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電話を終えても手を離さず、椅子に座って寄り添っていた。
温かい、温かい。
私の冷たい心に日差しが差し込むように。
明日は太陽のように暖かい。
みんなが一緒に死ぬ時に、貴方は私に寄り添ってくれた。
それだけで私は救われた。
1周目の私は救われた。
一人で冷たくなっていく身体を恐れる必要が無くなった。
温かい、温かい、暖かい。
「あったかいね」
「そうね」
「…私たちどうなっちゃうのかな」
明日へ目を向けると、涙をほろほろと流していた。
「…もし、戻れなくても、私といてくれる?」
「………うん」
明日はきっと元に戻りたい、私は……。
明日のために頑張らないと、明日のために解決しないと。
——あの女に接触を図るしかないか。
「もう、今日は疲れちゃった。寝ようか。」
「んふふ、そうだね。
………ベッド一個しかなかったよね」
少し照れくさそうに笑ってる明日に、微笑みを返す。
可愛い。
「仲良く寝ましょ」
手を繋いだまま、寝室へと向かう。
ドアを開けると、確認した時と同じようにベッドが一つの寝室だ。
手を離し、二人で寝転がる。
お風呂だのなんだのは考えるのも煩わしい。
顔を合わせて、同時に笑う。
「小さい子供みたい」
「えへへ、パジャマパーティー思い出すね」
「そうね」
「……怖かったね」
「私が守るから大丈夫よ」
「ふふ、心強いなぁ、
七音なんでも出来るもん……きっとさ、すぐに解決して……戻れるよね」
「ええ、戻れるわ。
あちらの協力も得れるの、きっと…
貴方が目を閉じて、目覚めたらすぐにね」
「……うん」
「コウちゃんも、会長も、旗靡さんも、前原さんも…
みんな、待ってるわ。」
「……」
コクと頷く。
さらさらな髪を撫でる。
「大丈夫よ、全部、全部元通りよ…
私たちは、私たちで頑張りましょうね。
帰ったら……アイスとかクレープを食べましょう。
あいつに奢らせるわ。
三段アイスに…クリームをもりもりに持ったイチゴチーズケーキクレープに……」
私がスイーツ談に花咲かせていると、すぅすぅと寝息が聞こえる。
「おやすみなさい、明日」
よく眠れるように祈りながら、頭を撫でて、おでこにキスを贈る。
ひっそりと足音を、物音を立てないように、ドアから出て行く。
外に出ると、赤い光を背に浴びるする女が立っていた。
その表情は暗く見えない。
「可愛い子たち……♡」
その声はうっとりとし、男に媚びるような女の声だった。
……反吐が出るほど気持ち悪い声。
「あら、お褒めの言葉ありがとう。
あいにく、私は貴方に返せる言葉はないわ。」
「うふふ…ふふふ…可愛い…
私、やっぱり貴方たちのことだぁいすき♡
ねぇ、私がいるのに、外に出たってことはそういうことでしょう?」
手を頬に添えて、お姫様を夢みる少女のようにくるくると回りだす。
そうして喋り終えると、こちらに向き直り、次は私の頬を汚い手で包み込んでくる。
「ええ」
「うふ♡うふふ♡」
私の返答に満足したのか、相手は笑っている。
耳元でパチンと音が聞こえる。
一瞬眩暈がした。
ぐらりと気持ち悪さが残る。
近くにあるものに捕まった、あの女ではないもの。
映画やドラマ、最終エンドで死ぬほど見たもの。
祭壇だ。
ゾッとする、周りを見渡す。
赤い光がステンドグラスに当たり、ステンドグラスの影が出来ている。
傍観者席には何かがいる。
目がぼやけ、何がいるのかを認識できない。
いや、認識出来ないようにされている。
ほのかに悪臭が漂う、顔を顰めて、女を見る。
「うふふ♡」
黒いウェディングドレスを着た女は、私をうっとりと見つめる。
「ッ!私は…!」
「さぁ!みなさま♡
新婦とこの可愛らしい新婦に、お祝いの拍手を♡」
拍手が教会内に響く。
反吐が出る、逃げ出そうにも、やらなきゃいけないことが残っている。
「私は!契約をしにきたのよっ!
こんなごっこ遊びに付き合わせるのならっ…」
「ええ、契約よ。
結婚だって契約でしょう♡
これを終えれば、貴方の願いを叶えてあげましょう。
さぁ、手を出してちょうだい」
困惑する私の手を半ば無理矢理取り、指輪をはめられる。
吐き気を催してきた、もう片方の手で口を押さえる。
漏れてくる嗚咽に対して、女は恍惚とした表情を浮かべる。
悪趣味なクソ女、私は、私は明日を助けるために、くそ、くそくそくそ、涙で前が見えない、怖い。
しゃがみ込みそうになる私を抑えて、女は口を開き、目と鼻の先まで迫ってくる。
「契約よ————————」
「——んむっ…
おえ゙ッ、ゲホッゴホッ、ヒュッ、ヴェッ…ゔっ…、うぇ…や゙、や、やめ…て…」
我慢しきれず、床へと落ち、このくそみたいな場所で嘔吐する。
「ねぇ、病める時も健やかなる時も私のことを愛すると……誓って♡」
「……」
ふっ、ゔっと呼吸を繰り返す私へ問いかけ、誓わせようとする。
嫌だ、嫌だ嫌だ嫌だ。
でも、私がこれを飲み込まなければ?
明日が、私の、1番、大切な……。
絶望の淵に立たされた私は、女と目を合わせる。
「わ、たしは————」




