【07】 ひとつだけ改ざんできないものがある
丹沢「まさか!」
戸部「うん」
丹沢「そうなると、私たちは不正を暴けない。何もできないってことですか?」
戸部「うん」
丹沢「コンピュータで住民票を数えた、と言ってもですか?」
戸部「情報統計課を脅かして口封じをするだろうな」
丹沢「そんなバカな!」
早苗「絶対にやるわよ、簡単なことよ。人事権があるんだもの」
丹沢「組織って恐ろしいですね」
戸部「うん」
丹沢「じゃぁ、何も出来ないってことですね」
戸部「……」
早苗「大丈夫、奥の手があるわ」
丹沢「えっ、本当ですか?」
戸部「……」
戸部は黙っていた。
早苗「古岡さんはすべてを改ざんしたつもりかもしれないけれど、ひとつだけ数字を直せなかったものがあるわ」
丹沢「えっ!!!」
早苗「そして、それは、今後も直すことは出来ないわ」
丹沢「そんなのあるんですか?」
早苗「市報に載せた数字よ。」
丹沢「あっ、そうか。あれは全世帯に配られてますからね」
早苗「市報の中で誰も見ないような所に、毎月の『人口』と『世帯数』が小さく載ってるのよ」
丹沢「過去の数字は変えられないし、動かぬ証拠ですね」
早苗は、市報の最後のページに、前月一日現在の人口が載っているのをメモして来ていた。
早苗「1月1日95,003人、
2月1日95,032人、
3月1日94,994人、
4月1日95,182人、
5月1日95,255人、
6月1日95,286人、よ」
丹沢「そこまで調べたんですか?」
早苗「うん。そして7月1日の人口が、ロビーの表示板に発表された。それが『99,631人』。いきなり増えてるのよ」
戸部「さすが君本さんだな」
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【後書き】
本編『市長の陰謀』をお読みいただき、ありがとうございます。
本編は、地方自治体という閉ざされた組織の中で巻き起こる「数字の改ざん」をテーマにした物語です。物語の火種は、市長の「キリがいいから10万人にしたい」という、あまりにも短絡的で独り善がりな見栄でした。
その理不尽な要求が、出世を餌にした課長へ、そして保身と欲に駆られた係長、主任へと伝播していく過程は、組織における「忖度の連鎖」の恐ろしさを描き出しています。
●組織という魔物と、個人の良心
劇中で描かれるのは、特別な悪党たちの物語ではありません。
自分の地位を守りたい市長
部下の不祥事を逆手に取り、甘い言葉で不正を強いる課長
酒の席での約束と昇進を天秤にかける主任
彼らは皆、どこにでもいる「組織人」です。しかし、その小さな「自分さえ良ければ」という積み重ねが、市民を欺く大きな不正へと変貌していきます。一方で、その違和感に気づく若手職員や中堅職員たちの鋭い視点と連携は、組織の暗部に対する唯一の希望として描きました。
●「消せない証拠」の象徴
物語の終盤、早苗が指摘する「市報」という存在。デジタルデータは書き換えられても、すでに市民の手に渡った紙の記録は変えることができない。
これは、どんなに権力で事実を捻じ曲げようとしても、どこかに必ず「真実の破片」が残るという、不正に対する警鐘でもあります。
●読者の皆様へ
もし、あなたが勤める組織で、上司から「数字を少しだけいじってくれ」と言われたらどうしますか?
本作を通じて、組織の不条理さと、それに抗う個人の洞察力の重要性を感じていただければ幸いです。美浦市の人口問題がこの後どのような結末を迎えるのか、彼らの「奥の手」がどう炸裂するのか……。それはまた、別の物語になるかもしれません。
最後までお付き合いいただき、誠にありがとうございました。 m(__)m
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【作者より厚かましいお願い】
美浦市の人口は急増中ですが、こちらの作品の評価も「水増しなし」で急増させたいと願っております!
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