『とあるご令嬢の独白』
——————ゆらゆら。
ゆらめく。
心地がいいのに、苦しい。
息を吸い込む、そんなこと出来っこない。
小さな魚たちは、私を見ると逃げていく。
綺麗な水面が見える。
見える。
けれど、苦しい。
身体が水で満たされたかのように重い、もがく力さえ奪われていく。
目を閉じて、受け入れる。
お祖父様も、お祖母様も。
お父様も、お母様も。
……あの子も。
私が、生きていても、死んでいても…関係ないのだから。
そう考えていた私の腕が強く、強く引っ張られる。
「ゲホッ…!!!ゴポッ、ゲホッ…」
「——大丈夫か!?」
「ゲホッ、ゴホッ…」
ずっと近くにいる、誰か。
私を心配してくれる、誰か。
お祖父様でも、お祖母様でも、お父様でもお母様でもない。
あの子でもない。
「誰か呼んでくるよっ!」
「…!」
助けてくれたその子の服を掴む。
咳は止まない、こんな私を見ても、心配なんてされない。失望の目しか向けられない。
「ま…ゲホッ」
言葉が出ない。
川の中に入ったなんて、川で溺れただなんて、知られちゃいけない。
その子は立ち止まり、俯き続ける私の隣に座ってきた。
「咳止むまでな」
「…」
コクコクと頷く。
だんだん治まってきている。
「もう、大丈夫か?」
頷きで返す。
「喋れる、か?」
「…ゔ…ぁ………ゲホッ…!」
「無理しなくていいって…!」
そうやって、びちゃびちゃになった私なんて気にせず、背中をさすってくれる。
優しい優しいあなた。
「…ぁ、ありがとう」
「治った、のかな?
どういたしまして、もう大丈夫か?」
「うん…」
小さな小さな声になる、これ以上大きな声は掠れて出せない。
それでも聞き取ってくれる。
私は貴方へと目を向ける。
私の、運命。
私の世界に光を与えた人、私が生きていく理由。
私に愛をくれた人。




