第110話 やっぱり金鉱山は夢があるらしい
「鉱山開発はどうですか、エミリーさん」
「ジュートさん。おかげさまで順調よ。まだ一週間なのに、鉄石が3つの箇所で見つかっているわ」
鉄石というのは、鉄の元になる鉱石だ。
錬金術を使うと石と鉄に分離することができる。
もっとも普通は製鉄炉で鉄にする。
「なにか予報が必要なことはないですか?」
「そうね。ガルス監督によると、3つのうち、最低ひとつは鉄鉱山として有望になると言ってるの」
「それなら、予報も必要ないですね」
「だけど……せっかくだから、もっと上を目指したいの」
ん?
どういうことかな。
鉄が出れば鉱山として十分投資を回収できるってガルス監督は言っていたけど。
「一番狙いは、金ね。金鉱山をみつけたいの」
「金ですか!」
確かに鉱山開発と言えば、金鉱山が一番儲かるのは確かだ。
しかし、金鉱山が見つかる可能性は鉄鉱山より、ずっと低いんじゃないのか?
「だから、予報よ。大分、試験採掘は進んでいるから、鉄以外の鉱山も見つけられるんじゃないかなと思っているの」
それはどうなんだろう。
鉱山開発の素人の僕には全然、分からないことだ。
「ミリーちゃん。どう思う?」
全然分からないことは、ミリーちゃんのテンプレスキルの方が当たりやすいんじゃないか。
今、金鉱山が見つかりますか?と聞いても、見つかると答えが返るか微妙だ。
「うーん。鉄が出たからと言って金が出るとは限らないの」
「それは分かってるわ。だけど、可能性はあるわよね」
ミリーちゃんは考えている。
だけど、何かに気づいたみたいで僕に質問してきた。
「ジュートさん。鉄鉱山で利益を出してから金鉱山を探すのと、今、探すのとどっちの方が可能性があるかしら?」
《キン・コン・カン・コーン♪》
「鉄鉱山の利益が出てからの方の方が可能性があがるでしょう」
「やっぱりなのー」
エミリーさん、考えているみたいだな。
どうしても、今、金鉱脈を探させるのかな。
「そうね。どうもあせりすぎていたみたい。せっかく遺産が金貨5000枚もあるんだから、もっと大規模にしたらどうかなって」
「ですよね。気持ちは分かりますが、一歩一歩進んだ方が可能性はあがりますよ」
僕はどうしても慎重派だからな。
レンガ積みは向いていると思うけど、ギャンブルに近い鉱山開発には向いていないだろう。
「でもね。もしかしたら何か情報があったら、金鉱山が見つかる可能性が上がるんじゃないかしら」
「情報? まさか、また情報屋を使うというというんじゃないですよね」
「あの情報屋ね。インチキ情報だと困るわね」
情報って言うと、どうしてもあの情報屋のイメージしかない。
それはジェイミーの件で凝りているんじゃないのかな。
「情報屋以外のとこから情報って手に入らないかしら。予報してくれる?」
「えっと……はい。僕が考えてもわかりませんから、質問してくださいな」
「それじゃ、いくわよ。情報屋以外から、金鉱脈のための情報は得られますか?」
《キン・コン・カン・コーン♪》
「この街では情報屋以外からの情報は役立たないでしょう」
「そうよね。やっぱり、無理かしら」
「ちょっと待ってほしいのー」
「なんだい、ミリーちゃん」
「わたしも予報してもらっていいかなー」
「もちろんよ! 思いついたことがあったら質問してね」
ミリーちゃん。
予報の許可はもらったけど、すぐには質問してこない。
どう聞いたらいいのか、考えているみたいだ。
そして、やっとまとまったみたいで、質問してきた。
「情報屋をうまく使って、金鉱山発見の可能性を上げる方法はありますか?」
《キン・コン・カン・コーン♪》
「あるでしょう」
「わーい。やっぱり!」
「どうこうことですか? ミリーちゃん」
「さっき、情報屋以外は無理って予報だったから、情報屋の可能性はあるのかなって」
「だけど、ジェイミーはもう駄目よ。あの優男は信じられないわ」
「うん。あいつは駄目ね」
そうか、ジェイミー以外の情報屋なら可能性があるのか?
「それじゃ、予報もうひとつお願い」
なにか、エミリーが思いついたみたいだ。
「もちろんです」
「金貨1000枚で依頼したら、金鉱山の良い情報は手に入るかしら?」
《キン・コン・カン・コーン♪》
「手に入るでしょう」
なんと。
いきなり金貨1000枚か。
レンガ屋だと金貨1枚稼ぐには20日掛かる。
金貨1000枚だと2万日……50年以上も掛かってしまう。
そんな金額を情報を得るだけに使うエミリーさん。
とんでもないギャンブラーだなー。




