遭遇
夕方5時頃
バシャバシャ
渡部はトイレの洗面所で手を洗っていた
「、、、ふぅ」
渡部は気持ちを落ち着けるように息をつき、今日の昼間の事を思い出していた
「和也先輩、、、お、お久しぶりです!」
渡部は慌てて頭を下げた
「おう、久しぶりだな!ホントはもっと早く会いたかったんだけど、お前携帯持ってねえからさ!連絡のしようがなかったんだよな」
西野は久しぶりに渡部に会えて嬉しそうだった
「もっと早く、、、ですか、、、?」
渡部はカァーッと顔を赤らめた
「ああ、そんで、歩がこの南涯高校に通ってるってのは知ってたからさ 会えねえかなぁって思って今日来たんだよ」
「え、、、わ、私の為に、、、?」
渡部の問いかけに西野は頷いた
「そしたらこんなカッコしてるし、、、お前なにしてんだよ!」
西野はメイド服を見て、笑いながら言った
「あ、、、うぅ、、、」
渡部は恥ずかしそうに手で全身を隠す
そこで西野は、後ろの客達が気になった
「そろそろ俺邪魔かな、、、、歩、ここ、何時に終わるんだ?」
「え~っと、、、6時の予定なんですけど、、、このペースだと3時半か4時頃には売り切れそうみたいな事を言っていました」
渡部は時計を見ながら桐島、浜、美嚢の会話を思い出していた
「そか、、、じゃあさ、5時ぐらいに、あの校門の近くのでかい木の前に来てくれないか?」
「え、、、?」
「話したいしさ、、、じゃあ頼むな!」
西野は渡部の返事は聞かず、どこかへ去ってしまった
「あ、和也せんぱ、、、」
渡部が名を呼ぼうとする頃には、西野は人ゴミに埋もれてしまっていた
そして現在
(和也先輩、もう待ってるのかな、、、)
渡部は鏡を見ながら少し緊張していた
(、、、行こう)
渡部はそう決心し、トイレを出た
すると少し離れた場所から叫ぶ声が聞こえる
「2万円~~!!!俺の2万円はどこだぁ~~!!」
桐島の声だった 桐島が高速で移動している事が声からわかった
「き、桐島君??」
渡部が昇降口を見た時にはもうすでに桐島の姿はなかった
「、、、なにしてるんだろ、、、あっ、ダメダメ!」
渡部は少し桐島に気をとられたがまた気を引き締め直した
西野は校門の前の木の下で渡部を待っていた
「まだ色々やってるな、、、」
西野は屋台やその周りの人だかりを見ながら呟いた
「歩遅いな、、、あ、よく考えりゃそりゃそうか、売り切れて終わりそうなのが4時ぐらいってだけで、実際は6時までやる予定なんだもんな、、、」
色々と考えていると西野の目の前に紙が降ってきた
「ん?なんだ?上から、、、」
西野は一度上を見たあと、落ちている紙を拾った
なんとその紙は1万円札だった
「俺の2万えぇ~~ん!!!!!」
すると桐島が西野に向かって猛ダッシュしてきた
「っっ!?」
「2万円!!!知りませんか!!?」
桐島は物凄い形相で西野に訊ねる
「え、、、こ、これの事か?」
西野は桐島の気迫に気圧され、今拾った1万円札を見せた
「あっ!!そ、それ、どっから降ってきたんですか!?」
桐島はもう自分で『降ってきた』と言ってしまっていた
「う、上からだけど、、、君のか?」
「は、はい!おそらく!」
桐島は西野から1万円札を受け取った
「ありがとうございます!あの、もう1枚知りませんか!?」
「いや、これしか知らないな 悪いね」
「、、、そうですか、、、ありがとうございます、、、」
桐島は急に元気がなくなり、小さく頭を下げた
すると誰かが小走りで走ってくる足音が聞こえた
「和也先輩!」
西野の名を呼んだのは渡部だった
「え?」
桐島は聞き覚えのある声に振り返る
「おう!歩!」
西野も渡部に手を振り、自分の居場所を示した
「すいません!ちょっと遅れま、、、え?桐島君?」
「渡部、、、?」
「、、、?」
3人はそれぞれ、呆然とした表情を浮かべていた