第3話:vsガリウス
「ガリウス! ぶちのめしてしまえ! 絶対だぞ! わかったな!?」
見学席から大声でガリウスに声をかけるリカルド。
リカルドが声をかけたことにより、試験会場はざわざわとし始めた。
「あのお方がガリウスか!」
「サンプドワール家の跡取りでありながら、『剣豪』を授かった天才!」
「見た目まで凛々しく格好良いですわ♡」
どうやら、ガリウスが職業『剣豪』を引き当てたことは噂になっていたらしく、かなり期待されているようだ。
俺を応援する者は誰もいない。
完全アウェイの環境で決闘をすることとなった。
「父上が抽選結果を調整したらしい。悪いがアニキ、容赦はしねーぞ」
なるほど、たまたまこの組み合わせになっのだと思ったが、よく考えればそんな偶然が都合よくあるわけないな。
この世界の貴族は冒険者を経ていることが多い。そこそこ名のある貴族ということもあり試験の組み合わせを操作する程度の影響力はあったということか。
「情報サンキュー。けど、昨日の俺とは別人だぞ? そう簡単に勝てると思うなよ?」
そう言ってから、俺はスキルツリーを開いた。
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◇スキルツリー
・習得済み
『火球』:Lv.2
『水球』:Lv.1
『風球』:Lv.2
『地球』:Lv.1
『聖球』:Lv.1
『闇球』:Lv.1
『魔力探知』:Lv.1
『隠密』:Lv.1
『スキル再使用時間短縮』:Lv.1
『スキル発動速度上昇』:Lv.1
『火属性強化』:Lv.1
『水属性強化』:Lv.1
『地属性強化』:Lv.1
『風属性強化』:Lv.1
『聖属性強化』:Lv.1
『闇属性強化』:Lv.1
・レベル2で習得可能
『スティール』:条件なし
『視力強化』:条件なし
『焦点補正』:条件なし
『初級ヒール』:条件なし
・レベル3で習得可能
『剣技』:条件なし
『盾技』:条件なし
『槍技』:条件なし
『棒技』:条件なし
『杖技』:条件なし
・レベル4で習得可能
『分解』:条件なし
『合成』:条件なし
『生産』:条件なし
・レベル5で習得可能
『踏み込み強化』:条件なし
『威嚇』:条件なし
『二刀流』:条件なし
『スキルコピー』:条件なし
『魔力共有』:条件なし
・レベル6で習得可能
・レベル8で習得可能
・レベル10で習得可能
・レベル12で習得可能
・レベル14で習得可能
………
……
…
――――――――――――――――――――
かなり覚えられるスキルが増えているが、今回はまだ新しいスキルは習得しない。
現在の残スキルポイントは30。これを最も有効に使えるのは、各属性強化だ。
合計12ポイントを消費して、『火属性強化』、『水属性強化』、『地属性強化』、『風属性強化』、『聖属性強化』、『闇属性強化』の6スキルをすべてレベル2に。
すると――
――――――――――――――――――――
条件を達成しました。
▼以下のスキルを融合できます。
『火属性強化』Lv.2
『水属性強化』Lv.2
『地属性強化』Lv.2
『風属性強化』Lv.2
『聖属性強化』Lv.2
『闇属性強化』Lv.2
[開始する]/[キャンセル]
――――――――――――――――――――
迷わず『開始する』を選択する。
――――――――――――――――――――
『全属性強化』を獲得しました!
――――――――――――――――――――
よし、狙い通りだ。
実は、各属性の強化スキルをレベル2以上に合わせることで『全属性強化』という新たなスキルを獲得できる。
『全属性強化』に進化することでスキルレベルは1になるが、スキルポイント2を消費することでスキルレベル2にできるし、スキルポイント3を消費することでスキルレベル3になる。
俺は、30ポイントで上げられる限界までスキルレベルを上げることにした。
結果、『全属性強化 Lv.6』になった。
二次試験で使った『風火球』による属性効果アップと合わせて、これまでとは比べ物にならないほど強くなったはずだ。
もはやステータスにより生じる差は僅かでしかない。
「では、決闘を始めてください!」
ギルド職員の合図で決闘が始まる。
先制攻撃を仕掛けたいところだが、今のスキルは攻撃力に特化してしまっている。『剣豪』のステータスなら攻撃を避けられてしまうかもしれない。
どれだけ強い攻撃でも避けられてしまえば意味をなさないので、確実に当てられるタイミングを狙う。
しかし、チャンスがやってくるまで『剣豪』からの攻撃を耐えられるのか?
これに関しては全く問題ない。
俺の攻撃が当たらなければ意味をなさないように、ガリウスの攻撃だって当たらなければどうということはないからだ。
すべて避ければいい。
「おらあっ!」
ガリウスが剣を大きく振って攻撃を仕掛けてくる。
だが、俺の目にはその剣筋が手に取るようにわかる。
ゲームの『覇王祭』で世界中のトッププレイヤーたちとついこの間まで戦っていたのだ。型すらできていない初心者の剣など何も怖くない。
俺は、最小限の労力で次々と攻撃を躱していく。
「なっ……当たらねえっ!?」
ガリウスはまさかの事態に焦っているようだ。
とはいえ、まだこの時点ではガリウスにとっては脅威とまでは言えない。
「いくら避けたって意味ねーぞ! 一撃当たりさえすりゃあノックアウトだ!」
冷静さを失い、大きく剣を振った瞬間を俺は見逃さなかった。
今だ!
俺は大きく振られた剣を避け、ガリウスの背後に回り込む。
そして、『風火球』!
ドゴオオオオオオオオンンンッッ!!
轟音を立て、ガリウスの身体が吹っ飛んでいく。
「うがあああああああっっ!」
まともに当てると殺しかねないので掠った程度のはずなのだが、それでもかなりのダメージになったようだ。
着地した頃には、気を失いピクピクとしているガリウスの姿があった。
「決闘とはいえ、痛い思いをさせて悪かったな」
聞こえていないとは思うが、そっと声をかける。
直撃はさすがに避けたが、出力を下げて確実に勝てたといえるほど余裕のある戦いではなかった。
こうなったのは、ガリウスが悪いわけではないのだ。むしろガリウスも被害者でしかない。
組み合わせを弄ってまで俺と戦わせた、リカルドが悪い。
「そ、そんな……い、意味がわからん……な、何が起こったというのだ……」
見学席で立って応援していたリカルドは信じられないものを見たとでも言いたげに呆然としていたのだった。