17話 誤認逮捕
さて、今日も朝食を食べに食堂へ向かう。
いつも座っている私の席の場所に行列ができている。
何で?
ふんふん、朝食にはヨーグルトが合う、だから、朝食の時にヨーグルトの販売がある?
誤解。
悲報、朝食時にヨーグルトの販売をしなくてはならなくなった。
行列で待っている人たちに悪い。
さすがに断れない。
え?早い人は一時間も前から待っている。
さっそく、販売をはじめましょう。
スキル物々交換でバレないように、ヨーグルトを大量購入する。
アイテムボックスから出した振りをしながらヨーグルトを陳列。
行列は解消された。
ヨーグルト一つ銀貨2枚。
高いんじゃないですかね?
近くの人に聞いてみる。
ほうほう、薬師ギルドの職員は高給取り、毎日食べても問題ない。
結構なことですな。
そうなると、これから毎日販売しなきゃならないんですかね。
不安ですよ。
だって、何度確認しても原価100円。
ぼったくりの転売ヤーですよ。
バレないようにしないと。
パンとスープとヨーグルトで朝食をすませる。
買い取りカウンターで下級ポーションを買い取ってもらうと、顔馴染みになった職員のお姉さんから感謝される。
「あれ、ヨーグルトっていうの、とってもおいしかった。本来見習い部屋の無料期間は3ヶ月だったけど、上司の権限で貴方だけはその縛りが撤廃されていて、無期限無料になったからずっとこの薬師ギルドにいてね」
「……」
感謝じゃないですね。
囲いこみでした。
しかも、上司からの『報・連・相』。
いつの間に上司は動いたの?
そして、その上司って誰?
薬師ギルドのフットワークが軽い。
転売ヤーとバレないか、びくびくしながら、薬師ギルドを出る。
私は、今日、冒険者ギルドに行かなくてはならない。
恐怖の大王との対峙。
勇気を出すんだ、私よ。
早く上級ポーションを渡してすっきりしたい。
あ、冒険者ギルドが見えた。
誰かが手を振っている。
クリスさんだ。
目線は私から外れない。
よく私が来ることがわかったな。
事前に打ち合わせはしていない。
クリスさんが、冒険者ギルドの入り口にいて手を振っているのは偶然か?
これが、S級冒険者の実力?
クリスさんから逃げることなく、お会いする。
「こんにちは」
挨拶をする。
良好な人間関係は挨拶が重要。
「今日も素敵ですね」
褒められた。
あ、距離を詰めないで。
捕まった。
私、悪いスライムじゃないよ。
誤認逮捕です。
お巡りさん助けて。いや、この世界だと衛兵さんか。
ああ、クリスさんに捕まってしまった。
この人からはなかなか逃げられない。
だって、S級冒険者だから。
「昨日はオーク肉をありがとうございました」
上級ポーションを渡そうとすると、その手はサッと逃げられる。
何故?
「これを渡されたら、もう会ってはもらえないのでしょう?」
いえ、特級ポーションを渡してからですね。さすがにもらいすぎですから。
「いえ、そのようなことはありませんよ」
否定する。
モブでも、処世術はわきまえています。
会わないなんて言わない。特級ポーションを渡すまでは。
「受け取ってもいいですが、今度デートしてください」
直球。
この世界では、お礼はデートがデフォルトなのだろうか。
私、どうすればいいの。




