次の町へ
ユーク達は再びディリウス王国へ。そして国境付近の町を訪れ戦士ギルドへと入る。
そこでまず情報集め。それによるとどうやら勇者オルトが捕まったことによる動揺は解消され、仕事をする冒険者や勇者は表面上普段通りになっているとのこと。
「ただ最近、魔物討伐の仕事が増えたな」
ユークは情報収集の折、戦士ギルド内にいた男性から話を聞く。
「街道に以前と比べ魔物が現れることが多くなった」
「そうですか、ありがとうございます」
ユークは礼を述べてアンジェと合流。店で食事をしながら作戦会議を行う。
「魔物が最近多くなっている、という話がチラホラありました」
「俺の方も同じだったよ。この戦士ギルドだけではなく、国全体で魔物が増えているみたいだな」
何かの兆候なのか――と感じるところだが、ユークの見解は少し違っていた。
「実験の余波かもしれないな」
「余波……ですか?」
「組織が実験を行うことで、魔物の出現数が増えたとか、そういうことかも。実際に組織が数を増やして本格的に活動するなら、もっと多くなっていると思う」
「まだどこかで実験をしている?」
「かもしれないし、ログエン王国と同様に組織の人間が好き勝手に行動している、とかかもしれない」
もしそうであれば、捕まえた男と同様に組織の手がかりになるのだが――
「ただそういった人を探すにしても、俺達が主導でやると組織に気付かれる危険性がある」
「ということは、誰か勇者に動いてもらうとか、でしょうか?」
「例えば俺達がそれとなく事件に関わるよう促すとか、かな……前にこんな事件が、みたいな感じで語って」
「それが理想でしょうけれど……私達、シアラ様以外に勇者の知り合いいませんから大変そうですね」
「そこは頑張らないといけないかな」
食事を進めつつユークは語る。
「俺もアンジェも年齢的には本来勇者見習いくらいだ。友好的かつ、ちゃんと話を聞いてくれる勇者がどのくらいいるか」
と、ここでユークは今後の方針を告げる。
「で、今の話に関連しているんだけど、次の目的地を決めた」
「それは?」
「ラナベール、という町だ。現在そこに勇者や冒険者が集結しているらしい。町の近くに魔物の群れがいるらしく、対応するべく国が呼び掛けているとのことだ」
――ユークが聞いた話によれば、元々魔物が多く出現する地域だが、数ヶ月前からその個体数がさらに増えているらしい。
「実験と関係しているのかは現時点で不明だが、数ヶ月前……つまり、俺が旅を始める前からだ。組織が精力的に活動していた時からみたいだから、関係があるかもしれない」
「組織は勇者オルトが捕まったことで実験はある程度抑えたはずですが……」
「さすがに実行していた実験を止められなかったのかもしれない。まあこの騒動で組織の情報を手に入れるのは無理だろうな。痕跡を残すとは思えないし」
「何か実験をやって魔物だけ大量に残ってしまった……といったところでしょうか?」
「かもしれない。組織の後始末を押しつけられた形で面倒だが、色々な勇者のことを知るいい機会ではある」
そこまで説明を受け、アンジェも方針に理解を示した様子。
「わかりました。次の目的地はラナベールと」
「……基本的に、組織の活動は再び密かに行われる。可能な限り早く見つけたいと俺は言ったけど、当面組織が事を起こす可能性は低い。知見を広めるいい機会でもあるし、色々な勇者と交流したいな」
「とはいえ勇者ですからね」
アンジェは言う――ユークも言葉の意味をわかっている。
勇者、とひとくくりにされてしまうが、実際は多種多様。勇者の証を持っているために国から教育を受けたわけだが、その生い立ちや教育内容などは個々に異なっているため、中には非常に癖が強かったり、あるいは血の気が多かったりする人物もいる。
「意気投合する人もいるだろうけど」
と、ユークはアンジェへさらに語る。
「俺達は勇者の中で言えば優等生みたいな立ち位置だろ? だとすれば、俺達と相性が良いという人はそれこそ似たような生い立ちだったりするわけで、なんというかそれでは知見が広まるかどうか微妙なところだな」
「そうは言ってもユーク様、好戦的な人と半ば無理矢理接するというのも、あまり良くないのでは?」
「そうだな……とりあえずラナベールへ向かい、勇者という存在について色々見て回ろうか。俺なら一目見れば、その人の特性とかわかるケースもあるし」
「気配を消している勇者などは?」
「あえて存在感を消しているとかだったら、勇者の中でも強者である可能性が高そうだな」
「……あえてそういう人と交流するのもアリ、ということですか」
「その通りだ。アンジェもラナベールを訪れた際、何か気付いたことがあったら遠慮無く言ってくれ。もしかすると今回の仕事は、今後の旅に大きく影響をもたらすかもしれないからな――」




