表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
終わらないループが終わるとき  作者: あいみ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

3/3

狙っていた魂【ヴィンジル】

 初めてその魂を見たとき、俺の目は奪われた。


 一目惚れというやつなのだろう。


 眩い光に包まれた、聖なる魂。


 欲しい。欲しい。欲しい。


 体の奥底から欲が湧き出る。


 手を伸ばしても届く距離にはなく、俺はいつも見ているだけ。


 人間はいつの時代も勘違いする。


 神が作り出したのは人間だけではない。


 人間の死後、魂を保管するための地を見張るために天使と悪魔を作り出した。


 俺達、悪魔側に落ちてくる魂は薄汚く、要は犯罪者と呼ばれる人間の魂ばかり。


 罪を犯すことなく、真っ当な人生を送った清き魂は天使の元に上がる。


 聖なる魂は……落ちてはこない。


 「嫌だ、欲しい。あれは俺のモノだ!!」


 恋焦がれた。魂という生命体に。


 毎日毎日、飽きることなく見続けて。


 「そうか。穢してしまえば、落ちてくる」


 俺はただ、人間の醜い感情をほんの少しだけ増幅させただけ。


 人間とは実に面白く愚か。


 感情が爆発したら最後、暴走し、自らが正しいと思い込む。


 悪魔が人間に干渉してはならないルールは存在しない。


 理不尽に殺される命を戻してやっているのだ。人間は俺に感謝し、死後。その魂を渡す義務がある。


 様々な形で死んでいく。死んでは時を戻し命を再生する。


 だが。不思議なもので人間は、いつしか死を受け入れるようになっていった。


 抗うことなく、突き付けられる理不尽に何も感じていない。


 「それではダメだ!!お前の魂は俺が貰い受けるのだぞ!!」


 どんなに残酷な死を与えても、人間は憎しみを抱くことはない。


 俺の心が先に折れかける。


 目の前にある欲した魂が手に入らない現状に苛立ちだけが募り、もう一人の女の内側にある感情を最大限まで引き上げた。


 ずっと明かされなかった、女から打ち明けられた真実にようやく、死にたくないと強い拒絶を表す。


 口元が自然に上がる。嬉しさから笑みが零れたのだ。


 戻す時間をほんの少しだけ前にすることで、人間は俺の思惑通りに動いた。


 実の親を密告し、嘘をついて四人の命を亡き者とする。


 罪人となった魂。俺の元に落ちてくるまで、まだまだ時間はかかる。


 そんなことは許さない。今すぐにでも欲しくてたまらないのだ。


 「さようなら。わたくしを殺した皆さん」


 清々しい笑顔。晴れやかで後悔など微塵もない。


 「今日まで実に長かった。だが、これで。お前の魂は俺のものだ」


 人間界に上がり、邪魔な肉体から魂を取り出す。

 大量の血を吹き出し、支えられなくなった体は倒れた。


 人間に悪魔や天使を見ることは出来ず、なぜ死ぬのか。理解が追いつかないまま、また死ぬ。


 魂のない体は朽ちていく。


 抜け殻となった体に生きるためのエネルギーはない。


 腐敗していくだけの入れ物。


 やり直しはもうない。


 瞼は閉じられる。映る世界は暗闇一色。


 「哀れな人間よ。お前が次に生まれ変わることはない」


 どうせ聞こえてはいないが、あまりにも哀れだったから事実を伝えてやった。


 陽の当たる人間界に長居するのは体に毒。


 用事は済ませた。すぐに魔界へと帰還する。


 光のない、生温い風の吹くこの地が、俺には合う。


 輝かしがった光は黒く染まり、決して触れることの叶わなかった魂は俺の手の中にある。


 「愛おしい我が魂よ。未来永劫、朽ちることなく愛してやろう」


 人間の真似事をして、深く長く、口付けを落とした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
残酷で哀しい結末ですが深い愛がありましたね。 素敵なお話をありがとうございます
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ