8 こんな子に育てた覚えは
家には孫が来ています。まだ4カ月の赤ちゃんです。まるまるとしています。よく泣きます。大変です。ネコも落ち着かない様子です。
今日もまったりと過ごしています。小説を読む私の隣で虎子は体を丸めて寝ている。
最近は秘密基地内で寝なことが増えてきました。季節が暖かくなってきたことと、虎子がこの環境に慣れてきたことが、その理由だと思います。
「ワンワン」
隣の家から犬の吠える声が聞こえる。
先日、空き家だった家に引っ越してきた夫婦の犬だ。回覧板を持って行ったときに軽く挨拶をした事がある。感じの良い50歳くらいの夫婦だ。
犬の方は、お腹と顎舌だけが白い、全体は黒の中型雑種犬だ。保護犬を貰って来たと言っていた。
飼い主の夫婦と違って、このワンちゃんは、少しやんちゃな感じを受けた。名前は五郎とか言っていた。
犬の吠える声を聞いても虎子は耳を少し動かしただけで、これと言った反応はない。慎重で、どちらかと言うと臆病な虎子にしては珍しい。
その時は、私が傍にいるから安心しているのだと思った。
日が変わって、お昼ごろ、また隣の犬が吠えている。
「ワンワン、ワンワン」
いつもより、少し煩く吠えている。誰か知らない人でも訪問してきたのかな?
私は窓から隣の様子をそっと覗いてみた。
犬が吠えている原因は、虎子だった。
虎子は、隣の家を隔てているブロック塀に登り、その犬の目の前で欠伸をしていた。
明らかな挑発である。
犬が鎖に繋がれているのをいい事に、目の前の塀の上を歩き、立ち止まり、欠伸までして見せている。
「ワンワン、ワンワン」
「どうしたの、五郎。あまり吠えるとご近所さんに迷惑よ」
お隣の夫人が出て来た。
虎子は、塀から飛び降りる。私も慌てて窓から離れる。
お隣に迷惑を掛けているのは、五郎ではなく、虎子の方だ。
虎子は素早く庭を抜け、玄関から家の中に帰ってきた。家の中まで逃げて来た虎子は、何食わぬ顔で猫タワーを登り、天辺で寝そべる。
そして虎子の目は私を見ている。
もしばれて、お隣が苦情を言ってきたら何とかしてくれと言っているような目だ。
「なぜ、こんな意地悪な子になったのか、はぁー、こんな子に育てた覚えはない。」
私はため息と愚痴をこぼす。
ピンーポーン。玄関のチャイムが鳴る。
「田中さん」
ドッキ!お隣の松永さんだ。まさか本当に苦情を言いに来たのだろか。
虎子も尻尾を太くし、目は丸くなっている。警戒と不安が混ざり合った感じだ。私も内心は虎子と同じだ。。
「はい。お待ちください」
私は玄関の引き戸を開ける。
「こんにちは、回覧板です」
「こんにちは、ありがとうございます」
「それでは」
松永さんは回覧板を渡すと、直ぐに帰って行った。
私は虎子を睨む。
「虎子、隣の犬をからかうのは止めておけよ」
「ニャー」
虎子は返事をした。
だが、あてにはならない。
案の定、虎子の返事は嘘っぱちだった。
次の日も、塀に登り、隣の五郎をからかっている。悪戯がばれなかった事に味を占めたようだ。
この悪戯は、虎子の巡回警戒中の恒例行事になった。
「ワンワン、ワンワン」
今日も元気に五郎は吠えている。
「・・」
私は気にしないことにした。
今日は玉ねぎを18個抜いて来た。新玉です。今年、初収穫、甘い香りが漂っています。ワンちゃんも、ネコちゃんも玉ねぎが食べれないなんて不幸です。




