表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
公女殿下の影武者  作者: もののめ明
皇太子殿下と影武者

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

21/47

2-6

 三日目も波乱に飛んだ一日になるかと思われたが、この日は順調に始まった。


 午前中は昨日と同じく、テオドルフとロルフは厩へ。午後、公都観光は止めて楽士でも呼ぶとラウラは言ったのだが、リナ曰く、公都から南街道へはベント国との交易増加で道がかなり整備されている、更に公都から少し先の村では緋恋花が咲き始めて見頃だと勧めたことから、そこへ行くことに決まった。


 緋恋花は、血液の流れを良くする効果があり、胃腸の調子を整えるお茶になる。咲き始めは薄い桃色、やがて目にも鮮やかな緋色に変わる。一面、真っ赤になった花畑はきっと壮観なことだろう。自分も同行したい……とヴァレンティナは恨めしい気分でアルラ(リナ)を見つめるのだった。


 ちなみに、本日、馬車に同乗したのはラウラではなくベルタだ。

 ラウラの連日の疲労を慮っての代理だろうが、間に挟まれるアルラの神経が心配になるところである。


 なお、今日もロルフは同行せず、公国側の護衛でジェイが付いている。ようやく離宮を離れての任務に、ジェイは大いに張り切っているようだ。

「殿下と護衛が一緒ではないのはどうかと…」とエッカルトがぶつぶつ文句を言っていたが、テオドルフはどこ吹く風といった様子であった。


 ―――二日目の公都観光も、予定より遅い戻りとなった。また何か問題が発生したのでは?とラウラが気を揉む。

 しかし、夕刻近くに戻ってきたアルラとベルタは笑顔だった。


(ベルタが……笑顔………!?)


 信じられない現象を目にして、ヴァレンティナだけでなくラウラやコンラートも慄く。


「一面の花畑は、心癒される美しい光景でした。とても良い時間をありがとうございました」


 同じく笑顔のテオドルフに、二人は顔を赤らめて「こちらこそ、楽しい時間でした」などと答えている。

 どうやら行った先の景色が素晴らしくて、帰るのが遅くなったらしい。

 だが、それだけでベルタが笑顔になるはずがない。これはきっとテオドルフ効果だろう。キラキラ皇子、恐るべしである。






 昨日から離宮の浴室利用を始めたが、ここでもヴァレンティナ、リナ、グレッチェンの三人は一緒に入っている。

 着替えを手伝ってくれているリリーの前では、先ほどからリナがえぐえぐと泣いていた。


「うえ~ん、旦那以外、絶対ココロ動かされないって誓ったのにぃぃ」

「いいじゃない、少しヨロめくくらい。皇子さま、美形だもの」

「美形じゃなくて、あれは魔物よう。フェルス、ごめんね!でもあたし、あなた一筋だから!!!もう、ヨロめきません!」

「旦那、嫉妬深いの?」

「ううん。あたしが嫉妬深いの。旦那が他の女を目で追いかけたら許さないもん」

「あんまり狭量だと、愛想を尽かされるわよー」


 リナの相手をしながら、グレッチェンが苦笑する。どちらが年上か、これでは分からない。

 リリーは、その横で興味津々だ。

 “影武者”の本分(?)をすっかり忘れた、このぐだぐだ状況をベルタが知ったら、きっと大激怒である。


「アルラ様の旦那様は、美形なんですか?」

「そんなわけ、ないじゃない。あんな美形、そうそう転がってないわよ。でもまあ……うちの旦那は、男前ね。ぐっと力強く男らしい眉とか、がっしりした顎の線とか、ステキなの~。二の腕も逞しくて、うっとりしちゃう!ただ、皇子さまみたいにオンナ心くすぐる褒め上手じゃないのよねー、口下手だし無愛想なのが残念かなあ。あ、でも、そーゆー無駄口がないところも、またカッコイイってゆーか」

「ノロケすぎ!」


 途中からグレッチェンは笑い出し、リナの背中をぱしんと叩いた。叩かれたリナは舌を出す。


「ごっめーん、つい愛が溢れちゃって」

「なーにが愛よ。……ま、皇子さまにがっつり心奪われなくて良かったけど?そんなことになったら、目も当てられないわ」

「うん、そこらへんはね、危ないって分かってるからね。皇子さまのお世辞も笑顔も演出だと思って、本気で受けないよう、壁を作ってる。作ってるのに……がんがん破壊するんだもん。すごいわ皇子」


 心底、感心した調子でリナは息を吐いた。

 よしよし、よく頑張ったとグレッチェンが頭を撫でる。

 グレッチェンさま~!としなだれかかったリナを見ながら、ヴァレンティナは首を傾げた。


「女官長も笑顔だったじゃん?皇子、何やったの?」


 きっと、ラウラやコンラートも道中に何があったか聞きたいに違いない。ベルタ帰還時の全員の驚愕ぶりは、伝説になってもいいくらいだ。


「うーん、最初は女官長もことあるごとに嫌みを挟んでいたんだけど、それ全部、優しく受け止めるし、笑顔を絶対に崩さなかったのね。で、皇子の話は悔しいことに面白いし、こっちの話もすごく上手に聞いてくれる。そのうえ、馬車を下りるときは女官長相手でも王女さま待遇……」

「きゃ~、それ、わたしもしてもらいたいです~!」


 リリーが目を輝かせて身もだえする。でしょ?でしょ?とリナは頷いた。


「うわー、ケリーもそういうの憧れるって言ってたなー。女官長もああ見えて、やっぱ女なんだ」


 一方、非常に失礼な感想を述べたヴァレンティナに、リリーはふるふると首を振った。


「ベルタさまは、七つ年下の旦那さまがいらっしゃいますよ。夫婦仲は良いし、旦那さまいわく、とっても家庭的で優しい奥様なんですって」

「えーーー?!」

 ベルタ笑顔事件よりも、こっちの件の方が衝撃かも知れない。

 ヴァレンティナ・リナ・グレッチェンは場所を忘れ、離宮中が震えそうな叫びを思わず漏らしてしまった……。

今日は夕方にもう1話、UPします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ