【01】 市長の陰謀
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【あらまし】(市長の事件エピソード)
美浦市長の黒杉十郎は、人口が約9万5千人であることが気に入らなかった。市長として「人口10万人」と言いたかったのだ。
そこで市長は住民課長を呼び出し、数字の上だけでいいから「人口10万人」にしてくれ。と頼むのだった。
課長は係長に、係長は担当者に、順番に『汚れ仕事』を頼んでいく。
さて、美浦市の人口はどうなるのか? 人口の水増しなど、実際に出来るのだろうか?
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【主な登場人物】
黒杉十郎 70歳男 美浦市長
鬼塚厳司 55歳男 美浦市役所住民課住民課長
宇野正文 40歳男 美浦市役所住民課係長
古岡人志 49歳男 美浦市役所住民課主任
丹沢純也 30歳男 美浦市役所住民課主事
戸部考一 40歳男 美浦市役所住民課主任
君本早苗 40歳女 美浦市役所住民課主任
天満稔江 37歳女 美浦市役所住民課主任
明石春菜 34歳女 美浦市役所住民課主任
若石元気 26歳男 美浦市役所住民課主事
自動車ディーラーの事務員
埼玉県庁の統計担当職員
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【前書き】
●この小説には多くの数字が出てきます。そこで読者の皆様が読み易いように横書きとなっております
●多人数での会話も多いことから、誰が話しているのか、すぐにわかるよう会話の頭に台本形式で、氏または名を付けて表現しました
●本文の推敲・校正、登場人物の整理、後書きにつきましてAIを利用しております
●この物語はフィクションです。実在の個人・団体、実際のレースとは一切関係ありません。ボートレーサーと市役所職員をモデルに、フィクションとして制作されたものです
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後日、人事課鈴木は、『職員の懲戒処分について(伺い)』の起案書を上げた。内容は、『丹沢主事、減給10分の3、3か月。鬼塚住民課長、宇野住民係長、減給10分の3、1か月』となっていた。
人事係長、課長、部長、副市長と承認し、起案書は市長に上がった。
市長黒杉十郎(くろすぎ・じゅうろう・70歳)が起案書を見て、市長室に住民課長鬼塚を電話で呼び出した。
市長「住民課長、市長室まで来てくれないか?」
住民課長「はい、今すぐ伺います」
住民課長が市長室へと向かった。
住民課長が市長室に着き、ドアをノックした。
「トントン」
市長「入れ」
部屋の中から声がした。
課長「失礼します」
課長がドアを開けて入って行った。
市長「まぁ座ってくれ」
応接用の長いソファを勧めた。そう言って市長は、ひとり用のソファに腰掛けた。
課長「失礼します」
課長が長いソファに腰掛けた。
市長「今、人口は何人だ?」
課長「9万5千人です」
市長「半端だなぁ。10万人にはいつなるんだ?」
課長「毎年500人ずつ増えていますから、このまま行けば10年後ぐらいかと」
市長「君、10年後もこの私が市長をやっていると思うかね?」
課長「はい、もちろんやられていると思います」
市長「そうか、でも10年後のことはわからん。今すぐやって欲しいんだ」
課長「えっ何をですか?」
市長「君はものわかりが悪いな。誰が君を課長にしたか知っているのかね」
課長「はい、市長のおかげです」
市長「だったらわかるだろ」
課長「……」
市長「10万人にして欲しいんだ」
課長「10万人にですか?」
市長「そうだ、私が市長として、市がいつまでも9万5千人というのは格好がつかんだろ」
課長「おっしゃるとおりでございます」
市長「市民だってそう思っていると思うよ。誰かに『美浦市の人口は?』と聞かれたときに、
『9万5千人です』と答えるのと、『10万人です』と答えるのと、どっちが答えやすい?」
課長「『10万人です』です」
市長「そうだろう。誰でもわかることだ。第一『9万5千人です』というのは、答えが長い。
『キリよく10万人です』と答えた方が言いやすいし聞こえがいいだろう」
課長「ごもっともでございます」
市長「だからだ、君にひと肌脱いでもらいたいんだよ」
課長「私にですか?」
市長「そう君にだ。君しかおらんだろう、こんなことができるのは。すぐにでも当美浦市の人口を10万人にして欲しいんだ」
課長「近隣市町村の住民に呼びかけて、美浦市へ引っ越して来るよう呼びかけるってことですか」
市長「そうじゃない。今まで10年も人口が増えなかったものが、そんなことしたって、すぐに増える訳がないだろう」
課長「はい」
市長「だからだ、数字だけ増やすんだよ、数字だけ」
課長「……」
市長「誰も美浦市に住んでいる人間をひとり、ふたり、3人って数える奴はいないだろう」
課長「……」
市長「ましてや、実際に市民全員を並べて、ひとりから10万人まで数えることなんか出来ると思うか?」
課長「いえ、絶対に無理です」
市長「なら絶対にばれないじゃないか、絶対に。単に数字上、5千人増やせば済むだけのことじゃないか」
課長「すぐにですか?」
市長「そう、すぐにだ。遅くとも2カ月以内に頼むよ」
課長「うーん、2カ月以内に5千人ですか?」
市長「そうだ。」
課長「……」
住民課長の返事がなかった。
市長「今、こういう起案書が回って来たんだ」
市長は『職員の懲戒処分について(伺い)』の起案書を住民課長に見せた。
市長「内容は『丹沢主事、減給10分の3、3か月。住民課長、住民係長、10分の3、1か月』と、なっているが、私は、住民課長が減給10分の3、1か月の懲戒処分は必要ないと考えているんだ」
課長「えっ?」
市長「部下のやったことをいちいち責任取っていたら、管理職の給料がなくなっちゃうのと違うかね」
課長「ええ、まぁ……」
住民課長が返事をした。
市長「それよりなにより、懲戒処分を受けると、今後、君の出世が遠のくよ」
課長「はい、残念ではありますが」
市長「ところで、君は課長職が長いんだっけ?」
課長「はい、課長になってもうすぐ4年になります」
市長「そうか、じゃぁそろそろ次長になってもいいんじゃないのかな?」
課長「次長?」
市長「そうだよ、次長にならなければ、その次の部長にはなれないからな」
課長「部長ですか」
住民課長の口元がゆるんだ。
市長「私は、君の能力を高く評価しているんだ」
課長「ありがとうございます」
市長「職員はみんな、出世するために働いているんだろう?」
課長「ええ、まぁ」
市長「だから、こんな懲戒処分なんかで、課長のまま定年を迎えさせたくないんだよ」
課長「課長止まりですか?」
市長「そこでだなぁ、優秀な君だからこそこうやって私が頼むんだ、人口10万人の件、ひとつ頼むよ!」
市長は立ち上がり、住民課長に近づき後押しするように住民課長の背中を叩いた。
課長「わかりました。頑張ります」
市長「そうか、良かった!」




