プロローグ
初めまして!水伽月と申します。
今回、初めて小説を投稿させていただきます!
ファンタジー、SF、異能などなど、
様々な要素を盛り込んでみたので、楽しんでくれたら嬉しいです!
2194年、夏。
人間の時代に幕が下りた。
人はあの日のことを『The Great Flash』と呼ぶ。
何本もの細長い高層ビルが、空を覆う灰色の霧を突き抜けて聳え立っていた時代。
大型の液晶画面から3Dの広告が飛び出て、ビルの間をすり抜けて車が飛び交っていた。
まさに科学の全盛期であった。
それゆえ軍事技術の発展も著しく、多くの民間人は終末も見据えていた。
いつもと変わらない、とある水曜日。
耳を裂く轟音と強烈な閃光が空を染め、直後、世界は完全に静止した。
霧は晴れ、数秒前まで直立していたビルは瓦礫と化し、数十年ぶりに日本の水平線が姿を現した。
日本海への一撃で、文化に溢れ、科学の最先端と呼ばれた日本は不毛の荒地と化した。
放射能の波が日本を飲み込み、爆撃を生き延びた生物は飲み込まれていった。
しかしながら、京都南部に走った奈落の地割れに飲み込まれた人々はその波から逃れることができた。その数年後、今では『開拓者』と呼ばれる人間達は闇から這い出て、鴨川を超えた北への上り、盆地を囲う山々により世界から隔絶された、小さな自給自足の文明を築き始めた。
いずれ、当時の法王ヤマカドにより『ニュー・キョート』が建国される。
ここから、100年の月日が流れる。
・・・・
母はいつも桃色のヴェールで顔を覆っていた。
窓から朝日が差し込み、綿の布から母の輪郭が透けて見えると、アドヴァはその形を目に焼き付けるようにしていた。
アドヴァは何度も母に聞いた。
なんでヴェールをしているの?
なんで顔を見せてくれないの?
母はただ一言。。。
「私が醜いから」
とだけ答えた。
母は時々、父に連れられ家を後にすることがあった。
そうなると、数日後には着ていた服がブカブカになる程憔悴して帰ってきた。
アドヴァは心配である反面、母への嫌悪感も抱き始めていた。
彼女は、怖い者なしの父親が恐れるほどの形相をしているのか?
もしかすると、怪物なのではないか?
幼いアドヴァの想像力は大したもので、あっという間に母への恐怖が肥大化した。
とある、冷えた午後のこと。
焦った様子でアドヴァを寝室に引き入れた母は、ヴェールの下を見てくれないかと懇願した。
見えなくとも母が必死に涙を堪えているのがわかった。
母は生まれて間もない弟をヴェールの中へ抱え込み、口付けた。
その時、アドヴァの身体中を悪寒が駆け巡り、強烈な吐き気が彼を襲った。
「触らないで!気持ち悪い!」
唇から飛び出た、取り返せない言葉。
そこから事は早かった。
アドヴァの叫び声と共に、勢いよく開いた寝室の扉。
父を筆頭にして、頭を丸め、緑に身を包んだ男達が家を訪れた。
彼らは母を頭からつま先まで品定めするように眺め、彼女が汚物であるかのように鼻に皺を寄せた。
男達が母の首襟を掴み玄関から引き摺り出した時、まだ幼かったアドヴァでも、母はもう帰らぬ人となったことを理解した。
その日、北のポリティコ街から南の駐屯地まで轟いたミツキ・戸座・スミスの悲鳴は、10年経った今でもニュー・キョートの民に語り継がれている。
ーーー物語は、現在閃暦2304年。父からアドヴァに告げられた一言から始まる。




