表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
奴隷少女  作者: Pのりお
11/11

4.5話 慟哭(最終話)

最終話です。

時系列で言うと、4話と5話の間の出来事となります。

 こんこん

 ノックの音がした。他に誰もいないし、もちろんお母さんだろう。

 わたしはドアを開けるために立ち上がる。いったいなんだろう、そうやってドアを開こうとしたその瞬間、背後で、大地を震わすような雷鳴が、また耳朶を震わせた。


 そこには、予想通りお母さんの姿があった。

 エプロンをつけたまま、うつむき加減で立っている。

「ちょっといいかしら」とお母さんは言う。わたしがうなずくと、おかあさんはわたしの部屋に足を踏み入れる。

 ドアを閉じ、「どうしたの?」と尋ねるが、それに答えず、お母さんはベッドの上に座る。首をかしげていたら、ぽんぽんとベッドを叩き、

「隣にいらっしゃい」

 雨音がうるさいくらいに響いていた。何度も何度も雷が鳴る。

 わたしはおそるおそるとなりに腰をおろし、お母さんの顔を見つめた。

 お母さんもわたしの顔をじっと見つめていた。沈黙が気まずくて、なにか言おうと思った矢先、お母さんが口を開いた。

「ごめんね」

 いきなりだったので、その言葉の意味を理解するのに数秒を要した。

「ごめん、ごめんね」

 お母さんはわたしの頭に手を伸ばし、胸の中で抱きしめた。お母さんの体温が肌を伝わってくる。お母さんの体はやわらかかった。やわらかく、わたしを受けて止めてくれた。

「おか、あさん……?」

 お母さんのエプロンの生地の網目まで見える。わたしは驚きに目を見開いていた。

「ごめんね。お母さんが弱くて、ごめんね」

 何度も何度もお母さんはごめんねを繰り返す。それしか、言葉を持ち合わせていないかのように、何度も。

「私が守ってあげなくちゃいけないのに、こんなお母さんでごめんね」

 お母さんの声が頭の中をじんじんと温める。心が溶け出していくのがわかる。

「でも、こんな情けなくてだめな母親でも、わたしはあなたのことを愛しているわ」

「おかあ、さん……」

 お母さんの手がわたしの頭を優しくなでる。

「おか、あ、さん」

「うん」

「おかあ、さん……!」

 強い嵐がわたしのなかで吹き荒れた。


 わたしは泣いた。

 初めはぽろぽろと、やがてしゃくりあげ、叫ぶようにして泣いた。

 おかあさんにしがみつき、かきむしるみたいにして涙をこぼす。

 もう理性も何も残っていなかった。ただ、胸の内側からどんどん流れてくる感情に身を任せ、わたしは声を張り上げ続けていた。

 窓の外の雨が一層激しくなった。大きな雷鳴がとどろく。

 お母さんはいつまでもわたしの頭をなでてくれている。

 わたしは、体力を出しつくし、喉を枯らし切るまで、いつまでもいつまでも泣きつづけた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ