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第1話

初投稿です。

誤字脱字や不適切な箇所などありましたらご報告いただけると幸いです。


 それは、ある冬の日のことだった。


『――前日降った雪により、気温が低い朝のうちは路面が凍結しています。滑って転んだり事故を起こしたりしないように、十分お気をつけ下さい――』


 気象予報士が朝のニュース番組にてそう注意を喚起するのを聞き流してテレビの電源を切り、俺は家を出た。

 今日は全国の高校3年生の多くが大学の入学の為に同じ試験を受ける日。

 センター試験当日だ。

 昨夜の予報だと今日は雪の中試験会場に向かう羽目になるかと危惧していたのだが、どうやら杞憂だったみたいだ。


 いつもと同じ、駅への道を歩く。


 やはり、地面が凍っている。

 普通に歩くだけでも滑りそうなところもあるぐらいだ。

 家を出る時間に余裕を持たせておいて良かった。

 こんなところで転んで骨でも折ったら受験を棒に振りかねない。

 転ばないように足元に注意を払い、ゆっくりと歩を進める。


 ――後から振り返ってみて。

 俺の失敗はといえば、この時足元を気にしすぎてそれ以外に対する注意を怠ってしまったことだろうか。

 いや、しかし白線の内側を歩いていたのだから本来ならば何事も無かったのか。


 突然何を言い出したのかというと。


 この時何が起きたのか、完璧に把握しているわけではないが。

 それでも俺の手にある情報から考えると、どう考えても間違いない。

 俺は凍った路面のせいでスリップした車に背後から勢いよく追突され――気づいた時には、異国の路地裏に立っていた。




 ◆ ◆ ◆




「え……?」


 思わず呆けた声が漏れる。

 それぐらいに、俺は混乱していた。

 先ほどまで駅への道を歩いていたのだ。

 それが、けたたましいクラクションの音と共に背中に衝撃を感じ――た時には既に何の違和感もなくここにいた。


 一体、何が……?


 取り敢えず少しでも情報を得ようと周りを見回し――明らかな異常に気がつく。

 周りの建物、行き交う人……そのどれもが俺の馴染んだサイズよりも大きいのだ。

 もしかしてガリバー旅行記よろしく巨人の国にでも迷い込んだのか?


 いや……違う。

 周りが大きくなったのではない。

 俺が、縮んだのか。

 明らかにいつもと比べて地面が近い。

 自身の身体を確認する。

 大体……3歳ぐらいか。

 身体が縮むというのもおかしな話だが、それでも一瞬でいる場所が変わるという現象の前には些細なことのように思える。


 周りを見るに、俺が元いた21世紀の日本ほど文明は発展していないみたいだ。

 通行人の着ている服や近くで売っている布なんかは品質が均一ではない。

 となると産業革命前か?

 世界史には詳しくないから正確なところは分からないが、いわゆる中世ヨーロッパ風、といったところだろうか。

 しかし先ほども述べたが、この通りは随分と活気に満ちている。

 人の通りは多いし、あちらこちらから野菜やら何やらを宣伝する声が聞こえる。

 もし転移した先がこの道の真ん中だったら、あっという間に蹴飛ばされ、踏まれて状況を把握する間もなく第二の人生を終えることになっていただろう。


 さて、頭の回る人は今の言葉に何かに違和感を感じたかもしれない。


 ――そう。

 見た目は明らかにヨーロッパの人間なのに、言葉の内容が理解できるのだ。

 というか、話している言語が日本語だった。

 いや、本当に日本語かどうかは分からないが、少なくとも俺の耳にはそう聞こえている。

 生憎、読唇術やその類のものは習得していないので証明は出来ないが。

 何故こんな文化が全く違いそうなところで日本語のような言語に発展したのかはまるで分からないが、まあ都合がいいので良しとしよう。

 これで言葉も通じなかったら完全に詰んでいた。

 いや、現状でも充分詰んでいるが。


 現在俺は、何故かここの文化に合わせたものに変更してあった服を除き、驚くほどに何も持ち合わせてはいない。

 今日を生き抜くための食料や寝床ですら無いのだ。

 特に食料は喫緊の課題だ。


 今の俺は……孤児、ということになるのか。

 なら、孤児院のようなところを探せばいいのか?

 行ってみるか。




 ◆ ◆ ◆




 孤児院は、ヤバかった。

 何というかこう、アブなかった。


 あの後、近くの屋台の店主に場所を聞いて行ってみたのだ。

 孤児院は教会にあるらしい。

 個人的にはこの時点でだいぶアレだったのだ。


 もちろん宗教の有用性は分かってはいるのだが、如何せん宗教に関する大きな事件が起きた現代日本に育った俺は宗教というものにあまり良い印象を持っていない。

 信仰はあくまで自分自身の中に持つものであり、他人に押し付けるものではないというのが俺の持論なのだ。


 まあそれは良いとして、とにかく孤児を預かっているという教会に行ってみたのだ。

 すると。

 十数人のみすぼらしい子供が聖壇か何かに向かって跪き、一心不乱に何かを唱えて祈っていた。

 背筋がゾッとした。

 ここ数年で一番怖いものを見た。

 あまりの怖さに一瞬で全速力で逃げてしまった。

 ちょっとあそこにはお近づきになりたくない。


 しかし、孤児院にはいかないとするとどうするか。

 盗みは最後の手段として……何か、その日の食料を確保できる方法は無いか?


 落ちているものを漁る……流石に抵抗があるな。

 それに腹とか壊しても医者にも掛かれないだろうし、そうなると一発で死にかねない。

 昔は貧しい人なんかだと普通の風邪でも命の危険があったらしいし。

 誰かに頼んで分けてもらう……考えるまでも無いな。

 そんなことをしたら、この街にいる乞食たちが寄ってたかって食糧を「俺にも俺にも」と要求するに違いない。

 それが目に見えているから、誰も恵んでくれたりはしないだろう。

 大体、そんな方法では生活が全く安定しない。


 となると、どこかで雇ってもらうしかないか。

 その辺の屋台じゃあまず無理だろうし、職人か商人……出来れば商人の徒弟だな。

 そちらの方が俺の能力が多少は活かせる。

 とは言っても計算が出来るってだけなんだが。

 これでも理系の端くれだったので、高校の範囲の数学は微分積分まで一通りこなせる。

 理系の知識で何か作って売る、何てことは出来ないわけだが。

 というか、普通そんなことうろ覚えレベルでしか知らないと思う。


 思考が逸れたが、取り敢えず大きそうな商会に片っ端から頼み込んでみるとするか。

お読みいただき、ありがとうございました。

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