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第97話 最後の戦い②

本日16時からもう一話投稿します。

よろしくお願いします。

 司たちを乗せるエレベーターは新たなるフロアに到着し、ひしひしと危険を感じながら歩く三人。

 円と由乃は離れて司について行き、司は剣を片手に周囲を警戒しながら広々とした空間を前方へと進んでいた。


「…………」


 何が起こるか分からない。

 不安と恐怖心を抱きながら歩く司。

 その時である。


「あ」

「「え?」」


 司が短く驚きの声を上げ、それに反応する円と由乃。

 なんと司の目の前の空間が歪みだし、巨大な生物が現れる。


「い、いきなり現れましたね」

「出逢いはいつも突然」

「こんな出逢い、したくねえよ!」


 それは顔が三つあり、腕は六本ある白い化け物。

 正面はナメクジ、左側面はカエル、右側面の顔は蛇である。

 体の造りは人間と同じようだが、サイズは規格外。

 下で倒した門番よりも一回り大きな化け物だ。


「このっ!」


 司は相手が動くより早く、行動に移す。 

 【聖剣】を発動し斬りかかろうとする。


 しかし六本の手のひらが光を放ち始め、司の動きを封じてしまう。

 

「何だよこれ!?」


 細いレーザーのようなものが六つ。

 手のひらから放出された光に阻まれ、前へ進めないでいた。

 連続で回避し、生きていることに安堵のため息を吐く司。


「くそっ。近づけやしない。仕方ないな……【潜伏】!」


 スッと姿を消す司。

 だが目の前にいる化け物は敵を目で追うようなことはせず、気配に対して自動的に攻撃を仕掛けるタイプであった。

 接近する司に対して、また六つの光を放射する化け物。

 

 司は慌てふためき、またそれらを回避する。


「おいおい……【潜伏】が通用しないのか……」


 慎重に慎重を重ねるタイプの司。

 いつだって、もしもというものは着いて回る。

 もしも無理に突撃して反撃を喰らったら……そう考える司は、敵をさらに警戒して近づけないでいた。


「司、どうするの?」

「ど、どうするかな……逃げ帰るってのはどうだろ?」

「逃げ帰っても、また来週来なければいけないんですよ」

「ははは……来年ぐらいまで粘れば、誰かこいつを倒せる奴が現れるかも」

「司くんが無理なら、誰にも倒せません!」


 確かに俺は飛び抜けて強いみたいだが……

 何でこんな役目、俺に回ってきたんだよ。

 

 心の中でぶつくさ言いながら相手の側面へと周り込む司。

 背後には顔が無いけど、後ろからならどうだ。

 そう考え、司は瞬間移動で近接する。


「いけるか!?」


 【聖剣】を発動し、相手の背中を切り裂こうとする。

 だがそれよりも速く、化け物の手が動き、司めがけて光を放つ。


「くそっ! 後ろからでも無理なのかよ!」


 聖剣で光を弾く司。

 六発やり過ごすも、また光を連続で放出する化け物。


「止めどなしかよ。どうやって倒せばいいんだよ、こんなの!」

「……司くん!」

「え?」

「私がおとりになります。その隙に敵を倒してください!」

「ばか――」


 手に持った斧を構え、化け物に接近していく由乃。

 円は由乃の手を掴み引き留めようとするが――その手は届かなかった。


 覚悟を決めた由乃は、化け物へと駆けて行く。

 司は瞬間移動で由乃を止めに向かおうとするが、化け物は由乃に照準を定めた後であった。


「天野!」

「来ないで下さい! あなたはあなたのやるべきことを成して下さい!」


 由乃の言葉にその場に立ち尽くしてしまう司。

 この子も戦っているんだ。

 俺と同じく、命をかけて世界のために戦っている。

 そんな彼女の気持ちを踏みにじることなんてできない。

 勇気ある行動には、勇気で応えないと!


 六発の光は由乃へ向かう。

 その間、司への攻撃は無かった。

 時間にして1秒にも満たない一瞬ではあったが――


 司は【聖剣】を全開放し、相手の頭部から股先まで切り裂いた。

 

「―――――」


 聞き取れない機械音のような悲鳴を上げる化け物。

 激しい光に切り裂かれ、消滅していく。


 敵が消滅しきるのを確認した司は大きくため息をつく。


「天野……」


 円が弱々しく、由乃の名前を呼ぶ。


「天野……天野!」


 司は円の声に、由乃の姿を探した。

 彼女は地面に倒れ、腹部から大量に血を流している。

 由乃の下へと駆け付ける司と円。


「……司くん」


 血の気を失った由乃の表情。

 司と由乃は青ざめ、死の予感に全身に寒気を覚えていた。


「天野……ごめん。俺がもっと強かったら……あんな攻撃にビクともしないぐらい無敵だったら……」

「いいんです。最期に世界の役に立てて……それでいいんです」


 命が果てようとしている由乃。

 しかしその表情には恐怖も後悔もない。

 ただもう一人の司に会えないことの寂しさに、まだ胸を痛めていた。


「あの人がいないこの世界に未練はありません……なんて言ったら、あの人は重く感じるでしょうか?」

「重くても、あいつなら担いでくれるはずだ! あいつは俺なんだから、自分の気持ちぐらい分かる!」

「天野、司なら絶対に受け止めてくれる。だから重いなんて関係ない」


 目を閉じ、笑みを浮かべる由乃。


「だったら嬉しいです……司くん……最期に名前を呼んでくれませんか? 私の名前を……」

「由乃……由乃!」


 つーっと一筋の涙を零す由乃。


「嬉しい……最期に、司くんに会えたみたいで……嬉しいな」

「……由乃」


 由乃は静かに息を引き取った。

 その彼女の姿を見つめ、激しい悲しみに襲われる司。

 円もどうしたらいいのか分からなくなり、司に抱きつく。


「こんなの……もう目の前で人が死ぬのなんて、見たくないのに! なんなんだよ、クソ!」

「?」


 由乃の体は粒子となり、天へと昇っていく。

 その不思議で美しい光景を、司と円は呆然と見送っていた。


「彼女の魂は僕が救済しておいたよ」

「!?」


 そんな司たちの前で再度空間の歪みが現れ、音を立てずに近づいて来る男の姿があった。

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