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第四十二 『心の穴』

「七音ぇ〜〜!!!!」

「ぅ、ぐっ……おはよう、明日」

「戻れたっ!戻れたよぉっ!」

入って早々に、七音は明日からタックルを受けている。

七音に泣きつきながら叫ぶ明日を見ていると、胸が痛くなる。

俺らはこの身体を借りていたから。

「美少女だなんだと騒いでた割には、気にしてたのね」

「まあ、今は。

穂波に泣き縋った俺のせいだと分かったんで」

「契約、だったかしら。

あの指輪が関係あるの?」

「そっすね……。

——ところで会長、ここ一年の靴箱です。」

「知ってるわ、バカにしてるの?」

滅相もない!!と頭を横にぶんぶん振る。

いや、だって、靴変えなきゃじゃん?

「私がルールよ、今から土足OKにするわ。

全員生徒会室に来なさい。

あの2人も連れてね」

「分かりました」

最初に返事をしたのは七音だった。

七音の後ろに隠れて明日もこくこくと頷いている。

コウちゃんとほぼ同時に頷く。

それを見て会長は満足したのか、生徒会室に向かったようだった。

「会長怖い……けど、1番頼りになる……」

「わかる…」

明日の小さな呟きに頷きと同意を返す。

ほのかに仲間意識が芽生えた気がする。

「あら、明日に頼られるのは今日で最後かしら」

「わっ、七音が1番だよっ!

会長は、えと……2番目、かも?」

「明日の1番になれて嬉しいわ。

今後も私を1番にしてくれる?」

「えへ、えへへ。

もちろん!」

目の前で2人は腕を組みながら、いちゃついて歩いている。

「あのさぁ、いつもこれ?」

「プレイヤーがいたら、マシなんだけどな。」

「すげーな…」

「………………多分藪蛇なんだけどよ」

「なに?」

「……………………いや、やめとくわ」

遠い目をしたコウちゃんが、話を逸らし始めた。

気になる〜……キュウがポケットで暴れている。

ポケットをトントンと叩き、落ち着かせる。

すごくか細い声でキュウと聞こえてくる。

……もうちょっと我慢してくれ。

俺の願いが伝わるように優しく叩き続けると、落ち着いてくれた。

教室へ着くと、高菜ちゃんと旗靡が一緒にいた。

この様子だと……。

「七音ちゃんっ!」

「…………前原さん」

「あれ……?

も、もしかして、1周目…?」

高菜ちゃんがあわあわと慌て始める。

少し涙目になっている。

旗靡が立ち上がり、高菜ちゃんを落ち着かせているところに声をかける。

「あのー…」

「ひゃっ……!霜井戸くん…!と……?」

いつの間にか後ろに立っていたコウちゃんに怯えてしまっているようだ。

コウちゃんにあっちいけというと、半泣きで教室を出て行った。

出ていけとは一言も言ってない。

「…………あっ、もしかして、今までの七音?」

「え?」

「察し良い〜!……ゴホンっ、そう。

あの諸事情あって、七音の中にいた、飯岡健で……」

「まぁ、いつもの七音じゃないから察してはいたけど、まさか男だったとは」

「え、え」

俺と旗靡を交互に見て慌てている高菜ちゃんに視線を向けて話す。

「え、えと、飯岡くん…」

「……ごめんね、高菜ちゃん。

今まで騙してたわけじゃないんだ。

いつでも味方なのは変わらないからさ。」

頭を撫でながら話すと、高菜ちゃんはみるみるうちに赤くなっていく。

「あら、女たらし」

「まじか、高菜ちゃんに近づくな、しっしっ」

七音と旗靡からひどい扱いを受ける。

いや、今は女じゃないの忘れてたんだって…!

泣き真似でもしておこう。

「ひどいっ!」

「ち、違うのっ…

今までの七音ちゃんが、飯岡くんで……

その、前は王子様みたいって思ってたからぁ…!」

「で、本当に男の子で、王子様みたいだって?」

「そ、園ちゃん!!」

小動物みたいに縮こまってた子が……こんなに話せるようになって、友達にポコポコしてるのを見ると嬉しくなる。

——穂波もいたらな。

そんな気持ちが芽生えるが、今はどうしようもない。

2人のドタバタが終わり次第、例の件を伝えて、生徒会室に行こう。

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