15話 恐怖の大王
朝がきた。
今日も頑張ろう。
昨日の金の瞳のキラキライケメンは事故だ。
そう思わなければやっていられない。
元気に朝食を食べる。
あ、ちょっと待って。
パンとスープだけだとさみしい。
こっそりヨーグルトを買う。
フルーツ入りの大きいやつだ。
ウフフ♪
おいしい。
あ、隣からの視線が痛い。
視線は、ヨーグルトに釘付けだ。
なに?
そのヨーグルトを食べさせてくれ?
小心者の私は困る。
周囲との人間関係は良好に保ちたい。
え?貴方は、この薬師ギルドの重鎮。
こそこそとヨーグルトを売る。
そして、渡す。
長いものには巻かれろ。
「どうぞ」
「ありがとう」
銀貨2枚になった。
砂糖と同じ値段。
うん、おいしそうに食べてるね。
追加で銀貨5枚がきた。
甘いとは思わなかった?
元は原価100円。
さすがに銀貨5枚は返した。
いいから取っておきなさいと言われ、再度、無理矢理渡された。
なので追加でヨーグルトを二つ渡した。
満面の笑みだった。
これで良かったのだろうか。
あ、周りから注目されている。
朝食を食べ、そそくさと、その場をあとにする。
危ないところだった、私はモブ、主役にはなれない、目立ったら多分、死ぬ。
今日も下級ポーションを売りに行く。
あ、買い取りカウンターのお姉さんが、なんか言いたそうな感じ。
え、食堂にいた?
ポーションのお金をもらって逃げようとしたが、相手のほうが上手だった。
こそこそとヨーグルトを売る。
ヨーグルト三つで銀貨6枚になった。
もはや、訳がわからない。
原価100円。
それが三つ。
お姉さんが喜んでいる。
周りの皆がヨーグルトを見ている。
とりあえず逃げた。
ポーションのお金ももらったしね。
市場に行く。
オークのお肉入荷してないかな。
肉屋に人だかり。
「オーク肉だよ。オーク肉」
やった、オーク肉。
ジュワッと肉汁おいしいオーク肉。
さっそく買おうと肉屋めがけて突き進む。
ガシッと手を掴まれる。
なに?
私の邪魔をするのは誰?
「あの……」
来たーー!
恐怖の大王、クリスさん。
モブを凍らせる恐ろしい人。
「これを、私が狩ったものですが、一番いいところです」
人の頭二つ分の大きさの肉の塊が包まれた布が渡される。
両手でないと重くて持てない。
「オーク肉です。よかったら食べてください」
そう言って私の肩を抱く。
頭脳プレイきたーー!
手が塞がっているから何も出来ない。
これが、S級冒険者の実力。
恐ろしい。
頬にチュッと軽くキスをして、いい笑顔で去られた。
私モブですよ?
そしてここは天下の往来。
イチャイチャするような場所でないですよ。
肉をアイテムボックスに仕舞い、イケメン恐ろしや、と思う。
イケメンは場所を選ばないらしい。
肉ももらったままだし、どうしようかと途方に暮れた。




