第69話 朝食
報告していただいて気づいたのですが、間違えて違う話を投稿していました。
申し訳ありませんでした。
勇太たちが帰って来たのはその日の夜のことであった。
気絶していた勇太が起きるのを待って、それから大会優勝のカードを貰い、宿屋に帰宅したようだ。
「おお、司! 優勝したぜ!」
「そうなんだ……俺、腹が痛くてずっと寝てたよ」
「そうなんか? 無理すんなよ」
「あ、ああ」
本気で心配してくれる勇太。
俺は心の中で苦笑いしながら話を続けた。
「それで、どんな武器カード貰えたんだ?」
「ああ。SRの剣で……【フレイムブランド】だとさ」
「ふーん」
勇太がカードから【フレイムブランド】を顕在化させると、それは朱い刀身のロングソードであった。
その剣は熱を発しているのか、近くにいるだけでじわりと汗をかく。
寒い場所にいる時は便利だろうな。
なんて考えながら剣を振るう勇太を見ていた。
剣を振るう度に刀身から炎が生まれ、さらに熱波が生じる。
「凄い強そうだな」
「本当ですね。これで旅が楽になればいいんですが」
俺の隣で勇太を眺めていた由乃。
俺は由乃の言葉に、とあることを思い出す。
「あ、そう言えばさ」
「おう! なんだ!」
磯さんが腕を組みながらこちらに振り向く。
円もチョコレートを食べながら、視線を俺に向ける。
「仮面の戦士がここに立ち寄って……エリアマスターはもう死んだって言ってたよ」
「マジかよ? 仮面の戦士は仕事が早えな」
「あ、いや……倒したのは仮面の戦士じゃないとも言ってた」
勇太は俺の言葉に眉を顰めた。
「じゃあ、誰が倒したんだ?」
「さ、さあ……そこまでは言ってなかったな」
ルージュたちの話をしたら混乱を招くような気がした。
聞いたところで皆にはどうしようも無い問題だしな。
だから俺は彼らのことは伏せておくことにした。
「まぁ、このエリアのボスがいないってことなら、先に進むか?」
「そうですね。特にここに留まる理由もありませんしね」
「留まってたのはバロウのことがあったからな」
勇太はそう言いながら鼻で笑う。
「明日から行く?」
「ああ。そうしよう」
「あの……明後日からじゃダメ、かな?」
皆は一斉に俺の方を向く。
明日は向こうの世界に行かなくてはならない。
後から合流してもいいんだけど、俺が単独で追いかけれるようなことがあれば話がややこしくなってくる。
なんで一人で行動できるんだよ、って。
「何で明日じゃダメなんだよ?」
「え、ええっと……」
勇太が首を傾げながら俺にそう訊く。
俺は咄嗟に腹を抑えて、適当な言い訳をした。
「は、腹がまだ痛いんだよ……明日もちょっと休みたくてさ」
「ふーん。そりゃ無茶させるわけにはいかねえな」
「では、明後日出発ということにしましょう」
「おう!」
皆は俺の腹痛を疑うことなく、すんなりと受け入れてくれる。
しかし……腹痛が理由だとか、ちょっと恥ずかしいな。
母親に学校休む言い訳してるみたいだ。
◇◇◇◇◇◇◇
翌日、皆は昨日の疲れからか、一日のんびり休むことにしたようだ。
俺が腹痛でちょうどよかったなんて言ってたが、やはり少しばかり恥ずかしい。
俺は自分の部屋の鍵を閉め、【帰還】を発動する。
飛んだ先は、別世界の由乃の家の前。
俺は玄関先にあるチャイムを鳴らす。
古いタイプのチャイムで、天野家の中でブーッと言う音が響き続ける。
それは指で押さえている限り鳴るようで、俺はパッと指を離した。
「はーい」
可愛らしい声が家の中から聞こえる。
横開きの扉を開け、由乃が顔を出す。
「司くん! おかえりなさい!」
「た、ただいま」
何、その言い方?
まるでお嫁さんみたいじゃないか。
由乃はスッと自然に俺の腕を取り、柔らかい物を腕に押し付けられる。
俺はドギマギしながら、由乃に家の中へと促されて行く。
「ご飯、食べましたか?」
「いや、まだだけど」
「良かったです。朝ごはん、用意しておきましたよ」
奥の部屋のテーブル席に着き、俺は由乃が作った朝食を前にゴクリと唾液を飲み込む。
そこには卵焼きに鮭の切り身。
ホクホクのご飯と湯気が立つ味噌汁が用意されていた。
これぞ、ザ・日本の朝食といった完璧な献立だ。
「いただきます」
由乃は俺が来るのを待っていたようで、一緒に食事を開始する。
抵抗なく切れる鮭はちょうどいい塩加減で、口の中でうま味が広がっていく。
ご飯を同時に口に放り込むと、それらは絶妙なハーモニーを奏でる。
「美味いよ、由乃」
「司くんの口に合ったようで良かったです」
ホッとしながらそんなことを言う由乃。
なんか、最高のお嫁さんを目の当たりにしているような気分だ。
笑顔の由乃を見て、動悸が収まらない。
久々の日本食だというのに、料理よりも由乃の方が気になって仕方ないぞ。
「そう言えば司くん、司くんの好きな食べ物って何ですか?」
「俺の好きな物……トンカツだな」
「トンカツですか……分かりました。次来てくれた時に作らせてもらいますね」
「な、なんか悪いな」
「いいえ。司くんに手作り料理を食べてもらえて、私も嬉しいですから」
凄まじい笑顔を向ける由乃。
可愛い女子と過ごす幸せな時間。
俺は完全に現状を失念してしまい、その甘美なひと時に浸りきっていた。
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