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  作者: 外山
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実行部

二学期が始まり数日経ったある日の休み時間



「ねえねえ桐島君、ちょっといい?」

渡部は隣の席の桐島に声をかけた

「ん?」

「あのね、もう少しで体育祭があるでしょ?」

この学校の体育祭は比較的遅い為、一学期の段階では体育祭の準備は何もしていなかった

「ああ そうだな」

「それでさ、実行部みたいなのがあるんだよね 体育祭の」

「ふ~ん、体育部とかのとは別なのか?」

「うん そうらしいんだけど、、、」

渡部は少し目線を落とし口ごもった

「? それがなんだよ?」

「桐島君、よかったらそれ一緒にやらない?」

渡部は探るような訊き方をする

「ん~、、、それってなんかめんどくさいんじゃねえの?」

桐島はあまり乗り気ではない様子で言った

「そ、そうかもしれないけど~、、、どうせならやろうよ!」

「う~ん、、、」

「ね?お願い!」

渡部は手を合わせ懇願した

「う、、、わ、分かったよ、、、」

桐島は渡部のおしに負け承諾した






その日の昼休み



いつものように昼食を食べ終えた桐島は教室に向かっていた

(実行部か、、、どんな事すんだろ、、、あとで焦栄にでも訊いてみるか)

桐島はそんな事を考えながらボーっと歩いていた

(あ、でも焦栄も知らねえか 同じ一年だし、、、)



ドンッ!



「うわっ!」

「きゃっ!」

桐島は廊下の角で誰かとぶつかった

足元には大量のファイルがばらまかれた

「あっ!わ、悪い!」

桐島は慌ててしゃがみこみ、ファイルを拾い集める

「ちょっと!ちゃんと前見て歩いてるの!?」

そう桐島に怒鳴ったのは北脇だった

「、、、北脇、またお前かよ」

「それはこっちのセリフよ!も~、、、」

北脇は不満な気持ちを抑え、ファイルを拾う

「なんでこんないっぱいファイル運んでんだよ?」

「午後の理科の授業で使うからよ 今日は私が日直だし」

「え~?日直の時ってこんな事もすんのかよ 大変だな」



そんな会話をしている内にファイルは全てまとまった

「じゃ、それ返して」

北脇はファイルを渡すよう桐島に手を出した

「いやいいよ こんぐらい持ってってやるよ」

「え?」

「また誰かと当たったら危ないしな」

桐島は先に歩き出した

「、、、うん、ありがとう」

北脇は続いて歩き出した

「なんだ 北脇でも礼とか言えるんだな」

「なっ!バカにしてんの!?」

「ははっ してねえって」






桐島は北脇と歩きながらふとある事を思い出した

(そうだ、、、北脇なら体育祭の実行部の事ちょっとは知ってるかもな)

「あのさ、ちょっといいか?北脇」

「? いいけど、、、私も先にちょっといい?」

「え?あ、ああ」

「なんか堅苦しいから、紗菜で良いよ 呼び方 私も誠哉って呼ぶし」

「そうか?じゃあ紗菜、ちょっと聞きたい事あんだけど」

「なに?」

「体育祭の実行部ってどんな事やるか知ってるか?」

「体育祭の実行部?誠哉やる気なの?」

「まあその予定でな もう紙出したし」

「へ~、じゃあ今日から大変ね」

「は?今日?」


「うん 今日の放課後から会議あったんじゃなかったかな?うちのクラスだけ決まってなかったから最後のホームルームで無理やり決める予定だったんだけど」

「か、会議?」






今日の会議は3時半から1時間半~2時間ほどの予定だという事を


ホームルームで担任教師から説明を受けた



「マジかよ、、、そんなのあんのかよ」

桐島は窓際でブルーな気分になっていた

「知らずにやるなんて言い出したのかよ ま、せいぜい頑張れよ」

野波佳はそう言い残し帰っていった




「いや会議ぐらいあるのは大体分かってたけどよ、、、今日からってなると気の持ちようが変わってくんだよな」

「なんでもやるならその日から 善は急げっていうでしょ?じゃあまたね 誠哉」

北脇は元気づける言葉を残し教室を出た




「1時間半~2時間って、、、何をそんな話す事があるんだと思う?てゆうか【~】ってなんて読むの?【から】でいいのか?」

「バチが当たったんだよ!人のパソコン壊すから!」

外山はバカにしたような言葉を吐き捨て帰ってしまった




渡部と徒仲はその様子を見ていた

「、、、わ、私も帰るね、、、じゃあまたね、歩ちゃん」

「う、うん、また明日 麻癒」

渡部は教室から出て行く徒仲の背中を見ながら見送っていた

教室は2人だけになってしまった



「はぁ~あ、、、会議かぁ」

桐島はため息まじりに呟いた

「ま、まあいいじゃん!最初だけだってこんな長いの!」

渡部は必死でフォローした

「まあそれはいいんだけど、、、行くって言っちまったしなぁ、、、」

桐島は眉間にしわを寄せた

「え?行くって?」

「あ、いや、、、なんもねえ 先行っといてくれ」

「う、うん」

渡部は桐島の言葉に少し疑問が残りつつも先に教室を出る事にした









「、、、、、」

教室を出た渡部は少し離れた場所から教室を見ていた

(なかなか出てこない、、、なにしてるんだろ)

渡部は無性に桐島の動向が気になった

(、、、よし)

渡部は腰を落とし、ゆっくりと教室に近づいた

すると中から話し声が聞こえる

(あれ?教室には桐島君しかいないはずじゃ、、、)

渡部は慎重に教室を覗いた

「はい、、、ちょっと学校での事で、、、すいません」

桐島は窓際から外を見ながら電話をしていた

(あ、電話か、、、誰と電話してるんだろう、、、)

携帯電話を持っていない渡部は少し羨ましそうに桐島を見ていた


「子供達にも言っておいてください、、、はい、はい」

断片的にだけ電話の声が聞こえてきていた

(、、、子供?敬語だし、、、)

渡部は誰と電話しているのかさっぱり分からなかった

「ああ、悪いな また今度行くからよ」

(あれ?敬語じゃなくなった、、、)

渡部はまた頭を悩ませた

桐島は電話を切り、教室の出口に向かってきた

(あ、来る!)

渡部は慌ててその場を離れた






「あれ?渡部?」

教室から少し離れた場所に渡部がいるのを桐島は見つけた

「あ、う、うん?もう行けるの?」

渡部は動揺を抑えようとして逆におかしな喋り方になっていた

「なんだ 先に行ってて良かったのに」

「う、うん なんか一人だけで行くのも気まずいし、、、」

(さっきの電話、、、なんだったんだろう)

渡部はチラッと桐島の顔を見る

(そういえば私、桐島君の事何にも知らないかも、、、)

そう思いながらも桐島に訊ねる勇気は渡部にはなかった







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