61話 開戦前
〜魔王が最深部に降りてから2日後 作戦会議室〜
「今日も魔王の被害は0か…やはり諦めたと見るべきか。」
「そうでしょうね。兵士達の覚悟のお陰です。」
「そうだな…これで次の段階へと行ける。」
作戦開始当初は、魔王の居場所が掴めずにいた。
しかし、マリン大森林で爆弾が起動したことから、魔王の居場所を掴む。そしてその日から昼夜問わず、広大なマゾン大森林を監視し続けていた。
つまりまだ魔王はマゾン大森林に潜んでいることになる。
また、2回目の侵攻のように地下から逃げられることもない。実は、魔王の存在が確認されてから、紅人達が”破壊”の魔術を使って広大なマゾン大森林を孤島にするように地面を破壊していた。また、その渓谷も隅々まで監視している。この状況で、マゾン大森林からひっそりと抜け出せる者などいない。
つまり、魔王はここから出られないというわけだ。
「守りに徹するのは終わりだ。今度はこっちから攻め込んでやる!
可能な限りの兵士をマゾン大森林へと集結させろ!」
これは当初から考えていた作戦だ。
魔王は絶対に逃してはいけない。そのために、まずは魔王の戦力となる魔獣の元になる動物を減らしつつ、魔王に襲われることで魔王の居場所を特定する。そして、マゾン大森林だと特定してからは、約2日もかけて、そこを孤立させる。魔王を絶対に逃さないように。
今、全ての準備は整った。
あとは、包囲しつつ攻め入るだけだ。
そしてその翌日、マゾン大森林の周囲には兵士の大群ができていた。
マゾン大森林の周囲には、巨大な渓谷が出来ているのだが、巨大な橋が6つ創られているので、それを使って入ることができる。そしてその6つの橋それぞれに、兵士が1万ずつ配置されている。本来ならもう少し数を増やすこともできたのだが、荒んだ世の中のため街の警備にも人員を割かざるを得なかった。
とはいえ、紅人3万、白人3万の計6万人だ。
対して、魔王の勢力は1000匹にも満たない。もちろん、その分魔獣化魔人化しているため個の力は決して侮れないが…
集まった兵士の中には、ドルタ、ソニア、ザキ、マルクのレッドスター4人だけでなく、メルタとラキ、アドラ、ハニカ、クラーラなど、優秀なハイルーツ校生徒の姿もあった。
しかし、レッドスターのゼルはリッキー平野の任務についたままだ。理由としては、ゼルがリッキー平野から離れてしまうと、また紛争が活発になり、大量の犠牲者を生む可能性があるからだ。魔王を討伐しても、民間人が無事でなければ意味がない。
それと、混血のゼルが参戦してしまったら、兵士たちに混乱を招く恐れがあったからだ。兵士の多くはゼルを認めつつあるが、それでもまだ頑なにゼルを憎み続けていたり、懐疑的に思っている兵士は一定数存在する。そういった兵士がいるため、ゼルの参戦は必ずしもプラスになるとは限らない、と判断された。
それと反ゼル派の兵士達を多く参戦させることで、その代わりにアドラ達が参戦している以上手薄になってしまっているライカ達の護衛を親ゼル派の兵士達に任している。
要約すると、準備万端ということだ。
「魔王側は動きを見せませんね。
我々が包囲していることに気づいていないのでしょうか?」
ドルタの側近が、じっと森を見つめているドルタに言う。
「さあどうだろうな。だが今まで我々を欺いてきた魔王のことだ。何か対策をとっていても不思議ではない。
とにかく、用心は怠らないことだな。一瞬たりとも油断はするな。今日で必ず魔王を討ち取るんだ。」
「はっ!」
〜マゾン大森林 最深部〜
「ノア様!!!」
魔人の1人が急いで、ノアのいる最深部へと降りてきた。ノアは約3日も最深部に籠っていたのだ。
「どうした? 要件はなんだ?」
「に、人間共が、この森一帯を包囲しています!
今にも攻めてきそうです!
早くお逃げください! 我々が道を切り開いて見せます!」
ノアは少し驚いた顔を見せたが、その直後にニヤリと笑う。
「そうか、それは丁度良い。」
「…丁度良いとは?」
「丁度、俺の準備も整ったところだ。
人間共を迎え撃つぞ。」
「準備とは…?」
「まあ見ておけ。
それより、人間共が攻めてきたら俺が一発かましてやるから、そのあとすぐに攻め込める準備をしておけ。」
「はっ!」
配下の魔人が去ったのを確認して、魔王はさき程まで自分が準備していたものに触れる。
「ふっ、これで人間共は壊滅だ。
長い戦いだったが…今日で決着を付けてやる!」




