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史上最強勇者、家出する  作者: 陽山純樹
第二章

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97/200

最強格

 やがて話が一段落して、ユーク達は当初の予定通り食事を行う。おごられる立場のキイラは一応確認をとった後、結構な数の料理を注文した。


「お前、奢られるんだからもう少しは自重しろよ」


 そんなヤジを飛ばされながらも当の本人はどこ吹く風。ユークは提案したのは自分達だがいい性格をしているな、などと思った。


「さて、結構奢ってもらうわけだから、もう少し話をしようか。何が聞きたい?」

「なら、勇者……現役で最強格と言われる勇者について」


 ユークはキイラへ話題を振る。


「同じ勇者である以上、顔は知らなくとも名前は知っている……けど、勇者同士の評価というものがどうなのかは知らない」

「世間ではどういう評価なのか、知りたいわけだね。わかった……まず、さっきルヴェルの名が出たけど筆頭として上げられるのはやっぱりシャンナかねえ。戦士院の長であり、国に重用されている勇者様」

「……戦いぶりを見たことは?」

「戦士院の長になる前に、二度ほど。印象に残っているのは……そうだねえ、一言で言い表すとしたら冷徹、かな」


 ユークは彼女の言葉を頭に刻みつつ、話を聞き続ける。


「シャンナの強さは技量だけじゃない。その策略にある」

「策略?」

「知性を持った魔物とか、相当厄介だろ? でもシャンナはその特性を見極め、魔物が実力を発揮する前に倒す。言わば相手の能力を瞬時に分析し、力を出させないよう立ち回る……そんな戦い方を得意とする」

「恐ろしいですね」


 アンジェが感想を述べる。それにキイラは笑い、


「会ったことあるか知らないけど、見た目は勇者に見えない美人さんだね。それに、一人で戦うようなことはなかった。基本は数名のパーティーを組んで……だからまあ単独の実力、と言われると正直アタシもわからないし、評価が分かれるところさ」


 そこで料理が来た。キイラは「いただきます」と一声添え、食べ進めながらなおもユーク達へ語る。


「二人目はさっき名前が出たルヴェルだね。ルヴェル=レグスター……大所帯だし彼も連携とかで倒す……とか考えそうだけど、実態は違う」

「違う?」

「ルヴェルは単独でも強いんだけど、性格が性格でねえ」

「……何か問題があると?」


 ユークが問い返すとキイラは苦笑する。


「ああ、性格が悪いってわけじゃない。むしろ逆。街道で困っているおばあさんがいたら迷わず助けるし、騒動があれば解決するために奔走する……評価はどうあれ、いい人というのは間違いない。勇者が人を救う存在であるとしたら、ルヴェルはまさしく勇者という存在を体現した人間だろうね」


 体現――そこまで言うのであれば、評価も高そうなものだが、


「ただ、性格上魔物がいたら真っ直ぐ突っ込んでいくような熱血漢で、それを仲間達がどうにか追いついて援護するみたいな感じだね」

「……仲間は大変そうだな」

「ただまあ、大所帯ってことで想像つくと思うんだが、人を惹きつける才能みたいなものもあるんだろうね。ルヴェルは会う度に周囲に人が増えるんだよね」

「……それもまた、勇者としての才能か」


 ユークは発言しつつ自分にはない能力だな、と感じる。


(シャンナさんの能力も、冷徹さを主軸としているなら俺には到底真似できるものではないだろう……数多いる勇者の中において、頂点に立つという存在はきっと他の人にはない際だった何かがある、ということなのか)


 ならば自分はどうなのか――ユークは考えつつも、一番になるつもりはないので考えるだけ無駄かと思う。


(強さは必要だけど、勇者の中で一番である必要はない……でも、もしシャンナさんや勇者ルヴェルという存在と戦うようなことになったら――)


「最強格と言われる勇者については……シャンナとルヴェル以外では、あと二人だね」


 キイラはさらに話を進める。と、ここでアンジェが、


「先ほどの男性は一堂に会すると仰っていましたが……」

「シャンナが現場に出てくることってあまりないんだが、まだアタシ達には知らせていないヤバい情報が眠っているという話なのかもしれないね」


(それはやっぱり、組織案件なのか?)


 しかしディリウス王国としては手を引いたはず――この辺りは、もしシャンナが来たら事情を確認する必要があるとユークは断じた。


「残る二人についても説明するかい? それとも、間を置くかい?」


 キイラからの問い掛け。それに対しユークは、


「……食事の後にしようか」

「了解。まずはさっさと食べないと」


 嬉々として語りながらキイラは食事を進めていく。あっという間にテーブルの上に乗った料理が消えていくのを目の当たりにして、アンジェが目を見開く。

 やがて食事を終え、お茶が出されたのでそれを飲んでいると、再びキイラが話し始めた。


「さて、残る最強格と言われる勇者は二人。名前くらいは聞いたことがあるかもしれないけどね――」


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