↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
16/24

生きていた

舞踏会が終わり、王都は

王太子ヴァレンとユミア伯爵令嬢の話で持ち切りの中


ルイナ公爵邸の執務室だけは静まり返っていた。

重厚な執務室の中

互いに目を合わせながら座っているのは

ルイナ公爵そしてユリアス。


暖炉の日が静かに揺れている、

パチパチと音が聞こえ微かに木の香りが広がる。


しばらく沈黙が続いた後、公爵が口を開いた。

「…ユリアス殿下。」

「心より感謝致します。」

深々と頭を下げ感謝の意を表する公爵に

ユリアスは少し首を横に振る。

「礼を言われることはありません。」

「私はただ、真実を明らかにしただけです。」

そう言うユリアスに対して今度は公爵が

少し首を横に振る。

「それでもです。」

「殿下は、娘の名誉を取り戻してくださいました。」

その言葉には父親としての

感情が滲み出ているのを感じた。

「彼女は…とても優しい人でした。」

「そんな彼女の優しさを踏みにじり、追い詰めた奴らを

許すことができなかったんです。」

部屋に再び沈黙が落ちる。

公爵は一瞬、目を伏せた後ユリアスに視線を向ける。

そしてゆっくりと口にした。

「でしたら…」

「ある真実をお教え致します。」

ユリアスは顔をあげる。

公爵は真っ直ぐとユリアスを見ながら告げた。

「娘は死んでおりません。」

その瞬間、ユリアスは何らかの

衝撃が走ったかのように目を見開いた。

「今…何と?」

公爵は落ち着いた声で続けた。

「あれは偽装工作です。」

「あの子は追い詰められていた。」

「自殺をしようとした程に。」

「そんなあの子を解放させるために

死んだことにしました。」

ユリアスは勢いよく立ち上がる。

「生きているんですか…?エレンシアは…」

その声は震えており、

瞳からは涙が流れそうになっている。

公爵はゆっくりと頷いた。

「はい。」

「国境近くの孤児院におります。」

ユリアスの胸が強く高鳴る。

「…会えるのですか?」

恐る恐る問いかけるユリアスに

公爵は少し考えた後

「会うかどうかは…あの子次第です。」

ユリアスはほっと息を吐いてから口にする。

瞳からは覚悟がはっきりと現れていた。

「…構いません」

「生きているのであれば…。」

「私は…嬉しいです。」

その瞳を読み取り、公爵は静かに問いかける。

「殿下は…、」

「あの子を想っていますか?」

その言葉に、ユリアスは躊躇せず。

「はい。ずっと。」

嘘偽りがないことを読み取り公爵は。

「では…会わせて差し上げます。」

ユリアスは顔を上げ、嬉しそうな表情をする。

「しかし、忠告させていただきます。」

「今のあの子は、

あなたの知るあの子ではありません。」

「心が壊れかけている。」

「感情を上手く出すことができない状態です。」

その言葉にユリアスの瞳が僅かながらにも揺れる。

公爵は続ける。

「それでもお会いになりますか?」

その言葉に、迷いはなく

淡々と告げた。

「それでも」

「会いたい彼女に。」

「彼女が再び笑えるように」

「私が隣で支えたい。」

公爵はその言葉を聞いて目を閉じる。

そして小さく口にした。

「…分かりました。」

「会わせて差し上げます。」


その夜、

止まっていた運命が静かに動き始めた。

読んでいただきありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。