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四十六話 ツカイッパーが走りだし

 連日大量の石が運び込まれ、いつも静かな城なしの上は人で溢れて賑わっていた。


 ラビは「お耳がうるさいのです」と言い。ツバーシャは「みんな燃えてしまえばいいのに……」等と言う。


 そんな訳だから二人は人前に出てこない。


 人間大好きワンコなパタパタは、この状況に活気してはしゃぎ回りそうなものだが自重している。


「ぐふふ。見てよ城なし。人がいっぱいだよ……」


 否。


 緩みきった顔を体に埋めて、ストーカー能力【見てるよ】で、自重する事なく覗き見している。


 そんな皆のように出来れば俺も、表に立ちたくないところなんだが……。


「天使様。聖職者が是非一度お目通り願いたいと申しているのですが」


「全て断ってくれ。俺はエイラソーダ以外と言葉を交わすつもりはない」


 俺に会いたい会いたいと言う奴が後を絶えず、表に立つとはいかずとも、対応はしなければならなかった。


「主さま。ここは一つツバーシャに街を少し壊させみてはどうかの。連日これではわずらわしいのじゃ」


「申し訳ない。お恥ずかしい限りなのだが、天使様にお目通りが叶うのは、汚れなき心の持ち主であらねばならぬと周知させたところ、裏目に出て……」


「なるほどのう。逆にお目通りが叶ったものは、徳が高く優れた聖職者として箔がつくとな」


「面目無い限りだ……」


 うわぁ。なんか変なことになってる。政治になんて巻き込まれたく無いわあ。


 いや、もう巻き込まれてるのか?


「そうなると、エイラソーダは相当徳が高いことになるのか」


「教会からは、聖女などともてはやされている。王宮や貴族はそれには興味がなく、他に芸術品が無いか聞いてこいなどとふざけた事を言っていたが……」


「すまんな。しかし、俺にそれを言ってしまって良かったのか?」


「こんな国滅んでしまえばいい……!」


 何があったんだ、エイラソーダさん。聞きたいけど聞いたら不幸になりそうだから止めておこう。


 しかし、そんなエイラソーダさんの苦労の甲斐あってか着々と城が出来つつある。


 水源を囲う様にして城の登頂部が出来たと思ったら、そのままにょきにょきと伸びてきた。


 どんな作り方をしているんだ。


 更には城なし自体もじんわりと大きくなっていくので、勝手が変わって落ち着かない。


「ああそうだ。芋ヨウカンを作ったんだが食べていかないか? えーと、そこの使いっぱしりったーだったっけか? 彼も一緒に。感想を聞きたいんだ」


 二人に囲炉裏の周りに座るよう促すと、壺を台にし、芋ヨウカンを出した。


「これは見たことのない食べ物ですね。ツカイッパー!」


「はっ! 喜んでご相伴に預からせて頂きます!」


 もう少し、態度を崩してほしいけど難しいんだろうなあ。


 芋ヨウカンは蒸かしたさつま芋を裏ごしして、皆でねりねり固めて作った。砂糖なし、寒天不使用、究極無添加の一品だ。


「これは素晴らしい! 見た目は美しく、味は濃厚で、甘さが何時までもいとおしく舌に残る。ツカイッパー!」


「はっ! たいへん美味しゅうございます!」


「ツ、ツカイッパー。もう少し、こう、何かあるだろう……」


「いや、良いんだ。こうでも言わないと食べて貰えないと思っただけだし。うーん。お茶があれば良かったんだがなあ」


「こ、これは気がつかずに……。ツカイッパー!」


「ああ、違う。そうじゃない。お茶があれば良いなって、それだけの話なんだ。茶を沸かせと催促している訳じゃあない」


「ではせめて、茶葉を贈らせて頂きたい」


「いや、いいよ。ずっとここにいる訳ではないから、飲み尽くしてしまったら寂しくなる。種か苗なら良いんだけどね」


「ツカイッパー!」


「はっ、国中を探し回って絶対に種や苗を探し出して来ます!」


「えっ、ちょっ……!」


 行ってしまった。


 探せなかったら首飛ぶとかないよね!? 言葉に気を付けよう。俺の一言で誰かが死にかねないわこれ。


 ツカイッパー君。頑張っておくれ。


「さて、もう良い時間だな私もこれで下がる」


「もうそんな時間なのかご苦労様。また明日な」


 エイラソーダさんには迷惑を掛けてしまって申し訳ない。


 変な奴が俺のところに来られても困ると言うことで一日中拘束してしまっている。


 そん訳だから、芋ヨウカン出したんだけど……。ツカイッパー君にはすまないことをした。


「はー。疲れたな。早くお城完成しないかな。城があれば、勝手に後光がついてなんもせずともらしくみえそうなんだがな」


「そうじゃのう。でも、まだお掃除が残っているので休むわけにはいかぬのじゃ」


「人が通ればよごれるもんなあ。あっ、小銭落ちてる」


「主さまは大金は取らないのに小銭は拾うんじゃな」


 いや、落とし物拾っただけだし。明日エイラソーダさんに渡すし……。


 やれやれ、貧乏性が体に染み付いてんのかなあ。


 そんなことをしていると日が沈み夜になる。夜は流石に遠慮してもらったので誰も来ない。


「ふう。やっと静かになったのです」


「毎日だとこたえるよなあ」


「穴のなかにこもれば全て解決するわよ……」


「せまいと落ち着かないのです」


 ツバーシャは周りを引きこもりの世界に引き込もうとしているだろうか。


 皆引きこもるとごはん出てこなくなるぞ。


「しっかし、この干し芋は固いのう」


「なかなか、噛みきれないのれふ」


「あんたが失敗するなんて珍しいわね……」


「天日干しが失敗だったんだろうな」


 本当は干し芋をエイラソーダさんとツカイッパー君に出したかったんだがな。チップス並みに固いにも関わらず、割れたりしないでねばりっこいモノになってしまった。


 ちょっと人には出せない。


 切って蒸して干すだけにも関わらず失敗。結構たくさん作ってしまったから晩御飯がわりだ。


「でも、主さまは嬉しそうじゃな?」


「いや、こう言うのも嫌いじゃないんだ」


「あんまり美味しくない方が好きなのです?」


「負け犬の遠吠えかしら……」


 そうじゃないわ。


 失敗して文句言いつつ食べる姿も後になれば良い思い出になる。それに不味いか、不味くないかのギリギリの味や食感も悪くないもんだ。

 

 いや……。


 半分以上負け犬の遠吠えなんだが認めたくない。認めたくないないぞ。


 まあ、次はうまくやって見せるさ。

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