第四十一 『お礼』
「ところで、その下僕」
「キュウっていうんだ」
「そう。
下僕がサポート云々って言ってたけれど、何ができるの?」
名前を教えても下僕かぁ…。
「まだ何も試してないけど……柊花にヒントを貰えるみたいな」
「……どうやって?」
すごく顔を顰められる。
超絶美少女ってこんな顔できるんだ……。
「分からない……
その何かを試す前に、先にコウちゃんたちの安否とか、穂波の安否とかが気になって……。」
「で、迷子ってザマなわけ?
お気楽な頭を持ってるのね、で穂波って子はいないし」
「そ……」
そんな言わなくていいだろと反論をしようとした。
が、その言葉の前に、前方にいる会長が見えた。
完全にリセットされる前を思い出す。
『女だからと、小崎家に相応しくないと、ずっと言われて、心の奥底から全てを諦めていた貴方。
幼い頃、主人公とした約束を守り続ける貴方。
その希望を胸に、家族から非道いことをされても、今までずっと生きてきたのに、全てを打ち砕かれた。』
柊花が会長の頬を掴んで、心を打ち砕くために言った言葉。
俺自身は会長のことを何も知らない。
本当に、何も知らなかった。
それなのに、会長は。
『男なんでしょう!
男なら、なんでもできるんでしょう!?
なら、最後まで諦めるなっ!
——私には、出来なかったことを』
——俺の言った言葉を覚えていてくれた。
勝手に期待して、失望した自分勝手な俺に託してくれようとした。
あの会長が同じ会長じゃないかもしれない。
それでも、伝えたいことがある。
会長に向かって走り寄る。
コウちゃんは止めようとしたが、ごめんと目で伝えると手を引っ込めてくれた。
会長の横に立って、顔を見ないまま話しかける。
きっと、こっちに見向きもしないはずだから。
「小崎生徒会長、おはようございます」
「…………」
「——ありがとうございました。」
それだけ言って、コウちゃんたちのところへ戻ろうと後ろを向き、歩き始める。
「——待ちなさい」
会長に呼び止められる。
ピタッと動きを止めて、振り返る。
そこには笑みを浮かべる会長がいた。
「貴方ね、七音の中にいた飯岡健という男は。」
「……はい」
「まだ諦めてないわね」
「…………はいっ!」
返事に力が入る。
「そう…じゃあ、まず、どういたしまして。
次に、貴方も私と一緒だったと気づいたわ。その糸は切れてはいけないモノ、誰にも邪魔されてはいけないモノ。
それだけは諦めちゃいけない。
貴方の言うとおりだったわ。
——さあ、潰しましょう、あの女を。」
「はいっ!!
——はいっ!??」
いや、あの、元気に返事したんすけど、その、違くて。
糸云々は多分縁とかじゃないですか、その。
黒八木柊花を潰すっ!?
「相変わらずだな」
「あら、霜井戸くん、ごきげんよう。
今日も貴方と会えて良い1日を過ごせそうだわ。」
主人公絡むとすらすら出てくるな……と感心していると、七音がコウちゃんの横に並ぶ。
「ごきげんよう、会長。」
「——七音」
「……上野七音、戻ってまいりました。
また、遊んでくださいますか?」
「……ええ、もちろん」
…………。
がっしりと腕を組んでいる。
困惑している俺の横にコウちゃんが来て、こそこそと耳打ちしてくる。
(あいつら、トップツーだから、競い合っててさ、それを遊びだのなんだのって言ってんだ。
恐ろしい女どもだよな………)
なるほど。納得できた。
まさか、あの2人が熱血系の関係だとは思いもしなかったけど。
(設定的には、そんなのはないぜ。
この2人がそうってだけだ。)
へぇ……と相槌を打っていると、会長が近づいてきて、俺とコウちゃんの距離を引き離す。
「飯岡健、貴方を敵だとは認定したくないの。
不埒な行為で、霜井戸くんを惑わさないでちょうだい。」
ヒィッ!と怖がる俺をよそに壁へと追い詰めてくる。
惑わしてないですっ…と震えながら言うと、離れてくれる。
怖い女だ……。
「まだログは見れるわよ」
………………。
もうあまり考えないようにしよう。
「きゅぅ……」
キュウ、そんな呆れないでくれ。
誰だって追い詰められたら怖いんだよ。
そんなことを考えているうちに、学校へ着いた。
さあ、残るは3人。
協力者はたくさんいた方がいい。
覚えていてくれたら、いいなと考えながら、靴箱へのドアを通り抜ける。




