例えば流れに身を任せてみたり。
大人は嫌いだけど、この状況は少し嬉しかった。普通じゃあこんな経験は出来ないのは、始めに声を掛けて来た不運な男で直感した。こんな状況になったのならば、少しは感謝している。これがもう少しひどい状況だったら、侮蔑の目をしていただろう。まあ今でも偶にするが。
「じゃあ、予定表を渡すぞ」
和泉に連れられ、この劇場のある一室にいる。学校の教室の様にプレートには何も書かれておらず(というか掠れて読めなかった)、カビ臭くはないが埃っぽく、だが使い込まれた跡がそこらかしこにある部屋だった。まあこんなオンボロならしょうがないだろう。何となくオンボロ中学の音楽室を思い出した。まああそこよりはマシか。
「結構ボンヤリしてますね」
予定表を渡した男、先程の会場で怒鳴られていた集団の一人、彼は「海流」と名乗っていた。
まあそれはさておき榎川が言う様に、期間は半年程だが、明確に期日を決めて立てられた予定ではなかった。
「まあそこはしょうがないさ。能力によっては伸びる伸びないの差が大きいからな。程度も何も」
何となくだが、この言葉には説得力を感じる。確かに彼等は長年指導してきたという実績だけはある。そして半年という期間も、彼等なりの目標でもあるのだろうか。
「とりあえず今日は最初だし俺だけだが、次回以降は専門の奴等が対応するからな」
やはり住み分けというか、担当はしっかり決めているのか。まあそうでもなければ大人数を一度に対応出来ないだろうし。まあ感覚としては塾やら習い事に近いな。
「海流さんは何系が担当なんですか?」
落水が手を挙げて訊いた。
「俺か?俺は操作、コントロール系だな。お前等の中だったらそこの嬢ちゃんとかだな。ていうか見せた方が早いか」
そう言って彼は机に置いておいたペットボトルを持った。
「見づらいんだけど、まあそこは我慢してくれや」
その次の瞬間、ペットボトルの中の水は渦を作り出した。手を振ったり振動させてるワケでもない。
「名前の由来にもなってるんだけど、こういう感じで液体の流れを操作出来る。つっても程度は知れてるけどな」
「これって役に立ちます?」
「おう、色々掻き混ぜるのに楽だぜ。理科の授業とかで撹拌する時とか重宝されたな。懐かしい」
成程、上手く操作すれば渦も作れるから掻き混ぜに役立つと。結構羨ましいな。
「あと分かりやすく強弱が見れるからな。こういう初心者とか初見の人向けでよく呼ばれるんだわ」
確かに能力はそういうの向けだろうな。まあでもこのキャラはあんまり好きじゃないな。




