いざ!異世界へ!
目の前が白い。白しかない。
おかしい。私は猫を助けてトラックに引かれて死んだハズなのに……。未だに意識が朦朧として、ほとんど何も考えることが出来ない。
もしかしてここは天国!?
「天国!?」
「残念。練獄でしたー!」
「いや誰!?」
真横からいきなり声がして、驚いて横を見ると、
「そこには二足歩行している私が助けたはずの猫がてもみしながらこっちを見ている」
「何でニャ!?何で能面みたいな顔で状況説明してるニャ!?」
意味が解らない。これは悪質な夢なのかな。こんな訳ワカメな夢を作った私の頭を思いきり殴ってやりたい。
「あの……どうしたニャ?」
「あぁ、ちょっと逃避してるだけだから。夢よ早く覚めろ……!」
正直猫好きの私にはこんな変な猫は若干引くわー……の態度しか取れない。というかいきなり変な所に居て立って喋る猫にあって即座にツッコミを入れられるのは芸人さんでも無理じゃないかな。
「いや、夢じゃないニャよ?」
「いきなり猫が二足歩行で喋って来たら夢としか思えないんだけど?」
「ハァ……これだからゆとりの奴等はいかんニャ……。もっと対応カを身に付け無いとニャ」
やれやれといった感じで前足をプラプラさせている。なんか凄いイライラする。
「ニャ!?ちょっ!苦しいニャ!締め上げても何も出ないニャ!」
おっとっと。無意識に手が出てしまった。
こんなに可愛い黒猫を苛めるのは私のポリシーに反するからね。
「それで?夢じゃないなら一体何なの?ここはどこ?」
「うぉう。急に真面目になったニャね。とりあえず答えられる所は答えるニャよ、速水。私は神ニャ」
「あー、確かに紙だよね。あとどうして私の名前を知ってる?」
「余計な茶々を入れないでニャ!とにかく!普通はこのまま死後の世界にいってもらうつもりだったんだけど、僕を助けてくれたからニャ。速水には僕の作った世界に転生してもらうニャ」
「え!?それってつまり異世界転生ってヤツ!?」
今この猫凄い事言わなかった?異世界転生ってあの小説みたいな?
行きたい!すっごい行きたい!
「まぁそうなるニャ。どうするニャ?行きたくないニャら今から天国に送るニャよ?」
「そういえば、もとの世界に戻るのって出来るの?」
異世界転生出来るんなら日本にも戻る事って出来ないのかな?
異世界にも行ってみたいけど、未練がないとは言えないし。
「うーん……出来ない訳じゃないんニャけど……」
「ん?何か問題でもあるの?」
「ちょっと言いづらいんニャけど……トラックに引かれたせいで速水の体は……リアルスプラッタ状態なんだけど……」
「はぁ!?つまり私があっちに戻ったら……」
「苦しみに苦しみ抜いてまたここに戻ってくる羽目になるニャ。戻るニャ?」
「いや!私そんなドMじゃないから!だったら異世界に行くよ!」
実際問題選択指なんてひとつしかないじゃん。黒猫がニヤニヤしてるのがイライラするね。
「決断してくれてよかったニャよ。じゃああっちの世界の説明をさせてもらうニャよ」
うーん……正直何か騙されたような……?




