第2話:認定試験
◇
イートンタウンに戻ってきた俺が向かったのは、冒険者ギルド。
ここもゲームのグラフィックと同じ間取りになっている。
入って左手には大量の依頼書が貼られた掲示板エリア。右手には冒険者がミーティングを行う会議用のエリア。
螺旋階段を上った先の上階で依頼の受発注や登録などの手続き関係を行っている。
冒険者になるために何らかの資格が要るわけではないが、冒険者ギルドの認定冒険者になれば、依頼を斡旋してもらえるようになる。依頼を達成すれば報酬がもらえるので、戦利品とは別に収入を確保できる。
ただし、認定冒険者になるには既定の試験をクリアすることでギルドに実力を認めてもらうことが条件になる。
螺旋階段を上った先の窓口で、俺は認定冒険者になりたい旨を伝えた。
「明日の試験を受けられるということでよろしいですね?」
「ああ」
「では。こちらの書類に必要事項を書き込んでいただき、明日9時にお越しください」
ギルド職員から書類を受け取る。
書類には名前と神から授かった職業を記入する欄がある程度のシンプルな形式なので、準備自体はすぐできそうだ。
認定試験は一週間ごとに行われているらしい。
前日に申し込みが必要なので、さっそく明日受けられるのはラッキーだった。
◇
翌日の朝九時。
俺はギルド職員に指示された通り、書類持参の上で冒険者ギルドにやってきた。
宿代と朝食代で所持金の5000ジュエルは吹っ飛んだので、できれば今日合格しておきたいが、さてどうなるか……。
「では、一次試験として魔力検査を行います。こちらへ」
「ああ」
ギルド職員に連れられて別室へ。
部屋の中には、水晶が置かれている。教会で見たものよりも大きい。
「こちらの水晶に触れていただくと、魔力量を感知して量に応じて輝きます」
ギルド職員が右手で水晶に触れると、確かにボンヤリと青白く発光した。
「どのくらいで合格なんだ?」
「一次試験の合格最低ラインは私程度でも問題ありませんが、これで認定試験に合格できるかというと……まあ、無理でしょうね」
なるほど。
『遊び人』はステータスが低い。
魔力量も含めたすべてのステータスが低いため、レベル5に上がったとはいえ合格ラインに届いているかやや心配だな。
スキルの効果によりデメリットは打ち消せるが、魔力量で足切りされてしまうと詰みだ。レベルをもっと上げて出直すしかない。
俺は、少しドキドキしながら右手で水晶に触れた。
すると、ほんの少しだけボンヤリと輝いた。
「どうだ?」
「ううーん……一応輝いてはいますが……まあ、合格としておきましょう」
ギルド職員の反応的に、かなり魔力量は低いとみてよさそうだな。
まあ、足切りさえ合格できれば後はどうにでもなるはずだ。ひとまず安心できた。
「それにしても、これで合格できるんだな。意外と緩いのか?」
「いえ……本当は通しちゃいけないんですけど、ユートさんは一度目の受験なので良い思い出になればいいなと……あっ、まだ不合格と決まったわけではありませんが!」
それは暗に不合格と言っているようなものだぞ……。
まあ、温情でもなんでも二次試験に進めることには変わらないのでありがたい配慮なのだが。
「で、では次は的当ての試験を行いますのでこちらへ」
「……ああ」
ギルドの建物内から出て、裏庭にやってきた。
裏庭には、俺とギルド職員の他には誰もいない。
「では、二次試験の説明をしますね」
ギルド職員が設置されているカカシの方へ歩いていき、カカシの頭を指差した。
「剣と魔法で試験内容がやや異なります。どちらもカカシを攻撃するという点は共通ですが、剣の場合には攻撃力と正確性を同等に評価します。魔法の場合には攻撃力よりも正確性を重視します。当たらなければ意味がありませんからね」
なるほど、剣は目標と近いので当てるのは当たり前。魔法の場合にはコントロール重視ということか。
「合格基準は?」
「このカカシの強度はFランクの冒険者が受けられる魔物と同じ強度に設定されています。そのため、このカカシを破壊できれば合格ということになります。自由な魔法を使っていただいて構いません」
「なるほど」
俺はカカシの前まで足を運び、コンコンと叩いてみる。
これならいけそうだ。
「よし、準備オーケーだ」
「では、初めてください」
俺は5メートル下がった位置から魔法の準備を始める。
使う魔法は『風火球』。
『火球』と『風球』の混合魔法だ。
この世界の属性は『火』『水』『地』『風』『聖』『闇』の全六属性がある。
そして、属性には、相性というものがある。
火は水に弱く、水は地に弱く、地は風に弱く、風は火に弱く、聖と闇は互いに弱い。
ただし、属性の特性はこれだけじゃない。火と風、水と地、聖と闇は組み合わせることで飛躍的に効果が高まるのだ。
なお、『風火球』という魔法はスキルとしては存在しないのだが、理論的には実現可能。プレイヤースキルが要求される難しい魔法だが、俺なら問題なく使える。
俺は、魔力を練り、『火球』と『風球』を丁寧に組み立てる。
そして、カカシに向かって放った。
ドゴオオオオオオオオオオンンッッッ!!
『風火球』は一瞬でカカシに衝突し、やや遅れて轟音が鳴り響いた。
カカシは跡形もなく消滅し、周りは完全に燃え尽きて更地になっている。
この威力と精度なら、同じレベル帯の他の冒険者と比較してもかなり強いはずだ。
合格は間違いない。
そう思ったのですが――
「な、なんですかこれは!?」
と、口を大きく開けて驚いているギルド職員。
「ま、まさか……弱すぎたか?」
この世界はゲームとは微妙に違っている。
そういえば、ガリウスは最初から『剣豪』の職を授かっていた。それが普通なのだとしたら、レベル5の『遊び人』程度では本気を出しても弱いのかもしれない。
――と思いヒヤッとしたのだが。
「そ、そんなわけありませんよ!? 強すぎるという意味です!! ど、どうしてあの魔力量でこんな魔法が!? 意味がわかりません!」
どうやら、俺が危惧したのとは逆に驚きだったようだ。良かった。
「まあ、色々と工夫すればこれくらいはできるんだ。それより、合否は?」
「も、もちろん文句なしの合格です……!」
良かった……。
俺はほっと胸を撫でおろしたのだった。
◇
あれから三時間後。
午後から二次試験と同じ裏庭で三次試験が行われることとなった。
三次試験は他の認定試験志望者も集まってきている。
数は三十人ほど。
その中には、俺の弟いうことになっているガリウスの姿もあった。
この試験は誰でも見学できるようになっているらしく、見学席にはリカルドの姿もある。
正直顔を合わせたくないのだが……まあ、それは向こうも同じか。
気にしないことにしよう。
「三次試験は、一対一の決闘となります。抽選により決められた冒険者同士で戦い、勝利した冒険者一方のみが最終試験に進むことができます」
なかなか残酷な試験だが、確かに合理的ではあるな。
二次試験までの内容では戦闘力を見られていた。しかし、実際の戦いでその能力を出し切れるかという側面はわからない。
度胸や落ち着き、柔軟な思考などを試す意味では決闘はもってこいの試験なのかもしれない。
「では、組み合わせを発表します。では、一組目を。ガリウス・サンプドワールさんの対戦相手は、ユート・エンドウさんになりました!」
え……?
三十人もいるのに、なんでよりにもよってこいつと当たるんだよ!?




