29話 お疲れ様
結論から言いますと。
端っこにありました小さめの青い宝石のついた指輪に決めました。
受け取らない選択をしようとしたのですが、無言の圧力をかけられました。
捨てられた仔犬のような目をしたのですよ。
卑怯です。
モブは抵抗できませんでした。
ええ、選びましたが、なにか?
モブは抗議します。
叶○妹のお姉さまも言っていますよ、グッドルッキングガイは薔薇の花一輪のプレゼントでいいようなお話をしています。
何故にクリスさんは高額なプレゼントをしようとするのか。
え?逃げるだろう?
ん?私が悪いのですか?
そういえば、女神様がなにか言ってたな。
逃げ……なんとかって言っていたような。
忘れましたね。
まぁ、いいでしょう。
青い宝石の指輪は、リングケースに入れられ私に渡されます。
これは受け取っても良かったのでしょうか。
死亡フラグがたった気がします。
「ユキ、ずっと一緒にいてね」
キュルンとした、可愛い仔犬の目をしてイケメンがすがりつきます。
くっ、可愛い。
カッコ可愛いなんて反則です。
太刀打ちできません。
「……うん」
私、不味いんじゃないでしょうか。
でも、抵抗できませんでしたし。
言い訳が頭の中をぐるぐると駆け巡ります。
自分いじめはやめましょう。
ポジティブシンキングです。
あ、帰るんですね。
良かったです。
馬車に乗って……。
お屋敷ですね。
え、お屋敷で食事とお泊まり?
いえいえ、そこまでご迷惑はかけられませんよ。
帰りますよ。
送ってください。
あ、そうだ。
中村君に渡した水筒と同じ物を買って。
うん、よし。
「これ、水筒です。保温されるので温かい飲み物が温かいままですよ、さすがに長時間は無理ですけどね」と言って渡します。
「ありがとう」
ニッコリ笑ってクリスさんが受け取ります。
アイテムボックスに仕舞われていますね。
使ってくださるといいのですが。
クリスさんに抱きしめられます。
「ユキ、目をつぶって」
目をつぶりますよ。
ん、頬になにかあたりましたね。
「目を開けて」
おお、薬師ギルド。
ちょっとした小旅行でしたね。
楽しかったです。
クリスさんが名残惜しそうに帰っていきます。
クリスさん、お疲れ様でした。
心の中でクリスさんをねぎらいます。
夕食は共にしませんでした。
そこまで親しい仲じゃないですしね。
あー、指輪。
ま、しょうがない。
部屋に戻ってデパートでサンドイッチを、スーパーでミルクティーを購入します。
今日は疲れたので簡単にすませるのです。
日課の下級ポーション作りをし、全身に浄化をします。
そして、パジャマに着替える。
ええ、パジャマや下着はスキルを得てから、早々に購入しました。
やっぱり布地も違いますしね。
熟睡度も違いますし、地球産の物はいいです。
多分この世界でもお金を出せばいいものが手に入るのでしょうが、そのお金がないんですよね。
うーん、と悩んでいると、キラキラ周囲が光ります。
女神様だー。
「いじめられたー、由紀ちゃん慰めてー」
女神様がいじめられたそうです。
慰めましょう。
でも、なんでいじめられたのでしょう。
そもそも、神々にいじめなどするような方がいるのでしょうか。
デパートでダージリン紅茶のティーバッグと洋菓子店でモンブランを二つ購入します。
ティーポットとティーセットを購入して。
「浄化」
ポットとティーセットをきれいにします。
次は、これですね。
「お湯、もらってきます」
ポットとティーバッグを持って食堂に行きます。
食堂でお湯をもらい、ポットに入れ、ティーバッグを二つ入れます。
ティーバッグは捨てるとき便利ですからね。
部屋に戻って……と。
ケーキ食べ終わってますね。
私のぶんもあったのですが。
ケーキをのせる皿もフォークも買ってなかったのですが。
皿とフォークを購入して、浄化をしたら、先ほどのモンブラン一つと、ショートケーキを再び購入して、皿の上に置いて、紅茶も淹れて……と。
「で、女神様、どうしましたか?」
うん、ショートケーキをパクついていますね。
いじめの原因を聞いているのですが、この女神様は聞いてませんね。
うん?
駄目ですよ、このモンブランは私のです。
仕方ない、追加でチョコレートケーキとフルーツのロールケーキ、イチゴのミルフィーユを購入します、太っても知りませんよ。
はい、どーぞ。
え?もっと?チーズケーキと抹茶のケーキも購入します。
「で、なんでいじめられたのですか?」
「うん、それがね、由紀ちゃんにお寿司とかもらったでしょ?あれを定期的にやれって言われたの。嫌だって言ったらいじめられたの」
「いじめは良くないですね」
うんうん、いじめはよくない。
ましてや女神様は女性ですしね。
「いじめといっても私は自分のぶんは定期的にもらうつもりだけど皆のぶんは時々でいいかなって考えてたのがバレたみたいで」
うん?自分のぶんは定期的で皆のぶんは時々にしようと思ってたんですね。
そりゃ、いじめられますね。
私だって同じことを考えられてたらキレるかもしれません。
「まぁ、仕方ないですね。私はいいですから、皆さんに定期的に持ってってあげてください」
「うん。お世話になります」
「今日はどうしますか?」
「もらって帰る。仲直りしなきゃ」
「それがいいですね。オープン」
鮮魚センターの映像を出します。
「これとこれ、あとこれも」
タコからと、タコのマリネですか。
それと特上寿司ですね。
うん?なにか見えましたよ。
あ、生牡蠣だ。
これ、私好きなんですよね。
「生牡蠣?」
「貝ですね。生で食べてもいいし、牡蠣フライなら揚げてあるものもありますし、冷凍で揚げてないものもありますよ」
「生牡蠣も欲しい。あと揚げてあるものも欲しいかな」
「生牡蠣は貝柱を外して殻を外したら裏表きちんと水洗いしてくださいね。あとムカデみたいな茶色い虫みたいなのがいるかもしれませんから気を付けて」
「虫?」
「虫みたいなやつです。私も昔驚きました。あとレモンを絞って食べてください。揚げてある牡蠣はソースをつけて……今日はどのくらい必要ですか?」
「この前と同じぐらい」
となると、20人前か。
タコからとタコのマリネを大量に、特上寿司20個、生牡蠣は一人4個として、40個、牡蠣フライは一人3個で、30個購入し、スーパーでレモンと中濃ソースを購入してスーパーの袋に入れます。
「あ、そうだ。錬金釜欲しがってたよね。持ってきたよ」
ゴージャスな錬金釜が目の前にありますよ。
神器ですよ。
ロンギヌスの槍以来ですね。
いいのでしょうか。
「いいよー、しばらく定期的な差し入れをもらうつもりだから、対価はこれね」
「一生分ですよ。これ」
「じゃあ、一生差し入れもらうー」
「わかりました。差し入れはいつでもおっしゃってください、期限なしにしますね」
「やったー」
「で、今日はお茶はどうしますか?」
「この間のペットボトルで欲しいかな。20本欲しい、今回たくさんもらったから二回に分けて食べようと思う、それと、ケーキもいくつか欲しい!おいしかったし、この紅茶も欲しい」
「わかりました。まずは、お茶ですね」
メーカー違いのお茶を二種類、各10本ずつと、ケーキは定番のショートケーキと、あとは私の好きなモンブラン、それと無難にチョコレートケーキでいいですかね、これを10個ずつ。あとは、ダージリンのティーバッグで、よし、購入。
スーパーの袋に詰めて。
ケーキは紙の箱に入っているからそのままで。
「で、私がもらう」
言いながら女神様がなんにもない空間にしまっていきます。
神ですから、時間停止なのでしょうね。
キラキラ光りながら女神様が去ってゆきます。
はー、疲れた。
でも、錬金釜が手に入って良かったです。
悩んでたんですよね。
いつかは買わなくてはいけませんでしたから。
ホッとしました。
さて、片付けて……いろいろやってと、はぁ、寝ますかね。
 




