46話 危険人物
買い取りも済ませたし、エリクサーの情報を求めて街の外れに向かう。
手土産は何にしようか。
無難に菓子折りだな。
チョコレートとクッキーの詰め合わせにする。
少し遠かったが、たどり着いた。
へぇ、なかなかの大きさ。
しっかりとした造りの瀟洒な家だ。
チャイムを鳴らす。
ガチャ。
扉が開いた。
おお、美形。
さらさらの腰まで届く長い銀髪に、青い瞳の高身長のイケメン。
他人を突き放したような冷ややかな瞳。
クリスさんと同じような超一級のイケメン。
「何?」
「すみません、エリクサーの作り方を教えてもらいたくて、ここに来ました」
差し出した菓子折りを、ぐぐっと押し返される。
菓子折りが拒否られた。
仕方なくアイテムボックスにしまう。
「迷惑なんだけど、ところで、君はどんな錬金釜を使っている?」
「あの、これです」
例の女神様にもらった錬金釜を見せる。
「入って……」
おや?冷ややかさが消えたのかな。
「それで、エリクサーだったね」
「はい」
教えてもらえるのだろうか?
「その錬金釜を何回か使わせてもらうことができれば、教えてあげる」
「は……」
周りが光り輝く。
はいって言おうとしたのにな、どうして、光ってるんだろ。
「駄目」
女神様だ。
女神様が駄目って言った。
「チッ!」
イケメンが舌打ちした。
なんだろう、女神様が怒ってる。
「それは由紀ちゃん専用。他の誰にも使わせないで、今だってこいつは、ろくでもないことをやろうとした」
ろくでもないことをやろうとした?
なぜ?
「こいつはこの世界を嫌っていてね、特に錬金術士を嫌っていて、他人の錬金釜を使っては毒を撒き散らすのが趣味なのよ」
「毒?!」
「そう、錬金術士の錬金釜を汚染させて毒を撒き散らすの」
穏やかでないな、毒を撒き散らすとは。
「毒と言っても、想像しているような毒じゃないさ。ただ、ちょっと身体が麻痺したり、病弱になるだけさ」
充分に毒だ。
危ない人だな、帰ったほうが良さそうだ。
「おい、お前!言いふらすんじゃないぞ。この街にいられないようにしてやるからな」
「あんたごときに、由紀ちゃんを潰させない」
「ふん、いくら力があるといってもここは神界ではない、お前よりも俺のほうが力がある」
女神様の知り合いか?そしてもしかして、この銀髪イケメンは神?
「由紀ちゃん、こいつは神界を飽きたと言って飛び出してきた神の一柱」
「はじめまして、だな。高梨由紀」
おぅ、名前を名乗ってないのにバレてる。
はじめまして、そして、さようならだな、早く逃げなきゃ。
ジリジリと後ずさる。
「はん、逃げようったってそうはいかない。お前の魔力はもう覚えた、どこにいても必ず見つけ出せる!」
「うーん、ずっと私がついているわけにもいかないし、どうしようかな」
「はっ、お前ごとき、俺様の相手じゃねぇんだぜ」
「うわー、言ったなこのわがまま邪神が!みんな来てちょうだい!」
キラキラー。
うん?目が開けていられないほどまぶしいでござるよ?
……モブは逃げ遅れた。
「あっちゃー、お前なにしてんのよ?」
「どしたの?あっれー、久しぶり」
「………」
ざわざわしてるね。
どうやら、みんな銀髪イケメンに話しかけているみたい。
一、二、……九人か。
超絶美形なキラキライケメンや、布面積の少ない衣装を着たバインボインなけしからん美女や、美少年ショタや、ロリ金髪美少女がいるね。
大人のほうが多いけど、なんだろう、この人たち。
「みんな!この人がいつも私たちの茶会で食事とかお菓子を提供している由紀ちゃん」
なぜか私が紹介される。
「へぇー、可愛いじゃん」
「好みのタイプだぜ♪」
「いつもありがとう」
「あー、お寿司っての、いつもおいしいの差し入れしてくれてた子ね」
「……ごちそうさま」
ざわざわ。
なんだろう、いつもお寿司とか、10人前用意してたけどその時の女神様の友達かな。
「ずりぃぞ、仲間を呼ぶなんて、お前らなんで来たんだ!」
「いや、だって旨いものが食べれるかと思って」
「私もー」
「俺も」
「僕も」
「……」
ざわざわ。
「まぁまぁ、ところで、みんな由紀ちゃんのピンチなの、こいつが由紀ちゃんを潰そうとするの」
「えっ?なんで?」
「おい、どうしてだ?」
女神様がかくかく然々、他の方々に説明をする。
私もふんふんとそれを聞いている。
だいたいの内容だと飽きて神界を飛び出したこの銀髪イケメンはこの世界の女性に恋をした、そうして、この世界にやって来て人間のように暮らし始めた。だけど、その女性はこの男性でなく、他の錬金術士の男性に恋をして結婚した。それからが大変、この神は、この世界を壊そうとして上の神々に止められたり、錬金術士を殺そうとして、他の神が錬金術士を逃がしたりして、今はその女性と錬金術士は寿命で死んでいないのに、いまだに錬金術士全体への怨みがあるらしく、錬金術士の持つ錬金釜に細工をして、その錬金釜を使って作った薬剤を汚染させているらしい。
まぁ、錬金術士としては錬金釜を買い換えれば済む話だが、錬金釜を買い換えることなどめったになく、その薬剤が汚染されていることがわかる鑑定士も少なく後手にまわることが多いらしい。
また、神々のほうでもこの男性を諫めてもなかなかやめなかったりして苦労したそうだ。
それと、この銀髪の男性は錬金術の腕が良いので人間からは信頼され、悪さをしてもこの男性が悪いと糾弾されることも少なく、処罰されることもめったにないそうだ。勿論、糾弾されることもあったが、その時は雲隠れしてしまい捕まえることはできなかったという話だ。
この世界では、神と人間が結婚をするということもままあり、子どもも出来るらしい。
まぁ、この男性の相手をするのは大変そうだな。
しっかし、はた迷惑な神様だな。
じっと銀髪の神様を見る。




