世話になりました」
「なんだい、これは」
「お菓子ですよ。チョコレートです」
「菓子かい! そんな高価なものは受け取れないよ!」
「でも、そんなに凄いお菓子じゃないんですよ、仲良くしていただいたお礼です」
「でもねぇ」
「お世話になったお礼ですから」
「うーん、ところでお世話になったお礼というと、どこかに行くのかい?」
「はい、クリスさんのところに行きます」
と言ってクリスさんを紹介する。
「そうかい、結婚するのかい!」
「いいえ、単なる同居人です」
「ええっ?」
「あの、お話し中に申し訳ございません、ユキは私が大切にします」
「ええっ? どっちだい」
「いや、クリスさん、別に大切にしなくてもいいですよ」
「ふーん、なるほどね、わかったわ、この菓子は受け取っておくよ。そのかわり、結婚したら、会いに来ておくれ。おめでとうを言いたいから」
「いや、そんなことには」
「また、お会いしに来ますね」
「いや、クリスさんが返事をしても……それに毎日ヨーグルトを渡しに来るし、今日の分のヨーグルト、冷蔵庫に入れてくるね」
二人から離れて、冷蔵庫にヨーグルトを入れます。
40個に増えたから冷蔵庫に入れるのにも時間がかかります。
少し離れたところで、サキさんとクリスさんがなにか話をしています。
ちょっと遠くて聞こえにくい。
「じゃあ、よろしく頼むよ」
「はい、任せてください」
うん、サキさんがクリスさんになにかを頼んだようですね。
うまくいくといいのですが。
一体なにを頼んだのでしょうか。
サキさんに今までのお礼を言って別れます。
まぁ、明日また会うのですけどね。
本当はこのままクリスさんの家に行きたいのですが、商業ギルドと王都の中村君に会いに行きたいのです。
クリスさんと手を繋ぎながら、商業ギルドに向かって歩きます。
商業ギルドのあとに王都の中村君に会えるようにおねだりします。
オーケーが出ました。
商業ギルドのあとは中村君です。
商業ギルドです。
クリスさんと商業ギルドに入ります。
とと、市川君です。
殺気立っていますね。
こちらにまでピリピリした雰囲気が伝染するかのようです。
私に気づかれました。
「高梨! お前まさか、砂糖を売っているんじゃないだろうな!」
あちゃー、こうなりますよね。
「売ってたらどうなのよ」
強気でいきます。
舐められたらおしまいですから。
モブは頑張ります。
「だったら売るのをやめろ」
「やだ」
クリスさんに握られている手が離され、クリスさんが私と市川君との間に立ちふさがります。
「君はユキと、どういった関係だい?」
「ああん」
市川君がクリスさんに喧嘩を売っています。
あっと、クリスさんの美貌に気がついたようです。
「お前には関係ない! 俺は高梨と話をしてるんだ」
「私には、話すことなんてないよ」
「俺にはある、俺は貴重なスキル持ちだ、大切にされる権利がある」
「だったら、私に構わなくてもいいじゃない」
「だから、お前が砂糖を売ったら駄目なんだよ!」
「意味がわからない」
「うるせぇな砂糖を売るのをやめろよ!」
「そこまでにしていただきましょう。市川様」
商業ギルドのギルド長です。
「なんだと!」
「私どもから高梨様にお願いして、砂糖を卸していただきました」
「なんで……」
「砂糖は金貨10枚が限界なのです。同じような能力を高梨様がお持ちなら、私ども商業ギルドは高梨様を頼ります」
「……」
「申し訳ございません。高梨様を責めるのではなく、私どもを責めてください」
「チッ」
市川君が帰っていきます。
クリスさんが再び手を繋いできます。
うん? クリスさん、もう手は繋がなくてもいいんですよ?
繋なぐ?
仕方ありません。
モブは逆らうことを諦めました。




