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31話 商談

 さて、いつものように買い取りカウンターで下級ポーションを買い取ってもらいます。

 

 昨日のぶんも買い取ってもらったので金貨24枚になりました。


 しかし、薬師は儲かりますね。


 何故か朝はヨーグルトを売ることになって、そこでも儲かってますし。


 これから商業ギルドに行って生理用ナプキンの商談をすることを思えば、異世界転移したクラスメイトの中でもかなりの成功者になりますね。


 まぁ、生理用品は安く売るつもりですが。


 お金も貯まってきたし、ようやく、この世界での生活が成り立つようになってきました。

 不安しかなかったですが、皆さんのおかげでようやくここまでこれた気がします。


 感謝です。

 

 商業ギルドにやってきました。

 おや?奥の応接室と思わしき部屋から出てきたのは、市川君ですね。

 市川 (さとし)君です。

 あ、向こうに気付かれましたね。

 陰キャなのですが、中村君や私とは方向性の違う陰キャでクラスでも仲の良い友人みたいな存在がいなかった人物です。

 ニヤニヤ笑いをして近寄ってきましたね。

「よぉ、高梨。どうだ、異世界は?面白いか?」

 なにかマウントを取ろうとしているのはわかりますが、なにを目的としているのでしょうか。

「俺だったら醤油も味噌も用意出来るんだぜ」

 あー、スキル獲得の時、黒い文字があった、あのスキルか。

 やっぱりこうなる予感はしてたんだけど、こうなってみると残念に思う。

 他のもっと優しい子にあのスキルが渡れば皆の役にたったのに。

 ま、今は私もスキル物々交換で地球の物を持ってこれるので問題ないですが、私でも手に入ることは黙ってたほうが良さそうですね。

「おい。なんとか言えよ」

 こんなに強気な人間ではなかったのに、勘違いは怖いですね。

「あー、私は別に異世界を面白いとは思わないよ。じゃあ」

 そそくさと離れます。

 言いがかりを言われても困りますしね。

 スルーするのもひとつの処世術です。

 君子危うきに近寄らず。

 今はおとなしく奥にあるお店に行って商品でも眺めたり、どんな商品が売られているのかリサーチしてみましょう。


 うん、この世界独特なのは植物とかかな?この握りこぶし(だい)のすももみたいなオレンジ色のフルーツは見たことがありません。

 聞いてみましょう。


「すみません、このフルーツはどんな味なのですか?そしてどう食べるのですか」

 

 説明を受けました。

 この実は酸味と甘さが絶妙なバランスで皮は薄いのでそのまま食べれて、中に種が入っているらしいのです。

 買ってみましょう。

 銀貨3枚。

 なかなかの高級品ですね。

 食べるのが楽しみです。

 

 そろそろいいかな?

 市川君がいなければいいのですが。

 

 受付に行きます。

 

 美人ですね。


 清楚系の美女です。


 どこのギルドでも受付は美女をスタンバイさせるのが、セオリーみたいです。


 さて、交渉をします。


「すみません。買い取ってもらいたい物があるのですが」

 ニコリと笑われ、どういった物でしょうか?と尋ねられます。

 「こういった物です」と言って生理用ショーツといくつかの生理用ナプキンを取り出して、見せてみます。

 驚いていますね。

 あ、生理用ショーツのゴムに反応してます。


 サキさんと同じですね。


 個室に案内されました。

 

 紅茶とクッキーのようなものが出てきました。

 紅茶に砂糖はつかないようです。

 そしてクッキーはあんまり甘くないです。

 まぁ、砂糖が高級品であることを考えれば、このクッキーも贅沢品なのですけどね。

 歓迎されていると受け取ってもいいでしょう。

 お、扉が開きます。

 うん、中年太りのおじさんです。

 (なご)みます。

 ですが、眼光は隙のない感じですね。

 なかなか商談は厳しいのかもしれません。


「こんにちは、今日はなにか珍しい物をお売りになられるとか、拝見させていただいてもよろしいでしょうか」

「こちらになります」


 生理用ショーツといろいろな種類の生理用ナプキンを並べてみます。

 生理用ナプキンは袋に絵が描いてあるので分かりやすいですが、現物を見せるために中身を取り出して見せてみます。


「ほぅ、これは素晴らしい商品ですね。いくらで売られるおつもりで?」

「私のほうでは、こちらの生理用ショーツは銀貨1枚と銅貨8枚で、こちらのさまざまな種類の生理用ナプキンはひとつ銅貨4枚から銅貨7枚ぐらいかな、と思ってます。ただ、商業ギルドにて販売する際に高額になりすぎるようでしたら考えます」

「ふむ、生理用ショーツが安すぎますな。生理用ナプキンはひとつとおっしゃってられましたが、これひとつですかな」

 そう言うと、おじさんは生理用ナプキンをひとつ手に取って触っている。

「いえ、ひとつというのはこの一袋のことですが」

「はい?」

「個包装では売りません。一袋ずつ売ります」


 おじさんに袋を渡します。


 目頭を押さえてますね。

「では、私どもで販売する際に高額になりすぎるようだったら考えるとは、一体どういうことでしょうか?」

「なるべく安く売っていただき、多くの女性たちに役立てて欲しいんです。そして、毎月のことですし、みんなが安く手に入る値段で売って欲しいんです」

「なるほど、採算度外視でやれと」

「まぁ、そういうことですね」

「できますが、あなたはそれでよろしいのですか?」

「はい。多少は私も上乗せしてあります」

「なるほど、私どもで売りに出すときは、生理用ショーツで、銀貨2枚。生理用ナプキンで銅貨6枚から銅貨9枚ぐらいでしょうか、あとで職員たちと話をつめなくてはなりませんが」

「そのぐらいだったら、女性たちは買えますかね?」

「大丈夫だと思いますよ、ただし、働いている女性たちにとっては、ということになりますが……」

「働いていない女性たちは?」

「少し贅沢かもしれませんね」

「うーん」

 どうしようかな、私もボランティアができるほど自立してはいません、しかも、商売は自分ひとりだけではできませんしね。

 うーん、今回、商業ギルドのほうでもだいぶ安い価格設定のようですし、いいのではないでしょうか。

 働いていない人たちは家にいますし、今までなんとかなってきたのです。

 よし、大丈夫。

「じゃあ、それでお願いしてもよろしいですか?」

「おまかせください」

 商談が上手くいきました。

 なんと、このお話をしているおじさんは商業ギルドのギルド長でした。

 なんとなく目が違うなとは思っていたのですが。

 今回は、手間賃を考えると商業ギルドの儲けにはならないのですが、女性たちの為ということで試験的に売り出してみようとのことです。

 もし、他領での商業ギルドの販売となった場合には輸送コストや荷造り代金などを上乗せするとのことです。

 格安なのは違いありませんので、そのへんは了承しました。

 まずは、今回、生理用ショーツを中心に買い取りを行うとのことで、それらを含め生理用ナプキンなどもあわせて全部で金貨10枚ぶん売ってみました。

 お金はその場で渡され、商業ギルドの身分証のカードを作るか否かを聞かれたのですが、まずは売れるかどうかもわからないので作らないでおくことにしました。


 売れたら考えましょう。


 数日後にまた商業ギルドに来ることを約束して別れました。

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