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第五十八 『最悪な無神経』

教室に近づくたびに、ざわめきが大きくなる。

七音たちの時間稼ぎが、奏功しているといいが。

ドアの小窓から覗く。

…………おかしい、クラスメイトたちが柊花を取り囲んでいるように見える。

「なんだあれ……」

………………七音と会長は輪の外側にいる。

こっそり接触したいが……。

会長と目が合う。

ログを見てくれたんだっ!と希望を持ったのも束の間、顔を顰められる。

……嘘だろ、何があったんだよ。

顔を顰めた会長に気づいた七音は、いつも通りに見える。

七音はこちらに来ると少しドアを開けて、こちらに問いかける。

「何か用事?」

「連れてきたんだよ、あいつの婚約者っ……!」

俺の必死な返答に、七音は教室から出てきて、一言。

「残念ね、今入ったら、格好の的よ。」

「な、なんで……」

「だって……見れば分かるでしょう。

ていうか、貴方が1番分かってるはずよ、健。

——あの女の魅了」

あ。

俺はきっと青ざめている。

後ろから物凄い睨みつけられているだろうから。

七音はロトに気づくと、あら。と声を上げる。

「彼女の婚約者、自慢してた通りなのね。」

「自慢と?」

「世界で一番かっこよくて、金の髪はさらさらしていて、天の川に触れた時みたいにキラキラしてたとか。あと、宇宙一強いだとか、カリスマ性高すぎていつも不安になるだとか……」

「いま良し。我をあはれがる言の葉は、聞き慣れたり。」

「……古文っていうより、所々古文なのね、貴方。」

「なにか、あやしきにもありや?」

コウちゃんが口を人差し指を当てて、黙れと口パクで伝えているのを見て、七音は鼻で笑いながらロトへと話しかける。

「今世に人の言の葉をまねぶたまへ。」

「………………」

ふむと、ロトが考え込む。

逆ギレされたらどうすんだよ……と不安になってる俺らをよそに七音は涼しい顔をしている。

「…………汝の言うとおりだ。

合点がいった。そこの健がコウを通じて、我と言の葉を交わしていたのは理解をしていなかったからなのだな。」

「そっ、すね…………。」

「頼んだら普通に喋れたのかよ……、いや多少名残は残ってるけど……。」

俺とコウで頭を抱える。

「まぁともかく!ここまで来たんです、突撃しましょ!!

本音をぶつけるんですっ!多分古文だったから、今まで上手く伝わってなかっただけですよ!!」

「——待」

勢いのまま押し切り、ドアを開けて、俺はたのもー!と大きな声で叫んだ。

女子の視線が一気にこちらにぎょろりと集まる。

こういう時の女子の団結具合は怖い。

ヒソヒソと数人が小声で話し始めた。

中心にいる柊花は、ただじっとロトを見つめている。

「……█▓▓█▓█」

「█▓█様……」

こちらでは認識出来ない名前で呼んでいる。

……そう認識出来ない、聞き取れないわけではない。

()()()()()()()()()()と脳が理解していることからくる防衛本能により認識が出来ないのである。

「……なんの用ですか……」

「詫びに来た、我が最愛よ。」

「…………」

柊花はまだ拗ねた表情をしている。

なんと面倒くさ……、そうだ、思考を読まれるので気をつけよう。

「すまなかった、我が最愛を蔑ろにしてしまった。」

「なら……なら……」

柊花がわなわなと震え、泣き出し始めた。

「何があった、こやつらか。

全て処分出来る、どうだ。

…………………█▓▓█▓█?」

焦ってとんでもないことを言っている。

俺が止めに入る前に、とうとう柊花が爆発した。

「——我が最愛って言うのなら、なんで最初に会った時に可愛いって言ってくれなかったんですかぁ〜!!!?」

「そうよ、最愛なら最初に会った時いつもと違うと分かるはずでしょう。」

爆発と共に涙はボロボロと目からこぼれ落ちている。

会長の援護もあり、こちらはタジタジである。

嘘だろ、会長……!!

どっちの味方だよぉ……と目で訴えていると。

「ごめんなさい、霜井戸君。

けれど、愛しているなら気づくべきだわ。

私なら、霜井戸君のコンマ数ミリのカットでも気づけるもの」

謝るのはそっちじゃないし、言ってることが本当ならば怖い。

コウと会長が会話してる間に、そうだ、と思い出したことを七音にこっそり耳打ちする。

「なぁ、キュウってここにいるか……?」

「はぁ、嘘でしょ貴方……」

白い目で見られるが、嘘だろはこちらの言葉である。

ポケットはネトネトしているだけで、本体がいない。

元はあの女の物だが、いつしか絆されてしまっていた。

寂しい、もしかしたら、あの女に戻っているかもしれない。

あの2人の話に集中しよう、話が終わったら聞けばいいんだ。

……なんで、柊花がもっと泣いてんだ。

「おい、おいっ……ロトっ、なに言ったんだよっ……」

「こいつ、いつも同じような格好をしているのに、気づくことなど無理だろうって言ったんだ。

で、ショックを受けて、この有様。」

「……」

口を開けて固まってしまう。

頭を抱える。

ロトって、こんな無神経なのかよっ……!

「もう嫌っ!!!別れるっ!!!」

「なっ、待て待て、ほらっ!

……いや、それは今じゃないっ!」

指輪を出そうとするのを止める、謝れってことだよっ!!

嘘だろ、分かんないって顔すんなって。

焦りで汗腺が止まることを忘れてしまう、手も顔もすべてびちゃびちゃだ。

「うわぁぁぁんっ!!

こんな、こんなことなら、可愛くするんじゃなかったっ!

ほどほどにしたら、ショックも少なかったぁっ!!

もう、もうっ!こんな世界無くなっちゃえっ!!!」

ぷつんっと音を立てて、視界があおくn


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