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メイド・ルーシェの新帝国勃興記 ~Neu Reich erheben aufzeichnen~  作者: 熊吉(モノカキグマ)
第二十四章:「最後の戦い」

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・24-3 第446話:「速攻:1」

・24-3 第446話:「速攻:1」


「今後の方針について、余の意向を定めた。

 これより我が軍は、直ちに北上し、フルール市を目指す! 」


 代皇帝・エドゥアルドは、速攻案を採用した。


 理由は、いくつかある。

 まず考慮したのは、状況が不明瞭であるという不確定要素が大きい事。

 帝国を出発した時点では、共和国に残された主力軍はムナール元帥に率いられているものだけだったが、すでに一か月以上が経過している。

 その間に、どれだけ情勢が変化したのかが分からない。

 そして、これから先、どのように動いていくのかの予想も、不確かなものしか作れない。

 フルール市には祖国を守ろうとする義勇兵が集結しつつあるはずで、その勢力が今以上に拡大するのを未然に防がなければ、反撃の芽を与えてしまうことになる。

 その可能性を潰すためにも、速攻をかける。


 もうひとつは、やはり、ムナール元帥の存在だ。

 優れた用兵家である彼は、どのような奇策を持っているのか想像もつかない。

 そんな人物に時間を与え、自由に行動する余地を作ってしまっては、こちらにとって厳しい手を打って来る可能性があった。

 それでは、勝利は遠のいてしまう。


 天才にしか思いつかないような神業じみた作戦でなくとも、ムナール元帥が軍を率いてフルール市に入城してしまうと厄介だった。

 その前面には同盟軍の三個軍団、おおよそ三倍にもなる大兵力が展開しており、それらを放っておいて首都防衛のために撤退する、というのは至難の業ではあったが、実現されてしまうと打つ手がない。

 人口百万を誇る大都市を守る義勇兵に十万もの軍と名将が加われば、その防衛力は飛躍的に向上する。

 そうなれば、いくら兵力で勝るとはいえこちらも攻め手を欠いてしまい、戦況は停滞してしまうだろう。


 そうして時間的な猶予ゆうよを稼がれては、盤石なはずの情勢が変わってしまうかもしれない。

 今はハイリガー・ユーピタル・パスを踏破しての奇襲によってなすすべもなくエドゥアルドの進軍を許している共和国だったが、人々は徐々に混乱から立ち直り、ゲリラ戦を展開し、補給線を攻撃し始めるかもしれない。

 そうなれば、この戦争は泥沼の消耗戦の様相を見せ始めるだろう。


 第三者による介入も危惧するべきことだった。

 つまりは、この同盟諸国と共和国の戦争という事象だけではなく、その周囲の、ヘルデン大陸近辺の諸国家・勢力の動向だ。


 タウゼント帝国にとって、後背にあたる地域は安全なはずであった。

 東のオルリック王国、南東のサーベト帝国とは友好関係を構築しており、彼らがこちらの意表を突いて侵略して来るようなことは考えづらい。

 しかし、敵の味方は敵として帝国とは関係が悪化しており、敵の敵は味方、という理屈に従って共和国との接近を図っているザミュエルザーチ王国が、どう動くのか。

 同国はサーベト帝国と断続的に交戦状態にあって、長年、領土問題を争っている。

 タウゼント帝国が大陸西部で戦われている戦役にかかりきりになっているのをチャンスと見なし、大陸の東側で大規模な軍事行動を開始する可能性は無視できなかった。


 その矛先は、南進、サーベト帝国へと向くだろう。

 あるいは、オルリック王国とも領土問題を抱えているから、西進を目論むかもしれない。

 いずれにしろ、ザミュエルザーチ王国にとっては、タウゼント帝国が西方にかかりきりになっている現在は、領土を拡大する好機だった。


 もしふたつの友好国が攻撃を受ければ、こちらは支援しないわけにはいかない。

 今後も引き続き協力関係を維持したいと考えている以上は現在の良い間柄を維持するために多少の無理をしてでも手助けをしなければならないし、国家間で結んだ約束の中にも、そういった援助を実施するという取り決めがある。

 タウゼント帝国にとっては、オルリック王国とサーベト帝国のために動くことは義務と言ってよい。

 その見返りとして、両国は帝国にとって有利となるように便宜を図り、また、共和国の外交攻勢を突っぱねてくれている。


 とにかく、敵に時間を与えないこと。

 エドゥアルドは補給体制を万全にするという堅実なやり方にも魅力を感じていたが、それ以上に状況を自らが作ることによって敵に対応する受け身の側でいることを強い、自身で主導権を握り続けるのを重視し、リスクはあるが速攻することを選んだ。


 ドーレリャンから、フルール市までは百ロメートル余り。

 警戒を厳重にしつつ慎重に進めば十日余りといった距離だったが、今回は急ぐこととして、一日に二十キロメートル以上を進む計画で進軍を行うこととした。

 ムナール元帥が首都防衛のために引き返して来るよりも早く市に達するためだ。


 敵将は、同盟軍と睨み合ったままなら、ジャルダン・デュ・ロイにいる。

 おそらくは明日か明後日には、ドーレリャンがエドゥアルドの手に落ちたことは伝わるだろう。

 それから正面の敵の追撃を避け後退する作戦を立案し、準備をして、実際に退却し、市に駆け込むまでは、何日かかるのか。

 不明確だったが、おそらくは、こちらが最速で急行すれば、ギリギリタッチの差でムナール元帥を出し抜けるはずだ。


 帝国軍は方針が定まると、直ちに出発の準備に入った。

 ドーレリャンの占領を確固としたものにする作業と進軍の用意を同時並行で行い、先発隊は明日の朝には、後続は明後日には移動を開始できることを目標とする。


 こうして。

 帝国本国から警備の兵の増援が到着するまでこの地を維持するための兵力として一個師団だけを残し。

 エドゥアルドは可及的速やかにフルール市に到達するべく、慌ただしく働き始めた。



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