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メイド・ルーシェの新帝国勃興記 ~Neu Reich erheben aufzeichnen~  作者: 熊吉(モノカキグマ)
第二十四章:「最後の戦い」

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・24-4 第447話:「速攻:2」

・24-4 第447話:「速攻:2」


 ドーレリャンから北上を開始したタウゼント帝国軍の隊列は、長く伸びきったものとなった。

 通常の行軍時は指揮系統を機能させるために隊列はなるべく短くまとめようと心掛けるものだし、変に隊列が長い軍隊は訓練不足と侮りを受けることさえあったが、今回は速度を重視し、後続を省みることなく進めるだけ進ませたので、こうなっている。


 もちろん、警戒を怠っているわけではない。

 先頭を進む部隊のさらに先には、十キロメートル以上も騎兵による偵察部隊が推進されており、また、帝国軍が使用している街道から枝分かれしている道にも小規模な兵力が割かれ、敵から奇襲を受けることがないように情報収集を実施している。


 気がかりなのは、補給体制が整う前に出発してしまったことだった。

 ドーレリャンを占領し、補給線の中継基地として利用できるようにはなったが、後方から実際に物資が到着したわけではない。

 補給隊も武装しており、警備の兵もついてはいるものの、多くの物資を輸送しなければならない彼らはどうしても鈍重で、防備が薄い。

 そんな補給隊を占領が不確かな地域に[いつまでには確保されているだろう]という見込みだけで送り出したら、場合によっては敵に貴重な軍需物資を奪われるだけという結果になりかねない。

 ハイリガー・ユーピタル・パスを踏破してすぐに受けた補給では、軍艦というある程度の自衛能力が期待できる戦力によって突破輸送が実施できたが、運河を進めるのはあまり大きくはなく装備も限られる舟艇でしかないため、あれと同じ無茶はさせられない。

 だから、補給が実際に届き始めるのには、数日のタイムラグが生じてしまうのは、仕方のないことだった。


 このために、タウゼント帝国軍は手持ちの物資だけで前進をしていた。

 弾薬は十分に残っていたが、消耗品、特に食料は余裕がない。

 現物として保有しているのは、わずかに三日分。

 節約したとしても、フルール市の南側にたどり着くまでの五日間ですべて食い尽くしてしまう計算だ。


 もしも補給が滞り、物資の到着が遅れれば。

 帝国軍は一時的とはいえ、飢えてしまうことになるだろう。


(その時は……。

 できれば、行いたくはないが……)


 エドゥアルドは、現地調達を実施する覚悟を持っていた。

 金銭で売ってもらえれば良いのだが。

 最悪の場合は、銃口を突きつけて徴発することさえ、辞さないつもりだ。


 とにかく最速でフルール市を急襲し、敵に態勢を立て直す時間を与えず、勝負をつけてしまう。

 そのために、可能な限り流血は避けるが、脅迫や恫喝どうかつまでは躊躇ちゅうちょせず、最後は実力行使も行う。

 そうならないことを願ってはいるものの。

 ドーレリャンでの悲壮な抵抗に直面した後となっては、共和国の人々がすんなり協力してくれるとは考えにくい。


 難しい判断を迫られることも、起こるだろう……。


 地に足をつけた作戦ではない。

 参謀総長のアントンがこの場に居たらきっと、こんな拙速な作戦にはいい顔をせず、反対をしただろう。

 エドゥアルドは自身の取った行動の軽薄さ、危うさを自覚しつつも、最大限の成果を得るために賭けに出ていた。


 また、共和国軍の抵抗に直面するのではないか。

 そういう想定もしていたが、敵と接触したという報告はあがって来なかった。

 この辺りはフルール市と近接する地域であり、立ち上がった義勇兵たちはとっくに首都に向かった後で、兵力を集中させるという方針のために在地の守備兵などもみなムナール元帥の下に参集しここにはいないらしい。


 数個師団をようするような大規模な軍団があらわれたのなら、いざ知らず。

 数千から一万程度の小規模な敵が立ち塞がっても、強行突破する。

 そういう方針でいたが、幸いにしてフルール市の南側の郊外にたどり着くまで大きな抵抗には遭遇せしなかった。


 そして、八月十七日の夕刻。

 タウゼント帝国軍の先頭は、敵国の首都の南側の郊外にまで到着した。


 いくら急いでいるからといいって、ついたそばから攻撃を開始することはしなかった。

 さすがにそこには敵勢力が相当数待ちかまえているはずだったし、人口百万を誇る大都市の広大な市街地に無策で突っ込んでは、自軍の損耗が拡大するだけではなく、そこで暮らしている民間人にも多大な被害を生じさせることになる。


 まずは、情報収集。

 エドゥアルドからそう命令を受けていた先鋒部隊の指揮官はその方針に従い、フルール市の周辺に展開する共和国軍の状態を探るべく偵察を盛んに出し、後続部隊が到着するのを待った。

 もっとも、すでに日暮れが近かったため、本格的な情報収集は翌日以降にならざるを得なかった。


 リスクを取って急いだ結果、どうやらムナール元帥が引き返して来る前に到着できたらしい。

 敵状に探りを入れると、フルール市には数万規模の守備兵力が存在しているものの、多くは正規兵ではない装備の整っていない民兵、義勇兵たちで、重装備を欠いているということもわかった。

 共和国の主力軍は未だにジャルダン・デュ・ロイで同盟軍と対峙しており、こちらの行動に追従しきれていないらしい。


 ただ、決して安心できるような状況ではない。

 フルール市では、軍民が一体となって籠城戦の準備が進められていたからだ。


 共和国の市民は、ある者は武器を取って隊列に加わり、別の者は市内の要地にバリケードを築いて防御陣地を形成し、他の者は懸命に働く者のために食事を用意するなど、役割分担をして積極的に協力している。


 彼らは、明らかに戦うつもりであり。

 エドゥアルドは、ドーレリャンでの経験もあり、一筋縄ではいかないことを予見して、緊張を覚えずにはいられなかった。


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